新車投入は自動車メーカーの生命線。いかに魅力的なクルマをどんどん出すかが会社の売り上げを決める。過去10年の新車投入数から、各メーカーがどれだけ新車を投入してきたのか? 今回はそんなことを検証してみたい。果たして新車投入を一生懸命やってきたメーカーはどこか? サボってた(!?)メーカーはあるのか!!? おもしろい数字がたくさんです!
※本稿は2019年7月のものです
文・写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2019年8月26日号
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■過去10年の新車数146台!! トヨタがトップ
ここでの数には2009年以前に発売されたGT-RやデリカD:5といったクルマはカウントしていない。また一部OEM車と商用車もノーカウント。2009年から2018年にかけてひとつのモデルがフルモデルチェンジした場合は、2台としてカウント。その数がトータル164車種というわけだ
たくさんの車名が並んだ上の年表は、2009年から2018年までに新型車として発表されたものを並べたものだが、実にもの凄い数。総数はなんと164車種(マイナーチェンジはノーカウント)。
10年で割ると年間平均16.4台が登場していることになる(つまり1ヶ月に1台以上!)ので、かかるコスト(まとめにて記載)を考えれば「頑張ってるな~」というのが担当の正直な感想だ。
なかでも新車投入数が一番多かったのはトヨタで、その数、46台(レクサス含む)。逆に投入数が一番少なかったのは三菱で10車種。
そのほかのメーカーの新車投入数は下の表を参照してほしいが、結果、数だけでいうならトヨタが圧勝となる。
■あのクルマもこのクルマも! 各年の代表的な新車たちのギャラリーはこちら!
■「メーカーの規模」に照らし合わせると?
ところが、自動車メーカーには「規模」というものがあるので、次は企業規模(現行車の数に対して新車をどれくらい出しているか?)で計算し直してみよう。
トヨタのラインナップは現在47車種。これに対してこの10年でモデルチェンジした数はどのくらいの割合になるのかというと、97%ということになる。
同じ方式で各社を計算してみると、上の表のような結果になった。値が高いほど頑張ったメーカーだと言えることになる。今回の表で言えばホンダとスバルさらにスズキがそれだ、ということになるだろう。
■ジャンル別 新車攻勢を頑張るメーカーサボるメーカー
カテゴリー別に分けて各社の新車投入の状況を見てみよう。カテゴリー分けはセダン、コンパクト、SUVなど7つ。ここのページを見れば、どのメーカーがどの分野で頑張っているかがわかるはず。
もちろんダイハツやスズキなどは軽自動車メーカーであるわけでいわずもがなながら、人気のSUVはどのメーカーが頑張っているか、今はちょっと地味な存在のセダンだが、地味ながらどこが力を入れているか、などなど一目瞭然だ。
●セダン
今回調査したなかで最も数が多かったのがセダンカテゴリー。現在のセダンの趨勢を考えると意外な印象が残るが、全33車がノミネートされた。
そのなかで最も新車を投入していたのは1位トヨタ。レクサスを合わせると13車種も新型を投入している。なので「たいへんよくできました」賞はトヨタに決定。2位はホンダの7車種。逆に一番投入数が少なかったのはマツダとスバル。こちらは4車種のみ。う~ん、残念でした。
■セダン 10年間の新車投入台数ランキング
1位……トヨタ(13車種)
2位……ホンダ(7車種)
3位……日産(5車種)
4位……マツダ、スバル(4車種)
●SUV
グローバルで人気のSUVカテゴリー。全30車種の結果は、1位はトヨタで、プラド、ハリアーなど10車種を市場投入、2位は三菱、マツダ、スバルが同着となり4車種投入。5位はスズキとホンダでそれぞれ3車種投入。6位は日産という結果になった。
トヨタはレクサスを含めてだから数的には圧倒しているけど、1970年代から4WDを得意としてきた三菱が上位に食い込んだのは、意地を見せた感じだ。
さすが三菱、パチパチ! 頑張ってほしい。
■SUV 10年間の新車投入台数ランキング
1位……トヨタ(10車種)
2位……三菱、マツダ、スバル(4車種)
5位……スズキ、ホンダ(3車種)
7位……日産(2車種)
●ミニバン
全17車種がエントリー。車種数でみると3社が1位で同着。トヨタ、ホンダ、日産ともに5車種投入した。
4位は三菱の2車種という結果になった。そのうちトヨタはアルヴェル兄弟とノアボク兄弟の4車種を含むのでこの判定は微妙なところだが、販売力が他社を上回るところから「たいへんよくできました」賞はやはりトヨタか。
三菱は次回の調査に向け「もっとがんばりましょう」賞であります。
■ミニバン 10年間の新車投入台数ランキング
1位……トヨタ、ホンダ、日産(5車種)
4位……三菱(2車種)
●コンパクト
コンパクトカークラスは、量販車としてメーカーが最も力を入れる分野。26車種がノミネートだ。
ここでもやはりトヨタが強く、9車種を投入して1位。トヨタに次いで貢献していたのが2位スズキ。スイフト、ソリオ、イグニス、クロスビーと6車種を投入している。
3位はマーチ、リーフ、ノート、4車種投入した日産だ。マツダ、三菱がそれぞれ1車種の投入というのは寂しいかぎり。
■コンパクト 10年間の新車投入台数ランキング
1位……トヨタ(9車種)
2位……スズキ(6車種)
3位……日産(4車種)
4位……ダイハツ(3車種)
5位……ホンダ(2車種)
6位……マツダ、三菱(1車種)
●軽自動車
ノミネート車が29車種もあったこのカテゴリー。結果1位になったのはワゴンR、ジムニー、ハスラーなど10車種を市場投入したスズキ。
2位は9車種を投入したダイハツ。3位は6車種を投入したホンダ。4位は4車種を投入した三菱という結果になった。
今回はOEMをカウントしていないけど、ダイハツもスズキも軽がメインの自動車メーカーなので、妥当な結果というわけだ。
■軽自動車 10年間の新車投入台数ランキング
1位……スズキ(10車種)
2位……ダイハツ(9車種)
3位……ホンダ(6車種)
4位……三菱(4車種)
●ワゴン
ワゴンカテゴリーは微妙な判定になった。ノミネートは全15車種。そのなかでトヨタ、ホンダ、マツダがそれぞれ3車種となり3社は同点。
バレーノ1車種のみだったスズキは次点となり「もっとがんばりましょう」賞という結果になった。最近このカテゴリーは人気低迷なのか、総数が少なかったのは残念。
巻き返しが来るのは、果たしていつか?
■ワゴン 10年間の新車投入台数ランキング
1位……スバル(5車種)
2位……トヨタ、ホンダ、マツダ(3車種)
5位……スズキ(1車種)
●スポーツ
『ベストカー』のような自動車雑誌の誌面を賑やかに飾るのがスポーツカー。全9車種が揃った。
しか~し、数的にはそれほどたくさん売れるクルマではない。現にGT-Rだって6月に売れた台数はわずか37台。ただし各社にとってイメージリーダーカーとして欠かせない存在。
そんななか、結果は1位トヨタ4車種、2位スバル3車種とホンダの3車種。4位はマツダ、スズキの2車種という結果になった。
■スポーツカー 10年間の新車投入台数ランキング
1位……トヨタ(4車種)
2位……スバル、ホンダ(3車種)
4位……マツダ、スズキ(2車種)
* * *
■まとめ
いかがだっただろうか。なんだか一部のメーカーに辛いようなランキングになった感触もあるが、そんなことはない。それだけジャンルを絞り、効率よく新車を送り出していることが見て取れるはずだ。
担当的には、逆に先述の通り「軽自動車メーカー」のイメージが強いスズキが多くのジャンルで車種を展開しているのがこれまた意外な印象だった。
クルマファンにとって、魅力的なクルマがどんどん出てくるのは興味深いし、何より楽しい。
しかし、これは自動車メーカーにとってみれば、かなりしんどい作業だ。開発にはお金もかかるし、労力も必要とされる。コンパクトクラスのクルマ1台を世に送り出すには300億~400億円もかかるといわれている。
しかも近年は環境に配慮しろ、安全性を高めろ、自動運転だといろいろやらなくちゃいけないことがたくさんある。なので、開発費がさらに上乗せになる。
だから近年は1社のコストを抑えるために、他メーカーと協業して開発の分担をしたり、部品の共用化などを拡大している。よくニュースで自動車メーカーの○○社と○○社が提携した、なんていう話は、実はコスト削減が狙いなのだ。
果たして今後の10年間で、メーカーは同じような数の新型車を出せるのか? エネルギー問題などいろいろあるのでちょっと心配だが、心躍るようなクルマの出現を心待ちにしたいものだ。
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【番外コラム】現行のご長寿モデルたち
上では2009年から2018年までの登場したクルマを紹介しているが、現行車のなかにはそれ以前に発表されたクルマも存在する。
ハイエース、エスティマ、パジェロ、プレミオ、アリオン、デリカD:5、ランクル200、GT-R、キューブ、フェアレディZの10台だ。
GT-Rは年次モデルのようなものだけど、エスティマ、キューブ、フェアレディZの次期モデルの登場に期待。
日産 GT-R(2007年)
日産 フェアレディZ(2008年)
三菱 デリカD:5(2007年)
トヨタ エスティマ(2006年)
日産 キューブ(2008年)
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