アストンマーティンは2020年3月4日、「V12スピードスター」の発表を本社で行なった。このモデルも本来はジュネーブモーターショー2020でデビューする予定であったが、ショーの開催中止のため、本社での公開となっている。
グッドイヤー 「スケッチャーズ(Skechers)」とゴム靴底を共同開発
88台限定のハンドメイド・スーパーカー
特別に選ばれたエキスパート・ドライバーのためのスペシャル・モデル「V12スピードスター」は、生産台数88台という希少なモデルだ。このモデルもアストンマーティンのパーソナライゼーション・サービス部門、「Q by アストンマーティン」が手掛け、アストンマーティンの長いレーシング・ヒストリーだけでなく、航空機デザインからもヒントを得て造り上げられた。そのためもあって今回公開された「V12スピードスター」は、戦闘機F/A-18コンセプトカラーに塗られている。
「V12スピードスター」は、「Q by アストンマーティン」チームの努力により、開発期間は12ヶ月を少し上回る程度という短期間で初期設計から最終量産確認に至る全工程を完了している。
アルミ製シャシーとカーボン製ボディ
「V12スピードスター」のシャシー/フレームは、最新のアルミニウム接着構造を採用するとともに、「DBSスーパーレッジェーラ」や「ヴァンテージ」のコンポーネンツを流用したユニークなプラットフォームを採用。
フロント・ダブルウィッシュボーン、リヤ・マルチリンク・サスペンションには、コイルスプリングとアダプティブ・ダンピング(スポーツ、スポーツ+、トラックの3モード切替式)が組み合わされ、標準装備される21インチ鍛造アロイホイールはセンターロック式になっている。標準装備されるカーボンセラミック・ブレーキは、フロントが410mm、リヤは360mmと大径ローターを装備。
ボディは、ほぼカーボンファイバーで製作されたビスポーク・ボディが架装されている。この「V12スピードスター」は歴史にインスピレーションを求めたクルマだという。
1959年にル・マン24時間を制したDBR1からアストンマーティン100周年記念の2013年型CC100スピードスターに至るモデルとデザイン的な関連付けがされている。ミッドセクションは、1953年型DB3Sの雰囲気を持っている。その一方で最新鋭のジェット戦闘機「F/A18」からもインスピレーションを得てデザインを融合させている。
ルーフもフロント・スクリーンもなく、巨大なエンジンと、低く幅広いショルダー、2座席用のハンプ、ドライバーとパッセンジャーを分離する背骨のような形状などにより圧倒的にエモーショナルなスタイリングが実現している。
低く、しかし軽快なリヤエンド、大胆な印象のフロントグリル、特徴的なヘッドライト、「ノストリル」と呼ばれるボンネットのデザインにより独自のエクステリアとなっている。「ノストリル」は、長期間にわって封印されてきたデザインだが、今回のモデルで復活を果たした。
ジェット戦闘機のイメージを融合
インテリアも挑戦的で、多様な本物の素材を使って伝統とモダンを融合させている。構造部材として機能するサテン・カーボンファイバーと伝統のハンドクラフト・サドルレザー、クローム、アルミニウム、3Dプリント・ラバーを使用してデザインの調和を図っている。視覚的にも、物理的にもインテリアからは重量感がそぎ落とされ、スリムで効率的なスタイルに仕上げられている。
ただしアストンマーティン伝統のキャラクターは残されている。助手席前方、通常はグローブボックスが配置される場所にリムーバブル・レザーバッグを装着したほか、リヤバンプ下に収納スペースを確保している。
今回、本社で公開された「V12スピードスター」は、戦闘機F/A-18に触発されたコンセプト・スペックで仕上げられている。なんと、この仕様をそのままオーダーすることも可能だ。「V12スピードスター」は、ボーイングとのコラボレーションにより、「Q by アストンマーティン」の手によって生み出されている。
印象的なカラーリングは、ジェット戦闘機をモチーフとした「スカイフォール・シルバー」で、エキゾーストやベントグリル、ベーンなどにはマットブラックが採用され、全体として引き締まった印象になっている。
フロント・ミッド搭載のV12ツインターボ・エンジン
「V12スピードスター」のフロントにミッドマウントされるエンジンは、アストンマーティンが誇る5.2L・V12ツインターボ・エンジンが搭載される。最高出力は710ps、最大トルクは753Nmだ。このオールアルミ、DOHC48バルブ・ユニットには、ZF製8速オートマチック・トランスミッションとリヤLSDが組み合わされている。0-100km/hを3.5秒で加速し、最高速度は300km/hに達する。
このアイコニックなV12エンジンは、その驚異的なパフォーマンスだけではなく、豊かで官能的な特長を備えており、スリリングなドライビングを実現し、爽快なエキゾースト・ノートを奏でる。
V12ユニットをこのリミテッド・エディションに搭載するにあたり、専用のステンレス製エグゾースト・システムを開発。リヤエンド中央、ディフューザーの上に取り回されたエグゾーストは、野太く、迫力あるサウンドを生み出す。
アストンマーティン・ラゴンダ・グループのアンディ・パーマー社長兼CEOは、「アストンマーティンは、ユニークで特別なモデルをお届けすることに全力を注いでいます。V12スピードスターは、このコミットメントを完璧に表現しています。88台のハンドビルト・カーは、全世界のエンスージアストやコレクター垂涎の的となるでしょう。個人的には、V12スピードスターがドライバーに提供するもの以上に、その象徴的な存在感に興奮を覚えます。このクルマは、弊社のエンジニアリングの可能性と野心を具現化しているだけでなく、アストンマーティンの栄光の歴史を表現しています」とスピーチしている。
なお、この「V12スピードスター」は受注を開始している。加価値税 (VAT) を含む車両本体価格は、765,000ポンド(約1億3000万円)からとなっている。デリバリーは、2021年第1四半期から開始される予定だ。
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