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フルモデルチェンジを受けた日産「エクストレイル」に試乗──上質さを追求した新型の走りやいかに|NISSAN

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フルモデルチェンジを受けて7月20日に発売された新型日産「エクストレイル」。4代目となる今回のモデルでは、「タフ×上質」を開発テーマに上質さを追求したという。モータージャーナリストの今尾直樹氏がその走りをリポートする。

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日産のSUV「エクストレイル」に試乗

フルモデルチェンジを受けて7月20日に発売された新型日産「エクストレイル」。4代目となる今回のモデルでは、「タフ×上質」を開発テーマに上質さを追求したという。モータージャーナリストの今尾直樹氏がその走りをリポートする。

Text by IMAO Naoki|Photographs by MOCHIZUKI Hirohiko

まるでよくできた直6の乗用車のような“上質さ”

7月20日、新型日産「エクストレイル」が国内発売となった。今年の自動車界で最大級の話題となること必至の、“技術の日産”の入魂作である。開発のキーワードは「タフ×上質」。初代と2代目は「タフギア」、3代目ではこれに自動運転アシストのプロパイロットに代表される「先進技術」をプラスして日産の主力モデルに。9年ぶりの新型となる4代目では 「上質さ」を加えたという。

日産追浜試験場内のテストコースで開かれた先行試乗会に参加した我々は確認した。新型エクストレイルの内外装の高い質感と、全長4kmのコースを2周するという限られた条件ではあったものの、新開発の1.5リッター3気筒VCターボエンジンで発電し、前後2つのモーターで駆動する4WDシステム、「e-4ORCE(イー・フォース)」によって、まるでよくできた直6の乗用車のような“上質さ”が生み出されていることを。

この上質さには、新しいプラットフォームが基礎となっている。ボディ剛性は40%、サスペンション剛性は55%も向上しているというのだ。ボディサイズはほとんど変わっていない。プラットフォームの一新にもかかわらず、ホイールベースが先代と同じ2,705mmのままなのは、クラス最大級の室内&荷室空間が好評だったからだ。全高を20mm下げ、全幅を20mm拡大しているのは、ロー&ワイドの、よりスタイリッシュなプロポーションを得るためだとされる。

メカニズムで注目すべきは、日産が世界に先駆けて量産化に成功した可変圧縮比エンジン、VC(Variable Compression Ratio Engine)ターボを独自のハイブリッドシステム「e-POWER」の発電用内燃機関として採用したことである。

VCターボは、クランクシャフトに当たる部分にほぼ平行四辺形の主部品からなるマルチリンク機構と、平行四辺形の角度を変化させるモーターを備えている。平行四辺形の角度が変わると、ピストンの上死点の位置が数mm上下し、圧縮比が8:1から14:1まで自在に自動的に変わる。パワーが必要なときは低圧縮、必要でないときは高圧縮に変化することで、高出力と高効率を両立させているのだ。その変化の幅は、排気量でいうと1.5リッターから2.8リッターに相当するという。

新型エクストレイルのVCターボは1.5リッター3気筒で、最高出力106kW(144ps)/4400―5000rpmと最大トルク250Nm/2400―4000rpmを発揮する。前輪の駆動を担当するフロントのモーターは150kW(204ps)と330Nm、e-4ORCEの場合は、さらに100kW(136ps)と195Nmを生む、後輪の駆動用としては強力なモーターを搭載する。

いずれのモーターも基本的にはリチウムイオン電池に蓄えた電力で走行するわけだけれど、電池の容量は比較的小さい。その分、発電機としてエンジンの果たす役割は大きくなる。VCターボは低回転で大トルクを生み出すことができる。当然のことながら、エンジン回転数は低いほど、また作動頻度は少ないほど、静粛性を保つことができる。VCターボは、e-POWERは発電機としても適任なのだ。

「技術の日産」の面目躍如

「技術の日産」の面目躍如

数字を並べると、最大トルク250Nmのエンジンが発電する電力で、330Nmと195Nm、馬力だと144psの3気筒ターボで、204psと136ps、2つのモーターを動かす、ということになる。あくまで、原動機それぞれの最高出力と最大トルクの数値を並べているから魔法のようにも思えるわけだけれど、これらエンジン、モーター、そして電池からなるシステムの巧みな制御に、日産e-POWERとe-4ORCEの真骨頂がある。

エンジン単体として見ても、VCターボは興味深い。開発担当者によると、平行四辺形のリンクはバランサーシャフトとしても働き、3気筒なのに6気筒と同じ振動特性を得ているという。直6といえば、完全バランスである。あくまで発電のみで、駆動には関わっていない。それでも全開時に聞こえてくるエンジン音は乾いた小気味のよいもので、回転の上昇と加速の感覚が一致している。フル加速時にはガソリンエンジンっぽさが漂ってくるのだ。

ちなみに、VCターボの摩訶不思議な機械式のリンク構造は、微分積分が趣味だというエンジニアがコンピューターではできない複雑、かつ膨大な計算を、一人でせっせとこなすことによって生まれたのだという。もうひとつ驚いたのは、マルチリンク構造の主部品、平行四辺形っぽいカタチのパーツはヤスリよりも強度のある鍛造の削り出しで、日産で内製しているということだ。モノづくりの国、「技術の日産」の面目躍如というべきではあるまいか。

VCターボを、駆動用エンジンとして搭載するモデルも海外ではすでに販売されている。日本市場は電動化を推進する方針のため、販売予定はないという。実にもったいない。とも思うけれど、新型エクストレルの上質さは、VCターボによるe-POWERがもたらしたものであり、VCターボなかりせば、我々の驚きもなかっただろうこともまた事実である。

なお、新型エクストレイルは下からS、X、Gの3種類のグレードと、スペシャルな仕様としてオーテックがある。オーテックは、20インチでミシュランを装着する。

駆動方式にはそれぞれに前輪駆動と4WDのe-4ORCEがある。e-4ORCEは195Nmと、後輪専用としては強力なモーターを搭載する。と前述したけれど、たとえばトヨタRAV4のE-FOURのリア・モーターは121Nmで、RAV4の場合はエンジンとモーターで前輪を駆動する。e-4ORCEは常に前後モーターと左右ブレーキで各輪のグリップ限界を算出し、各輪の駆動力をコントロールする。モーターはトルクを即座に生み出すことができるから、より緻密な制御ができる。それゆえ、意のままのコーナリング、雪道でもオフロードでも、圧倒的な安心感と楽しさを提供する、と日産は主張する。

「プロパイロット パーキング」等、運転支援装備や、「ハローニッサン」と呼びかけると答える対話型インターフェイスも搭載。

3列7人乗りの設定もある。価格は319万8800円から504万6800円まで。車両価格と購入層の年齢の上昇が、上質さを追求させた一因でもある。開発陣は目標をクリアし、よくその期待に応えた、と筆者は思う。

Spec
Nissan X-Trail X e-4ORCE|日産エクストレイル X イーフォース


全長×全幅×全高|4,660×1,840×1,720mm
ホイールベース|2,705mm
トレッド前/後|1,580 / 1,590mm
駆動方式|4WD
車重|1,880kg
乗車定員|5名
サスペンション前|マクファーソン・ストラット/コイル
サスペンション後|マルチ・リンク/コイル
エンジン|1,497cc 直列3気筒DOHC(ボア×ストローク=84.0×90.1mm)+インタークーラー付きツインターボ
最高出力|106kW/4400―5000rpm
最大トルク|250Nm /2400―4000rpm
モーター(フロント)| BM46 交流同期電動機
最高出力|150kW/4739―5623rpm
最大トルク|330Nm/0―3505rpm
動力用主電池|リチウムイオン電池
モーター(リア)|MM48 交流同期電動機
最高出力|100kW/4897―9504rpm
最大トルク|195Nm/0―4897rpm
動力用主電池|リチウムイオン電池
ブレーキ前後|ベンチレーテッドディスク
タイヤ前後|235/60R18 103H
価格|379万9400円



日産お客さま相談室

Tel.0120-315-232(9:00-17:00、12/31-1/2を除く)

http://www.nissan.co.jp/

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