遅いクルマを速く走らせるほうが楽しい
突然だが、「楽しいクルマ」を思い浮かべてほしい。
【画像】パワーに関係なく楽しめるクルマ【写真で見る】 全125枚
そう言われて、ポルシェやランボルギーニといったメーカーが製造する、大排気量・高出力の高級車を思い浮かべた方も多いのではないだろうか。スポーツカーの運転は人生最高の体験の1つと言えるものだが、運転することを楽しむためにわざわざ重いローンを組む必要はない。
実際、現代の高性能スポーツカーの性能をフルに発揮できる場所は少ない。その結果、普通の道路で運転することにフラストレーションを感じることもある。
よく言われるように、「速いクルマを遅く走らせるより、遅いクルマを速く走らせる方が楽しい」ということもある。ここでは、運転の楽しさは馬力や排気量、加速力とは関係ない、ということを実証してくれるクルマを紹介する。
オースチン・ヒーレー・スプライト(1958年)
英国のスポーツカーブランド、オースチン・ヒーレーは、低予算のスポーツカー愛好家のために初代スプライトを開発した。そのため、価格もパワーもそれ相応に設定された。
「フロッグアイ(蛙の目)」のような独特のヘッドライトの奥には、モリス・マイナーから借用した948cc 4気筒エンジンを搭載し、最高出力44psにチューンアップされている。
スプライトはドラッグレースでは勝てないが、そのドライビングの純粋な面白さは、1950年代から1970年代にかけての英国産コンバーチブルの素晴らしさを端的に物語っている。
オースチン・ミニ(1959年)
初代ミニはもともと、スポーティにデザインされたものではない。低い着座位置、軽い車重、優れたエンジンなど、さまざまな要素のおかげで、ほぼ偶然にそうなったのである。
大がかりな改造を施さない限り、速度記録を更新することはできないが、「ゴーカートのようなハンドリング」という言葉を生み出したクルマであるということから、その魅力の深さをうかがい知ることができる。
モンテカルロで何度も優勝しているクーパーチューンのモデル(写真)は真のホットハッチだが、34psのベーシックなモデルでさえ、ハンドルを握れば数秒後には笑顔がこぼれるはずだ。
フィアット850スパイダー(1965年)
フィアットは850のラインナップを拡充し、1965年のジュネーブ・モーターショーでベルトーネデザインの新型スパイダーを発表した。標準の850に代わるスポーティなモデルとして販売され、欧州仕様車にはその理念を裏付けるように50psの843cc 4気筒エンジンが搭載されている。
決して速いとはいえないが、魅力的なドライビング・エクスペリエンスを提供し、エンスージアストから絶賛された。当時のパンフレットには、最高速度145km/hと謳われていた。
フォルクスワーゲン・ゴルフ(1974年)
フォルクスワーゲンのゴルフGTIは、1975年に初代モデルがデビューして以来、ホットハッチの頂点、あるいはそれに近い位置にいるモデルである。しかし、標準のゴルフでも、競合車より「1kmあたりの笑顔」を多く提供してきた。
それは、どんなパワートレインでも確かなハンドリングを実現するようにチューニングされたシャシーと、楽しさを重視して開発されたさまざまな派生モデル(写真のコンバーチブルなど)のおかげである。
7代目モデルも例外ではなく、現行の8代目モデルにも大きな期待が寄せられている。
ボルボ240(1974年)
靴箱のような形、戦車のような構造、スイス製の腕時計よりも高い信頼性など、ボルボ240には素晴らしい属性が多く備わっている。スピード、パワー、パフォーマンスには欠けるが(ターボチャージャー搭載モデルは別)、特に凍結した路面での運転が楽しいクルマだ。
後輪駆動のファミリーカーとして、子供たちを学校に送るために長く活躍した後、多くの個体はドリフトカーとなり、冬はスカンジナビアの辺境にある凍結湖で過ごしている。
トヨタMR2(1984年)
トヨタは1970年代、魅力的なハンドリングとエコノミーカー並みの燃費を両立させるべく、MR2の開発プロジェクトをスタートさせた。まず、エンジンをキャビンの真後ろに配置することで、第一の条件をクリア。そして、比較的小型の4気筒エンジンを搭載することで、第二の条件を満たした。
1984年に発売された初代MR2は、その構造の一部をカローラと共有しながらも、本格的なスポーツカーが持つようなハンドリングを実現した。米国仕様のMR2は最高出力114psだったが、後に147psのスーパーチャージャー付き4気筒がラインナップに加わった。
その後、MR-Sに至るまでの3世代にわたって、この基本的な公式から外れることはなかった。
プジョー205 XS(1986年)
プジョー205のGTIモデルは、パフォーマンスを求めるユーザーにとって最良の選択肢と考えられて当然である。しかし、1986年から1992年にかけて生産された最高出力81psのXSのような中間グレードでは、価格的にも運転スキル的にも、身近な存在として新しい楽しみを提供してくれる。
GTIに追いつく前にXSの限界に達してしまうが、楽しさはほとんど変わらない。
マツダ・ロードスター(1989年)
マツダの技術者たちは、「人馬一体」という言葉をコンセプトに初代ロードスターを開発した。騎手と馬が一体となったようなクルマという意味だ。曲がりくねった裏道を走れば、ステアリング、サスペンション、シャシーがドライバーの心を読み取るかのように動いてくれる。多くの人が畏敬の念を抱くことだろう。
競合車とは異なり、マツダはロードスターを大きく、重く、速くしようとすることはなかった。4代目となる今も、最もパワフルなモデルで184psを発揮する4気筒エンジンを搭載した、小型で軽量かつバランスのとれたオープンカーであることに変わりはない。
多くのチューナーが強制吸気や気筒数を増やすなどして性能向上を図ったが、マツダ自身は初代モデル(写真)の黄金のレシピにこだわり続けている。
スズキ・カプチーノ(1991年)
日本は軽自動車規制を設け、小さくて安い、低燃費なクルマを広めようとした。しかし、ベーシックだからといって遅いわけではない。軽自動車のスズキ・カプチーノは、グランドツアラーというよりエコノミーカーに近いが、フロントミッドマウントの3気筒エンジンのおかげで、前後重量配分が50対50という絶妙なバランスを実現していた。
64psという馬力は大したことないが、カプチーノの小さな車体と、わずか727kgという身軽さを忘れてはいけない。
シトロエン2CV(1948~1990年)
1990年に製造されたシトロエン2CV最後の個体は、1948年に製造された初期モデルと比べて約3倍のパワーを持つ。はじめは9psで発売されたものが、最終的に29psで引退したのである。
その性能は日時計で測れるほどで、直線での加速はいまひとつ。しかし、独特のサスペンション設計のおかげで、四輪を道路にしっかりと固定されたまま、時には驚くほど大きなボディロールを可能にしている。とにかく運転するのが楽しくて仕方がないクルマだ。
また、馬力も控えめなので、お散歩程度の運転でもペダルを踏み込んで目一杯に走らせることができる。欧州で2CVのレースシーンが盛んなのもうなずける。
プジョー106ラリー(1993年)
プジョーは1987年に205ラリーを発表し、間違ったシャシーに大きなエンジンを積むより、正しいシャシーに小さなエンジンを積む方が良いと証明した。そして、今度は「ラリー」という名称を106の後ろに追加することで、小型車を前例のない高みへと昇華したのである。
1993年に登場した最高出力101psの106ラリーは、スタートダッシュはそれほど速くなかったものの、回転数の高いエンジン(ピークパワーは7200rpmで発生)と歴代最高のサスペンションにより、ワインディングロード愛好家のハートを鷲掴みにした。
フォード・フォーカス(1998年)
初代フォーカスは、ヤマハと共同開発した1.6Lエンジンを搭載し、スリルのある運転と快適性を両立させたハッチバックだ。101psを誇る4気筒ゼテックエンジンは、軽快な走りと静粛性という異なる側面を併せ持つ。
フォード・ストリートカー(2003年)
スーパーカーを運転していると、知らぬ間に制限速度を大幅にオーバーしていることがある。96psのフォード・ストリートカー(StreetKa)に乗れば、頑張って走っていても制限速度を下回っていることに気づくだろうが、それでも同じように楽しむことができる。
小さく、低く、大きな音を立てるピニンファリーナ設計のストリートカーは、カタツムリのような速度で走っていても速く感じられるクルマだ。
マツダ・アクセラ(2003年)
マツダ・アクセラは、最もベーシックなグレードであっても、シャープなハンドリングでライバルを圧倒する。このクラスには珍しく、ステアリングは非常に正確で切れ味がよく、通勤用の安価なクルマという立ち位置からは想像できないほど高次元でバランスがとれているように感じられる。
最新型のマツダ3は、世代を経てさらに良くなっている。英AUTOCAR編集部は2019年初頭にロサンゼルス周辺で試乗し、堂々とした走りを見せるクルマであると評価している。
シトロエンC1(2005年)
シトロエンC1の開発過程では、性能は検討対象にすらならなかった。小さく、安く、低燃費であることが求められ、速さは論外だった。しかし、既成概念にとらわれないスピード狂が結成した「C1レーシング・クラブ」は、欧州で人気を集めている。AUTOCAR記者もこのレースに参戦し、その楽しさを語っている。
レースではC1の内装を剥がし、サスペンションを改造して耐久レースカーに変身させているが、69psのエンジンは100%ノーマルのまま。0-97km/h加速は約14秒だ。
日産マーチ(2010年)
4代目となる日産マーチ(海外ではマイクラの名で販売)は、一見すると「頭で買うクルマ」であり、「心で買うクルマ」ではないように見える。しかしカナダでは、レースに出るためだけに購入したマーチオーナーが存在する。
日産マイクラ・カップは、最も手頃な価格でサーキットを走ることができる方法として、高い人気を誇る。110psのエンジンに手を加えることはないが、参加者たちはハードなサスペンション部品やロールケージなどのアドオンでマイクラをアップグレードしている。
モーガン3ホイーラー(2012年)
83psのモーガン3ホイーラーは、停止状態から97km/hに達するまでわずか6秒しかかからない。比較的速い部類に入るものの、同等のモデルはあらゆる自動車メーカーから何十台も出ている。中には魂の抜けたようなクルマもあるが、3ホイーラーは違う。郊外をちょっと走るだけで、一度は笑顔になれるはずだ。
自動車とオートバイの中間的な存在である3ホイーラーは、他のマシンにはない楽しみを与えてくれるのだ。
トヨタ86/スバルBRZ(2012年)
トヨタとスバルが86/BRZの双子にターボチャージャーの搭載を頑なに拒んできたのには、それなりの理由がある。両車ともに必要としていないのだ。
最高出力208psの2.0L水平対向4気筒エンジンは、もっと大きなパワーにも対応できるが、両車はそもそも唖然とするような性能値を念頭に置いて設計されたわけではない。直線の速さよりも、バランスのとれたシャシーとシャープなハンドリングを好むドライバーのためのクルマなのだ。
ミニ・ハードトップ(2013年)
BMWがデザインしたミニは、偉大な先代とは大きく異なるクルマかもしれない。確かに大型化し、重く、高級志向で、高価になった。しかし、136psのターボチャージャー付き3気筒エンジンを搭載したエントリーモデルでさえ、A地点からB地点への移動手段として最も楽しいクルマの1つとして、堂々と存在感を示しているのだ。
これこそが先代のミニと共通する最も重要な特徴であり、楽しめるものでなければミニのバッジに値しないのである。
日産リーフ(2017年)
日産リーフのDNAを顕微鏡で覗いてみても、スポーティさは一筋も見当たらない。リーフに与えられた使命は、効率性である。しかし、電動パワートレインが発進直後から瞬時にトルクを発揮し、かさばるバッテリーパックはキャビン下に搭載されて重心を低くしているため、走れば楽しいクルマである。
もし筆者がイタリアのステルヴィオ峠を登るなら、間違いなくリーフより370Zを選ぶだろう。しかし、日産の風変わりなEVでどう楽しめるかも知っている。2010年に初代モデルが発売されて以来、少なからぬリーフオーナーがオートクロスイベントに参戦しているのは、そのためだ。
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