もくじ
どんなクルマ?
ー ポルシェのGTSはベストグレード?
どんな感じ?
ー 突出した高速道路でのドライバビリティ
ー パドルで任意に操作したくなるデュアルクラッチAT
「買い」か?
ー 総合的な完成度の高さか走りの喜びか
スペック
ー ポルシェ・パナメーラGTSのスペック
どんなクルマ?
ポルシェのGTSはベストグレード?
ポルシェにおけるGTSというグレードは、最も手頃なベースグレードと、免許証の点数に危険信号が灯るターボの中間に位置することが通例。近年のビッグポルシェにおいては、われわれのお気に入りグレードとなることが多い。ポルシェの大型サルーン、パナメーラにもGTSが存在するが、ようやく英国の道で確かめる機会がやってきた。
最新のパナメーラの試乗を前回行ったのは昨年のこと。その殆どが滑らかな路面のサーキットにおいて。ポルシェが開発したとはいえ、1995kgもの車重がある5ドアハッチバックにとって、サーキット走行は得意科目とはなりにくい場所のはずだった。しかし例によって、エンジニアの類まれな努力の結果、既成概念を覆すような熱い走りを味わわせてくれた。
広く滑らかな路面を持つ環境は、パナメーラにとって設計の前提となったような環境なのだ。反面、英国や日本の道路事情では、なかなか合致する状況は見つけにくい。そしてGTSに搭載されるのは、高度にチューニングされた自然吸気エンジンとコイルスプリング、という従来までの組み合わせも、変化している。
長いボンネットの中に搭載するのは、ややデチューンされた4.0ℓのツインターボV8エンジン。とはいえ最高出力は460psにも及ぶから、パワーを抑えられた、という表現はふさわしくないだろう。そしてボディはエアスプリングによって支えられている。
そんな新しいGTSは、われわれの理想のセッティングになっているだろうか。
どんな感じ?
突出した高速道路でのドライバビリティ
英国に上陸した新しいパナメーラGTSだが、幅員が狭く路面の起伏も多い環境であっても、充分に満足できる適合性を示したことを、はじめにご報告したい。基本的に乗り心地とハンドリングのバランスがとても優れている。だが、優れているとはいえ、運転に夢中になれるほどではない。車重2tに迫るクルマなのだから、当然とはいえるだろう。
パナメーラの高速道路での走りの良さは突出している。ステアリングのフィーリングは滑らかでリニア。この点はとても高く評価できる。そして荒れた路面は、上質なエアスプリングと巧みなボディコントロールによっていなしてくれる。だが、ポルシェがどんなに努力をしたとしても、ボディの全幅の広さは隠しきれない。
4輪駆動システムは後輪駆動ベースながら、少なくともドライコンデイションにおいては、トラクションもグリップ力も望外。ほとんどの場面で限界値を感じることはないだろう。試乗においても、われわれの予想到着時間よりも常に目的地へ早くたどり着くことができていた。
ちなみにパナメーラGTSを試乗した同じ週に、ジャガーはXJの生産終了を発表している。スタイリングとしては、パナメーラとXJとはスピード感を優先したシェイプで共通性を感じることができた。しかしインテリアや技術的な部分を見ると、10年近い格差を感じられたことは事実だ。しかし、乗り心地やステアリングフィール、クルマとの対話という点では、ビッグ・ジャガーの方が良かったように思う。
パドルで任意に操作したくなるデュアルクラッチAT
その違いは両車の開発された風土の違いがあるのではないか。ポルシェは、例え290km/hで走行していても、ドライバーが意識せずにくしゃみをしても平気なクルマを作る必要がある。ハンドリング特性はお国柄があるとはいえ、パナメーラのエンジンは国境を超えても間違いなく力強い。AMG製のユニットの方がさらにスリリングではあるけれど。
反面、8速デュアルクラッチATは、リラックスした気持ちを乱すことなく変速してくれるとは限らない。特にオートストップ・スタート・システムとの相性が良くないようだ。滑らかに減速し停止に至るまでの振る舞いには、環境負荷軽減とのトレードオフがある。通常のATなら、スムーズさはより確保できるに違いない。
また高速道路でのとっさの加速時など、太いトルクを活かしたいときに不必要なシフトダウンも見受けられる。都市部での移動時にも、トランスミッションは希望しない変速をする傾向がある。わずらわされている内に、自然と手はシフトパドルへと伸びてしまうのだった。
インテリアの素材や質感は素晴らしく、デジタルモニターの面積も巨大で視覚的な訴求力は高い。必要な機能はすべて盛り込まれてはいるものの、操作になれるには少し使い込む必要はありそうだ。よく使う機能に関しては、ブラインドタッチしやすい物理的なボタンも用意されている。
「買い」か?
総合的な完成度の高さか走りの喜びか
従来までのGTSのできの良さに期待してしまいがちだが、今回のパナメーラGTSに限っては、突出した完成度を備えたグレードとはいえなさそうだ。全体的にやや引き締められたセッティングが与えられた程度、に留まっており、ラグジュアリーさの面でもドライビングの面でも、ほかを圧倒しているわけではない。
もちろん日常的に乗ることに不便さはないし、総合的な完成度の高さは特筆に値する。メルセデス-AMGのGT 4ドアクーペやBMW M5コンペティションなど、どんな大型スーパーサルーンやファストバック、エステートを持ってきたとしても、ポルシェ・パナメーラを超える実力は備えていないと思う。それだけでもパナメーラの訴求力は高い。
しかし、BMW M5コンペティションや特にメルセデス-AMG GT 4ドアクーペの場合は、ドライバーが得られる喜びがひときわ高いことも事実ではある。
ポルシェ・パナメーラGTSのスペック
■価格 10万5963ポンド(1536万円)
■全長×全幅×全高 5049✕1937✕1423mm
■最高速度 291km/h
0-100km/h加速 4.1秒
■燃費 9.7km/ℓ
■CO2排出量 235g/km
■乾燥重量 1995kg
■パワートレイン V型8気筒3996ccツインターボ
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 460ps/6000-6500rpm
■最大トルク 63.0kg-m/1800-6500rpm
■ギアボックス 8速デュアルクラッチ・オートマティック
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