アップデートされたアルファロメオのSUV「ステルヴィオ」に今尾直樹が試乗した。
重心の高いSUVなのに……
アルファ・ロメオ・ステルヴィオの2020年モデルに新設定されたスプリントは、ジュリアとは異なり、ガソリンではなくて、2.2リッターのディーゼル・ターボを搭載している。そのおかげで、低中速トルクがじつに力強い。
Sho TamuraSho Tamuraボア×ストローク=83.0×99.0mmのロング・ストロークで、排気量は2142cc。これにツイン・スクロール・ターボを装着し、2.0リッターのガソリン・ターボよりちょっぴり強力な最高出力210ps/3500rpmとはるかに分厚い最大トルク470Nm /1750rpmを発揮する。
ステルヴィオのスプリントは車重が1820kgと、試乗する直前に乗っていた「ジュリア」のスプリントより230kgも重い。ボディは背が高くて大きいし、4WDだし、重いのは当然だ。ところが、その重さがまったく気にならず、気になるどころか、ディーゼルのトルクの太さにむしろ感激した。
Sho TamuraSho TamuraSho Tamuraそれと、乗り心地が、ジュリア・スプリントから乗り換えると、さらにダンパーが締まっている感がある。重心が高いマイナスを補うためだろう。でも、記憶のなかの2.2ディーゼル・ターボ・スポーツパッケージより断然イイ。
筆者がこの2月に試乗したステルヴィオ・ディーゼルのスポーツパッケージは走り屋向けで、19インチの235/55を履いていた。対してスプリントは、ステルヴィオの2020年モデルのなかで、ゆいいつ18インチの235/60を標準としていて、やっぱりタイヤの扁平率が上がってタイヤのボリウムが増えると乗り心地への影響は大なのである。路面からの突き上げは小さいし、たとえ突き上げがあっても、丸みがある。ジュリア同様、ランフラット・タイヤをよく履きこなしている。あるいは、最近のランフラットは乗り心地の問題をほぼ解決している。
Sho TamuraSho Tamura足まわりの改良について正式な発表はないけれど、山道でのハンドリングも、人馬一体感が高まっているように思った。数ある同クラスのSUVのなかでも1、2を争うのではあるまいか。重心の高いSUVなのに、ほとんど姿勢が乱れることなくコーナリングして、フロントのイン側のタイヤがコーナーのインにピタッと張り付くと、そこを中心にして旋回していくような感覚がある。
理屈で考えると、この感覚はおかしいのですけれど、そう感じたのは本当なんである。フツウの乗用車よりもやや高い着座位置にいるドライバーの視界に、フロント・スクリーン、もしくはサイド・スクリーン越しに入ってきては流れ去るコーナーのイン側の景色が、世界の中心でステルヴィオを曲がらせる感覚を私にもたらした。
イタリア北部のアルプス山中にある、延々と続くつづら折り、ステルヴィオ峠、すごかったなぁ~。また行きたいなぁ……。そのパッソ・デッロ・ステルヴィオの名に恥じない、ステルヴィオのハンドリングに磨きがかかっている。少なくとも、2月に試乗した19インチのスポーツパッケージより、たのしいなぁ、と筆者は思った。
Sho TamuraSho Tamuraプラス1万円でSUVが買える!?
ボディと内装の色のバリエーションはジュリアとおなじで、試乗車のようにブラックのボディ色はレッドの本革シートとの組み合わせとなる。実にこの赤が華やかでイイ。シートの座面が硬く、表皮がパンとしているところもイイ。
Sho TamuraSho Tamuraそしてなにより、ステルヴィオのスプリントは待望の純正ナビゲーションとレベル2の自動運転システムを標準で装備している。これらのハイテクは、スマホ同様、現代人にとってなくはならないものである。少なくとも、あると便利である。
これらを含んで、ステルヴィオ2.2ディーゼル・ターボQ4スプリントの車両価格は589万円という大バーゲン価格である。おなじアルファ・ロメオ内で比較しても、2.2ディーゼル・ターボを搭載するジュリアは588万円。つまり、1万円プラスするだけで、ほぼ同内容のステルヴィオ・スプリントが手に入る。1万円の上乗せで後輪駆動のセダンが4輪駆動のSUVに化けるのだとしたら、欣喜雀躍、どんとこい超常現象! いうものではあるまいか。
Sho TamuraSho Tamura同セグメントのライバルたちと比較しても、たとえば、同じ2リッター・クラスのディーゼルを搭載するメルセデス・ベンツGLC220d 4MATICは700万円、BMW X3 xDrive20dは742万円、アウディQ5 40TDIが649万円で、ジャガーF-PACE 20dが678万円。600万円を切るステルヴィオ・スプリントがいか戦略価格であることか。
Sho TamuraSho TamuraSho TamuraSho TamuraSho TamuraSho TamuraSho Tamura注目したいスポーツパッケージ
2020年モデルでは、スプリント・プラスおよそ100万円で、ステルヴィオのガソリンとディーゼルに設けられたスポーツパッケージにも注目しておきたい。
こちらは、たとえばブレーキ・キャリパーがレッド仕上げに、インテリアの樹脂パネルがアルミニウム製に、あるいはナチュラルレザーシートがスポーツレザーシートに変わったりするなど、細かい装備の変更のほか、見た目と機能にも影響するタイヤ&ホイールに20インチの255/45を採用している。
Sho Tamura JRPA-160119インチのスポーツパッケージで、あんなに硬かったのに、20インチ⁉︎ と筆者は案ずる。でも、これに対応すべく、アルファ・ロメオはコニのFSDショックアブソーバーというのを新たに採用している。これは電子制御ではなくて、FSDバルブという機械仕掛けによって減衰力を自動的に調整するダンパーだそうで、ちょっと気になる新装備である。
ステルヴィオ・スプリントに乗って、はるかイタリアのステルヴィオ峠を思い、そして、いつの日かステルヴィオ峠に再び行ってみよう。と誓った筆者だった。
Sho Tamura JRPA-1601文・今尾直樹 写真・田村翔
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