長距離も乗りたいと思えるスーパーカー
最新のマセラティMC20には、ライバルが意外と多い。アウディR8やロータス・エミーラ、ランボルギーニ・ウラカン、マクラーレン・アルトゥーラ、フェラーリF8 トリブートに296 GTBまで、ミドシップ・スーパーカーの選択肢は幅広い。
【画像】歴代最高の1台 マセラティMC20 ライバルのスーパーカーと比べる 全119枚
MC20の英国価格は、オプション抜きで19万275ポンド(約2949万円)から。価格帯としても、概ね上記のライバルに合致する。
予習はこのくらいにして、実際の運転へ進もう。MC20の特長といえるのが、GTモードでの質感。長距離でも乗りたいと思えるスーパーカーだ。
エンジンは3.0L V6ツインターボで、スムーズに吹け上がりパワーを潤沢に生み出す。630psを発揮するが、程よくノイズが抑えられている。8速デュアルクラッチATも、円滑にシフトアップしていく。シフトダウンは、時々躊躇する場面があるようだが。
いうまでもなく相当に速く、現実的な道路で必要とする以上。ギア比は全体的に高めで、80km/h以上の速度域へ突入しない限り、6速より上にはシフトアップできない。
スーパーカーに不足ないパワートレインだと思う。それでいて、市街地を彷徨くようなシーンも受け入れてくれる。
グランドツアラーとも呼べなくはない。エンジンルームの後ろに深い荷室があり、熱が少し伝わるものの、コルベットやロータス・エリーゼと同等くらいの容量はあるだろう。
フロント側にも、小容量ながら荷物を載せられる。ミドシップ・スーパーカーの基準でいえば、かなり実用的といっていい。
サスペンションもステアリングも素晴らしい
見た目以上に乗り心地は快適。MC20の一般道での振る舞いは、本当に気に入った。英国の一貫しない舗装状態でも、ダンパーをソフトにした状態のGTモードなら概ねやり過ごせる。
今回の試乗は、肌寒い1月の英国。20インチのアルミホイールには、スタッドレスタイヤが巻かれていた。ちなみにサイズは、フロントが245/35で、リアが305/30だ。
MC20のサスペンションは、路面と呼吸を合わせるように、しなやかに不整をいなす。ゴツゴツとした振動が伝わることもない。ベストと呼びたくなるほど落ち着きがあり、細かな入力も流暢に処理していた。
快適でありながら、進路変更にも常に構えた状態にある。コーナリングでは、大きな一体感を伴って、豊かな喜びを感じさせてくれた。
ただし、柔らかい冬タイヤなだけに、ステアリングの精度などは本来より落ちていたはず。もし夏タイヤなら乗り心地がタイトになり、操舵感も鋭さを増し、より積極的に運転したいと思えるだろう。
ステアリングは軽めでクイック。ロックトゥロックは2.2回転で、フェラーリほど敏感というわけではなく、マクラーレンのように感触が豊かというわけでもない。
それでも、マセラティのチューニングは素晴らしい。例えるなら、最新のアルファ・ロメオ・ジュリアGTAmにも似た印象を受けた。惹き込まれる魅力がある。
すべてに恋をするほど最高のマセラティ
さて、前編で触れた裏話だ。MC20は、実はアルファ・ロメオとして誕生する予定だったという噂があるが、真偽は確かではない。しかし、ジュリアの高性能版、GTAmと動的な印象が関連しているように感じたことは本当だ。
ミドシップ・スーパーカーの走りが、4ドアサルーンに近いと表現することは、プラスではないことが殆どかもしれない。しかし、ジュリアGTAmは極めて特別なモデル。悪い意味をまったく含まず、そう筆者は感じた。
低く俊敏で、シャシーの質量が理想的な場所にある。MC20は、一層タイトで軽快でもある。
今回の試乗は公道に限られ、肌寒い天気にスタッドレスタイヤという条件だったから、MC20のすべてに迫れたわけではない。とはいえ、間違いなく突出した新モデルだと思う。
筆者がここ数年で運転したクルマのなかで、最も動的能力に秀でた1台だろう。ファンタスティックだ。
競争相手は少なくない。ドラマチックさでは、一部のライバルと比較すれば控え目とはいえる。ランボルギーニのV型10気筒や、マクラーレンのV型8気筒のような、空をつんざくような咆哮はない。アウディR8やコルベットC8と比べると、割高でもある。
そうだとしても、マセラティの新時代を告げるMC20には、特別な何かがある。もしかすると、当初はトライデントのエンブレムは想定されていなかったのかもしれない。だが、結果としてブランドの革新へと結びついた。
筆者の記憶にあるマセラティで、最高のクルマであることは疑いようがない。MC20のすべてに、恋をしてしまった気持ちだ。
マセラティMC20(英国仕様)のスペック
英国価格:19万275ポンド(約2949万円)
全長:4669mm
全幅:1965mm
全高:1224mm
最高速度:325km/h
0-97km/h加速:2.9秒
燃費:8.6km/L
CO2排出量:262g/km
車両重量:1500kg以下
パワートレイン:V型6気筒3000ccツイン・ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:630ps/7500rpm
最大トルク:74.2kg-m/3000-5500rpm
ギアボックス:8速デュアルクラッチ・オートマティック
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みんなのコメント
1000万クラスで400馬力位なんて形だけミッドシップのスポーツカー
ロータスの名が泣くよ