BEV普及のために充電ステーションの拡充を。テスラ方式とCCS方式をめぐる合従連衡
このところ米国ではEVチャージネットワークを巡る動きが活発だ。まず、フォードとGM、さらにはリビアン、日産、ボルボ、メルセデス・ベンツなどがテスラのスーパーチャージャー網への参加を表明した。テスラは昨年から全世界で自社のスーパーチャージャーを他社のEVに開放する動きを見せていたが、これに米国の大手メーカーが乗った形だ。
テスラの欧州2023年上半期販売が好調に推移。年間販売40万台が視野に入ってきた
内容としてはフォード、GMなどがテスラと提携、次世代EVにはテスラのチャージプラグのアダプターを標準装備する、というもの。現在米国ではCCS方式の急速充電が主流だが、今後はアダプターによりCCS、テスラ双方で充電できる車両が増えることになる。
一時はこれでテスラ方式が米国のスタンダード化するか、と思えたのだが、ここに来て新たな動きが生まれた。7月26日、BMW、GM、ホンダ、現代、起亜、メルセデス・ベンツ、ステランティスの7社が「アライアンスを作り、EVチャージネットワークを構築する」と発表したのだ。目標は全体で3万個所の高速充電器を設置することだという。そしてこの充電器は「あらゆるメーカーのEVを受け入れる」という。
元々テスラが自社のスーパーチャージャーを開放する以前は、GM、ホンダ、トヨタなどがEVgo、フォード、VW、メルセデスなどがエレクトリファイアメリカというEVチャージャーメーカーと提携し、それぞれのブランドとチャージ網をつなげて競っている状態だった。
しかし現時点での充電ステーション、充電器数を見ると、レベル2(充電電流80A以下)までの低速充電ではチャージポイント社がトップであるものの、急速充電ではステーション数1782、充電器数約1万8000器のテスラが圧倒的なトップだ。エレクトリファイアメリカは717個所、3112器、EVgoは849個所、1711器とその差は大きい。
7社が打ち出した新たなジョイントベンチャーでは「テスラ方式とCCS双方を備えたチャージステーション網を構築する」という。テスラ・オーナーも取り込めるし、またすでにテスラとの提携を発表しているメーカーのクルマも利用できる、という利点がある。 今回のジョイントベンチャーではテスラとの提携を発表しながら参加している、いわば二刀流の企業もあるのだが、その裏側にあるのは「本格的なEV時代が訪れれば現在のチャージ網では対応しきれない」という危機感だ。米国の国立再生可能エネルギー研究所(NRLE)によると、将来必要とされる急速充電ステーション数は18万2000台、と試算されている。
テスラも独自のスーパーチャージャー網を広げてはいるものの、必要数には追いついていない状態だ。
つまり、現時点に限っての話でいえばテスラの一人勝ちのように見えるものの、10年20年先を見据えればまだまだ参入の余地はあり、テスラの独走を抑えるためにもこうした提携を作って対抗措置を取ることは必要、と判断されたことになる。
このようなメーカーが連携した充電ネットワーク構築は欧州でも始まっており、まずはEVの販売を増やしていくためには各社がバラバラに動くよりも提携して政府などの補助金を受け、大々的なネットワーク構築を目指すことが先決、と考えられていることの証だ。
日本のメーカーとしては日産がテスラ、ホンダが新しいジョイントベンチャーに加わっているが、トヨタは方針を打ち出していない。トヨタのEV戦略が北米では不透明といわれているが、今後の出方に注目したい。
日本では主流のチャデモは、北米ではほぼ存在しない。チャデモはVtoH(EVから家庭へ給電)に優れている、と評価する声もあるのだが、いまから米国でのインフラを変えることは不可能だろう。
今回の流れで日本でもテスラ方式かCCSか、という動きが広がるのか。あるいは日本はチャデモを継続し、独自の充電方式を維持するのか。グローバル市場で勝負するためには充電システムのスタンダード化は避けて通れないだろう。
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