もくじ
どんなクルマ?
ー 306psの4気筒ターボに4輪駆動
ー 仕上げはいつものMスポーツ・メニュー
どんな感じ?
ー できの良い高性能な4輪駆動ホットハッチ
ー トルクステアと合成サウンド
ー インテリアの質感はメルセデス・ベンツAクラス以上
ー フォルクスワーゲン・ゴルフRとの価格差はわずか
「買い」か?
ー 素晴らしいホットハッチでも、BMWらしくはない
スペック
ー BMW M135iのスペック
日産GT-Rニスモ/トラック・エディション 2020年モデルの変更点一覧/価格
どんなクルマ?
306psの4気筒ターボに4輪駆動
BMWの新しい1シリーズの中で、フラッグシップであり、最も速いクルマがM135i。前輪駆動となった1シリーズだが、よりパワーで劣る兄弟グレードよりも物議を呼ぶ存在となる。多くの1シリーズのオーナーは、後輪で押し出されているのか、前輪で引っ張られているのか、気づくことはないかもしれない。しかし先代のM140iを買った層なら、その違いに気づくはず。新型がリリースされる毎に買い替えてきたようなオーナーにとっては、小さくない問題だと思う。
そんな駆動輪の疑念を払拭するべく、M135iには306psを発生させる4気筒ターボエンジンに、BMWの4輪駆動システム、xドライブの強化版を搭載してきた。エンジンは、これまでBMWが製造してきた4気筒ユニットとしては最強のものとなる。サスペンションも専用品で、Mスポーツサスペンションにも手が入り、車高は10mmダウン。ステアリングレシオもクイックになり、ブレーキのストッピングパワーも強化された。すべて納得できる装備だ。
まずはエンジンから見ていこう。この4気筒ターボは、最高出力だけでなく最大トルクもたくましく、わずか1750rpmから45.8kg-mを発生させる。既存の4気筒ユニットの進化版で、クランクシャフトやピストンを強化し、より大容量のフュエルインジェクターを装備している。スペック上は、メルセデス-AMG A35と最高出力では互角で、最大トルクは軽く凌駕していることになる。
仕上げはいつものMスポーツ・メニュー
パワーもさることながら、何より注目スべき変化が4輪駆動システムの採用だろう。フロントにはトルク感知型のトルセン式リミテッド・スリップデフが装備され、リアタイヤは油圧制御となるハングオン・クラッチ・タイプを介して駆動される。250ミリ秒という瞬時に、必要に応じたトルクが伝達される仕組み。前後タイヤのトルク配分は最大で50:50となっており、基本的にM135iは前輪駆動として走り、大型モデルに搭載されているxドライブとは設定が異なっている。トランスミッションはおなじみの、ステップトロニック付き8速ATとなる。
1シリーズは、i3に搭載されているARB(アクチュエーター近接ホイール・スリップ・リミテーション)トラクション・コントロールを採用した、初めての内燃機関モデルでもある。エンジンのECUをモニターし、通常のESPよりも10倍の速さでホイールの制御を行えるというもの。i3の場合は、モーターのトルクを最適にタイヤへ伝達させ、スリップを抑えることで、無駄なエネルギーロスとブレーキ介入を減らす役割がある。
サスペンションは車高が10mm下げられ、引き締まった設定になった程度。2ステージのアダプティブダンパーもオプションとして選択は可能で、今回の試乗車には装備されていた。加えてフロント側には、サブフレームにブレースバーが追加され、剛性を高めてステアリング精度に磨きをかけている。
電動パワーステアリングは、標準のクルマが15:1のレシオなのに対し、14:1とクイックに変更されている。よりハイスピードでの走行に備えて、ブレーキのマスターシリンダーも、レスポンスを高め安定したブレーキ力を確保するために大型化された。
アピアランスでは、M135iのエンブレムの他に、バンパーやサイドスカート、テールゲートスポイラーなどが通常のクルマとは異なる専用品となっている。加えて、18インチの鍛造アルミホイールや2本出しのエグソースとシステムも装備。インテリアでは、リムの太くなった3スポークタイプのステアリングホイールに、サイドサポートがしっかりしたシート、Mスポーツのロゴなど、Mスポーツのいつものメニューで仕立てられている。シートベルトには青と赤の鮮やかなラインが入る。
しかしなんといっても、最大の注目点は走りの変化だろう。
どんな感じ?
できの良い高性能な4輪駆動ホットハッチ
期待のM135iだが、足の極めて速い高性能な4輪駆動のホットハッチとしては、かなりできが良い。間違いなくメルセデス-AMG A35と渡り合えるだろう。一方で、かつての高性能版1シリーズが備えていた性格が変化したことも否定できない。先代のM140iオーナーにとっては、その進化にショックを受ける可能性も小さくなさそうだ。
乗り込んでみると、今まで通り見慣れたBMWではある。フロントガラス下のスカットルの見切りは高くなり、短いボンネットが前輪駆動ベースであることを物語るが、肉厚なステアリングホイールに、伝統的なドライバー側を向いたダッシュボードは変わらない。
エンジンスターターのボタンを押すと、直列4気筒は、かつての直列6気筒のような音を奏でて目を覚ます。走り初めの引き締まった感覚は先代と同様ながら、ステアリングホイールへ伝わってくる明確な感覚は間違いなく薄れている。だが、BMWらしいとは思える。
アイドリングを少し超えた辺りから最大トルクが発生するから、大排気量エンジンモデルのように、エネルギーに満ち溢れた力強さでボディを引っ張る。急斜面でも追い越しでも、直線加速でも、まったく動じない圧倒的な速さだ。BMWによれば、0-100km/h加速は4.8秒でこなすというが、かなり控えめに見積もった数字ではないだろうか。
トルクステアと合成サウンド
8速ATとエンジンとの相性も良く、AT任せでも瞬時にスムーズに変速を繰り返すし、ステアリングホイールに取り付けられた、テキパキと反応するシフトパドルを弾いても、反応は迅速。調子づいてエンジンを回すと、低回転域で勇ましく響いていたエグゾーストノートは、4000rpm過ぎ辺りから退屈な人工合成のメカニカルノイズに入れ替わってしまう。スポーツモードを選択すると、そのボリュームは大きくなる。音質としては不快なものではないにしろ、間違いなく正直な音ではない。もちろん、ストレート6のサウンドを再現しているわけでもない。
積極的に加速させていくと、かつての1シリーズには存在し得なかった別のものが姿を見せる。トルクステアだ。決して激しいものではなく、トルセン式LSDが動作するような場面に限られるが、従来とはまったく異なる1シリーズだと知覚させるには充分な手応えがある。付け加えるなら、メルセデス-AMG A35やフォルクスワーゲン・ゴルフRは、これほどまでに気にならなかった。
だが、トラクションは極めて高い。有能な4輪駆動システムとトラクションコントロール・システムが組み合わさり、306psをまったくムダにすることなく、コーナーから脱出していける。
コーナーへの侵入時も、フロントタイヤが路面を掴む力は凄まじい。クイックなステアリングを回す途端、BMWの鼻先は瞬時に反応する。ステアリングへ伝わるフィードバックも充分にあり、ドライバーが選んだラインを忠実に進んでいく。スロットルペダルを踏む脚の力を緩めるとタックインが発生し、M135iはエイペックス目がけてさらに力強く回り込んでいく。リアタイヤはマルチリンク・サスペンションで支持され、スロットルオフ時の回頭性やコントロール性も高い。
インテリアの質感はメルセデス・ベンツAクラス以上
コーナの後半からパワーを掛けていくと、フロントタイヤのLSDがアンダーステアを抑制してくれる。しかしリアタイヤへ伝わるトルクは最大でも50%で、リア側は通常のデファレンシャルギアということもあり、BMWはひたすらステアリングの向きの通り、真っ直ぐに突き進む。ドラマ性といえば、引き締まったステアリングに伝わってくる、太いトルクの感覚だけだ。
間違いなく大陸間を速く走り抜けることができるだろうし、マルチリンク・サスペンションのリアタイヤが支える運動性能も高い。しかし、BMWはらしいとはいえない感覚だ。先代のM140iが備えていた、純度の高いドライバビリティとの引き換えに、BMWがM135iに与えたレイアウトと様々なシステムは、等比でのトレードオフとはいえない。
クルマの他の部分はどうだろう。全体的に1シリーズは先代よりも良くなっている。ボディサイズは全長が5mm短くなった一方で、全幅は34mm、全高は13mm大きくなっており、車内は広い。後部座席のレッグルームは33mm広がり、ラゲッジスペースも380ℓと、クラス内では競争力の高い数字となっている。だが、スタイリングは好みの問題もあると思うが、MPVのようにスポーティさが薄まった感もある。
インテリアの雰囲気も高級感が増した。左右に気持ちよく伸びるダッシュボードのデザインに、彫りの入った金属調のベンチレーションノブ。全域に渡ってソフト加工が施された、プラスティック製のパネルやパーツなどは、メルセデス・ベンツAクラス以上の質感を得ている。
フォルクスワーゲン・ゴルフRとの価格差はわずか
ハイテク機能も抜かりはない。メルセデス・ベンツのように高精細モニターがダッシュボード全面にレイアウトされているわけではないが、8.8インチのモニターで操るインフォテインメント・システムはより使いやすい。直感的に操作できるiドライブ・ローターリーコントローラーとホットキーが、ユーザビリティを高めている。
またインターネットと接続する最新のコネクティビティやライブサービスも充実。BMW独自の音声認識システムも搭載されている。さらに鍵を用いず、自身のスマートフォンのアプリで、クルマのドアロックを開場することも可能となった。
洗練性もかなり高められている。風切り音は小さくなり、エンジン音も車内にはほとんど届かない。テスト車両にはオプションとなる2ステージ・アダプティブ・ダンパーが装備されていた。コンフォートとスポーツを切り替えられ、コンフォートモードでも基本的にはかなり引き締まった設定ながら、路面のうねりを見事に吸収してくれていた。ただし、これはドイツの滑らかな路面での印象ではある。また、舗装の剥がれた箇所や鋭い入力に関してはあまり得意ではないようで、車内へ角のある振動を届けてしまう。
BMWというブランドと後輪駆動の先代を気にしなければ、M135iは極めて速く、実用性も高い4輪駆動システムを備えた魅力的なホットハッチだといえる。上質で洗練されており、フォルクスワーゲン・ゴルフRとは数百ポンド(数万円)の差しかない。スタイリングはわたし好みでないにしても、パッケージングで優れ、広い車内を備えていることを考えれば、価格差の価値はある。またドライバーズカーとして考えても、メルセデス-AMGのA35や先代のBMW M140iよりも優れていると思う。
「買い」か?
素晴らしいホットハッチでも、BMWらしくはない
何より残念なのは、BMW製のホットなハッチバックに期待するフィーリングではないというところ。先代が備えていたクルマとしての純粋なレイアウトと自然なバランスは、人工的に引き上げられた運動性能に置き換えられてしまった。同じBMWのボディをまとっていても、その内側に宿る本質的な個性というか、哲学のような部分は、大きく変わったといわざるを得ない。
より一般向けのグレードなら、ここまで厳しい見方はしないが、エンスージャスト相手のクルマとなると、しきい値は上がってしまう。われわれの手元に届いたM135iを確かめるほど、後輪駆動を失い、滑らかなストレート6を失ったBMW 1シリーズという、悲しみが深まってしまうだけだ。ユニークな価値を失ってしまった。
誤解しないでほしいのは、BMW M135iは、先代よりも大部分で間違いなく優れている。BMWというブランドに期待する速いハッチバックではない、ということなのだ。
BMW M135iのスペック
■価格 3万6430ポンド(495万円)
■全長×全幅×全高 4319✕1799✕1434mm
■最高速度 249km/h
0-100km/h加速 4.8秒
■燃費 12.1-12.5km/ℓ
■CO2排出量 155-157g/km
■乾燥重量 1525kg
■パワートレイン 直列4気筒1998ccターボ
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 306ps/4500-6250rpm
■最大トルク 45.8kg-m/1750-5000rpm
■ギアボックス 8速オートマティック
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