人気スポーツカーがEVに
ポルシェ718ボクスターの後継モデルと思われるプロトタイプが初めて目撃された。
【画像】次世代ボクスターは電動モデルへ【目撃されたプロトタイプとコンセプトモデルを写真で比較】 全54枚
次世代のポルシェ718ケイマンおよびボクスターには、ミドエンジン車の特徴を模して設計された電動スポーツカー用プラットフォームが採用される見込みだ。
ポルシェは、次世代718を電動ドライブトレインのみの設定とし、2020年代半ばまでに発売する意向であることが確認されている。既存のタイカンや、2024年デビュー予定のマカンEVの登場に続く、第3の電動モデルラインとなる可能性が高い。
今回撮影された車両は、第5世代となる「983」型ボクスターのプロトタイプと思われる。撮影者によると、エグゾーストパイプはフェイクであるという。ヘッドライトとリアライトバーのデザインは、タイカンと共有されるようだ。
この他、現行モデルとの明確な違いはまだ明らかではない。ポルシェが先に発表したミッションRコンセプトのデザインと、ライトなどのディテールは似ているが、サイドプロファイルは現行ボクスターにかなり近いものである。
2~3年以内の発売が予想されることから、この時期にプロトタイプが公道でテスト走行を行うというのは妥当なところだろう。ポルシェはこの写真について公式コメントを避けた。
ミドエンジンの挙動を再現
ポルシェは、2025年に世界販売台数の50%、2030年には80%をEVとする計画だが、スポーツカーの911やSUVのカイエンに相当するEVモデルの発売時期はまだ確定していない。
新たに導入される電動スポーツカー用プロトタイプでは、「eコア(e-core)」と呼ばれる斬新なバッテリーレウアウトを採用。低い着座位置と低重心を実現するという。
ポルシェはミッションRコンセプトのデザインについて、同社のデザインスタジオで並行して行われている次世代EVを反映したものであると認めている。一部のデザイン要素は、いずれ市販モデルにも反映されるようだ。なお、サイズは現行のケイマンやボクスターに近いものになっている。
シャシーは、718ケイマンのものをベースとしている。昨年のミッションRの発表会で、市販化の可能性について問われたポルシェのオリバー・ブルーメCEOは、次のように答えた。
「モデルを電動化する際、内燃機関(プラットフォーム)のキャリーオーバーは行いません。なぜなら妥協点が多すぎるからです」
「将来のスポーツカーを見据えた場合、独自のプラットフォームを開発しますが、一部のモジュールは他のモデルと共有します。しかし、プラットフォームは独自のものになるでしょう」
ミッションRはミドエンジン・スポーツカーのデザインを模倣しており、最も重い部品であるバッテリーをドライバーの後ろ、通常はエンジンがあるリアアクスルの前に配置している。
ポルシェの技術責任者であるミヒャエル・シュタイナーは、このような特異なレイアウトを採用した理由として、空気抵抗を減らすために車高をできるだけ低くする必要があったと述べているが、この方法では、バッテリーを床下に設置する従来の「スケートボード型」を採用することができない。
床下にバッテリーを置く方法は、ポルシェとアウディが共有するJ1アーキテクチャーだけでなく、既存のタイカンや今後発売されるPPEプラットフォームにも採用されている。
シュタイナーは次のように語っている。
「一般的な2ドアのスポーツカーでは車高が非常に低くなっていますが、これはシルエットをできるだけ低くフラットにすることで、空気抵抗を減らすためです」
「そのため、ドライバーをできるだけ低い位置に座らせる必要がありますが、そうするとシートの下にはバッテリーを搭載するスペースがありません。今日、多くのスポーツカーがミドエンジンを採用している理由と同じです」
「現在の技術では、バッテリーがクルマの中で最も大きくて重い部品となっています。そこで、わたし達は『eコア』というバッテリーデザインを開発しました。パッケージング的にも重心的にも、ミドエンジンの設計をほぼそのまま再現しています」
また、シュタイナーはプラットフォームについて次のように述べている。
「電動化によって変わらないプラットフォームはありませんが、当社のポートフォリオの中でそれほど変わらない可能性があるのは、ボクスターやケイマンのようなミドエンジン車のプラットフォームだけでしょう」
「ポルシェは10年前、エンジンとトランスミッションのスペースをバッテリーに使えるという理由で、このミドエンジンのレイアウトを採用したプロトタイプを製作しました。しかし、社内では内燃機関、プラグイン・ハイブリッド、完全EV用に対応したコンバージョンタイプのプラットフォームは作らないことに決まっています。重量やパッケージングといった面で妥協があるからです」
「ミドエンジン車であっても、完全電動プラットフォームを設計することには十分な理由があります。これは将来的に変わるかもしれませんが、少なくとも今後数年は変わらないでしょう」
シュタイナーは、911のような後輪駆動車の模倣を試みるのではなく、ミドエンジンのデザインを検討していると述べた。これは、安全上の理由からバッテリーを車体中央の衝突構造内に収めたいと考えているためだ。
このようなレイアウトは、将来的にはランボルギーニやアウディといった兄弟ブランドにも採用される可能性があるようだ。シュタイナーは、ミッションRのようなコンセプトを、スーパースポーツカーの「方向性」を持ったレイアウトで開発することができると述べている。
「これは技術的な理由だけではありません。往々にして、『方向性』は市場の好みを汲んでおり、その方向性に沿って技術を開発しようとしているのです」
718ケイマンと同程度の性能を持つ電動スポーツカーが顧客に受け入れられるかどうかを尋ねると、シュタイナーは次のように答えてくれた。
「受け入れてもらえるでしょう。しかし、そのためには軽量化が必要です。本物のスポーツカーをサーキットで走らせても、重さは感じられるでしょう。ハイウェイでは気づかないかもしれませんが、本物のスポーツカーはサーキットでパフォーマンスを発揮しなければなりません」
フォルクスワーゲン・グループが現在開発しているSSPプラットフォームは、実質的にフォルクスワーゲンが主導するMEBと、アウディ/ポルシェが開発するPPEを融合したもので、床下にバッテリーを搭載したスケートボード風のデザインが特徴だ。
また、バッテリーデザインの統一化にも取り組んでおり、生産するEVモデルの80%以上に採用することができるとしている。
しかし、そうすると、異なるバッテリーデザイン(eコア)を使用する「ミドエンジン」のレイアウトに合わせるため、新たなプラットフォームが必要になるかもしれない。
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