好調CX-60 月販目標の4倍
マツダの新型モデル「CX-60」の販売が好調なようです。マツダの発表では2022年9月15日の発売時点で、受注は8726台。月販2000台を計画していたCX-60としては、その4倍の数字を、6月24日からの予約開始からの約2か月半で達成しました。マツダとしては、幸先の良いスタートを切れたと考えているようです。
【画像で見る】マツダCX-60&ライバルになりそうな車種たち
ここで面白いのは、CX-60を予約したうちの約20%が輸入車からの乗り換えだという点です。マツダ車からの乗り換えは57%で、残りの43%は新規。その43%のうちの半数近い20%が輸入車ユーザーだというのです。マツダからも「より上質なSUVを求める、マツダ車の保有経験の無い新しいお客様にも選んでいただけるよう、エンジンレイアウト、パワートレイン、シャシー、サスペンションなどを一新した全く新しいクルマづくりに挑戦しました」との執行役員からのコメントも発表されています。
また、試乗会などで会ったマツダの方に聞けば、どうもドイツ車からの乗り換えが多いとか。では、輸入車から乗り換えた人にCX-60の何が刺さったのでしょうか。
まず、そもそもの話、輸入車、特にドイツ車に乗っている人は、何をもってドイツ車を選ぶのでしょうか。明確な数字はありませんが、「壊れない」とか「燃費が良い」「コスパがよい」といったことが理由でないことは確かでしょう。そうした項目は日本車が大得意とする部分。日本車を差し置いて、わざわざ高額なドイツ車を買う理由にはなりません。
輸入車ユーザーが選ぶポイントとは?
そうとなれば、一番に濃厚な理由は「走行性能」でしょう。なんといっても、ドイツには速度無制限のアウトバーンがあります。そこでは日本の高速道路よりも圧倒的に高いスピードでクルマが走っています。150km/hが普通で、速いクルマであれば200km/h以上で走っています。そんな高速域を日常的に使うようにできているのがドイツ車です。
実際に、ドイツ車に乗ってアウトバーンのような超高速域を走ってみれば、日本車との違いは明白です。ドイツ車は、とにかく安心感があります。これは、クルマ本体の剛性や、サスペンションとパワーステアリングなどの調整が肝になります。長年積み重ねてきたノウハウが生きる領域です。その違いは、実のところ低速域でも感じることができます。「なんとなくしっかりしている」と感じられるのです。これがドイツ車の大きな魅力の一つと言えるでしょう。
一方、日本はどうかといえば、もっと走行するスピードが低いのが特徴です。高速道路の最高速度は120km/hですし、パワーの小さな軽自動車もたくさん走っています。筆者の海外取材を通しての印象としても、欧州の人は、日本人よりも飛ばす人の割合が多いと感じています。
また、日本人は「壊れない」「見栄え、品質」「使い勝手」などに関する要求が高いのも、よく耳にする話です。そうした日本人の国民性は、当然、クルマ作りにも大きな影響を与えます。その結果、日本車は、壊れないとか見栄えが良い、使い勝手の良さが得意になり、ドイツ車は走行性能が得意になるというわけです。
ドイツ車と相通じるものは「走り」
そんな日本車の中でも、マツダはユニークな存在です。特に「走り」にこだわっているのが特徴です。ブランドのアイコンとして、2座スポーツカーの「ロードスター」を掲げています。また、「マツダらしいの走りが実現できない」と、日本でのドル箱となるミニバンをやめてしまいました。代わりに多人数乗車モデルとして投入したのが、SUVの「CX-8」です。
そして、新型CX-60も走りにこだわった製品です。これは、わざわざ新しいFR(フロントにエンジンを置いた後輪駆動)のプラットフォームを新規に開発しました。トヨタの旗艦でもある「クラウン」でさえ、FRをやめてFF(フロントにエンジンを置いた前輪駆動)プラットフォームを採用したというのが、日本の今の流れです。FRよりもFFの方が、室内空間を広くとることができることもあり、現在の日本車の圧倒的多数はFFプラットフォームになっています。
ただし、ドイツ車の大型&高性能セダンや、SUVの多くはFRプラットフォームを採用しています。そういう意味で、CX-60は日本車よりもドイツ車と近い部分があるのでしょう。
さらに、マツダはCX-60のために、新規に直列6気筒エンジンを開発しました。その狙いは、マツダいわく「心昂るような運転体験を感じていただけます」とあるように、「走りの楽しさ」です。「時代はEVだ!」と過激なまでの電動化が叫ばれている中、わざわざ新しい内燃機関で勝負したことは、驚くばかりです。
ドイツ車を選ぶユーザーは、その走行性能に魅力を感じています。そして、マツダのCX-60は、FRプラットフォームや直列6気筒エンジンなど、走りにこだわって開発されています。ドイツ車とCX-60に相通じるものは「走り」。だからこそ、「CX-60」は、輸入車ユーザーにも認められ、20%もの乗り換えユーザーを獲得することができたのではないでしょうか。
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