先月に続き、2022年にNASCAR最高峰のカップ・シリーズ導入が予定される新規定車両“Next-Gen”モデルのテストが、引き続きアメリカ・ノースカロライナ州のシャーロット・モーター・スピードウェイで11月17~18日の2日間にわたって実施された。
オーバルではフォード、シボレー、そしてトヨタの各陣営が精力的に走行を重ねるなか、シリーズのレーシング・イノベーション担当シニア・バイス・プレジデントであるジョン・プロブストは「いくつか発生した新車にありがちな初期のマイナートラブルにも対処できた」としつつ、新規定車両に関して「ドライブが簡単になるマシンを我々は望んでいない」と強調した。
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また、過去3シーズンを名門チップ・ガナッシ・レーシング(CGR)の1号車シボレーで戦ったカート・ブッシュも、移籍先の23XIレーシングに合流。新型Next-Gen車両の45号車トヨタ・カムリのステアリングを握ってテストプログラムを消化し、従来より大きな調整幅を持つNext-Gen車両に対し「あらゆる要素で遊べる、新しくて、楽しくて、カッコいいオモチャ」だと語り、チームとの初仕事を満喫した。
先月にもシャーロットのロードコースでテストを重ねた2022年型モデル群だが、その2日間のテスト中には各チームから「ステアリングラックに問題が発生した」との報告が寄せられていた。
そこでシリーズ技術部門は各エンジニアからのヒアリングをもとに、振動の原因と解決策を見つけるため、サプライヤーに対しスポーツカー(GT3やその他カテゴリーなど)でのリソースを活用するよう要請。これにより、パワステオイルがリザーバータンクに戻るライン上に小さなパーツを追加し、オーバルでの機能確認で問題が解決し「ストレスが軽減された」ことが報告された。
「幸いにして、今回はステアリングの問題に関する報告はなかったよ」と安堵の表情を見せた前出のプロブスト。「走行に際しては『硬すぎる』だの『柔らかすぎる』だのバランスの面でいくつか声が聞こえてきたが、それは各チームがトーションバーを調整すれば済む範疇の話だ。オーバルトラックでもかつて我々が慣れ親しんだものとはまるで違うクルマにはなっているが、ロードコースで出た問題は修正されていることを確認できたよ」
一方、もうひとつの重要な課題は、このNext-Genモデルがトラックを走り出してから議論が継続されている“コクピット内の熱問題”で、現在はNASCARでもさまざまな再設計に取り組み、空気の流れを改善することを目指している。
その最大の問題は「排気が吸い戻される」ことで、エンジンの熱が直接ドライバーに向かうのを避けるべく、ウインドウネット脇には工業用プラスチックソリッドシート“Lexan(レキサン)”を使用した小型のピースを追加してウインドウから空気の流れを逸らすとともに、アンダートレイ部分にも変更を加え、一部の車両ではショート・エキゾースト仕様もトライしている。
さらにリヤウインドウにもアウトレットを兼ねたスロットを追加したが、ただしこの対策にはNASCAR側が意図しない効果がもたらされることが、木曜のテスト中にも判明した。
「もちろん、このスロットはマシンにより多くのドラッグをもたらす。そこでさらに短いリヤスポイラーを製作した。急遽の対応で問題が発生する可能性があることは理解していたが、初日と2日目で変化の大きさを評価したかったんだ。現在、そのデータを解析しているところだ」と続けたプロブスト。
■クラッシュシーンが増加する可能性
今回のテストでは、各陣営とも“インターミディエイト・パッケージ”となる550PS仕様のエンジン出力で走行したが、8インチから7インチに縮小されたスポイラーの効果で30馬力程度のゲインが見込まれるという。
その影響もあってか、初日の水曜からスピンやクラッシュを経験するドライバーも数多く出ており、オースティン・ディロンはセッション開始30分のターン2でリチャード・チルドレス・レーシングのシボレーを大破。デニー・ハムリンやカイル・ラーソンもあわやの場面に遭遇した。
こうした状況に対し、ヘンドリック・モータースポーツのアレックス・ボウマンは、旧型モデルに比べて「このNext-Genカーのドライブはずっと難しい」とも語っている。
「もちろん、ドライバーはマシンをわずかにスライドさせることはできるが、スピンアウトする手前の領域が以前に比べてはるかに狭いと感じるんだ。もしかしたらファンは、来季より多くのクラッシュシーンを目撃することになるかもね」
これに対しプロブストも「我々はつねに、世界最高のドライバーたちを走らせたいと以前から明言してきた」とし、規定変更が一定の効果を挙げていると認めた。
「車両規定に加えられた多くの変更を見ると、以前のような“サイドフォース”はなくなり、ある種の寛容さは失われたかもしれない。今回のスピンがすべてその影響とは言わないが、確かに新型マシンは少しエッジが効いているかもしれないね」とプロブスト。
「でも各チームがセットアップのダイヤルを調整し、そこは時間とともに改善していくだろう。どのようにグリップを失い、どのように回復するか、そしてどうしたら速くドライブできるのか。どこまでスライドを許容するかを把握し、慣れる必要もあるだろう。NASCARは簡単に運転できるクルマを望んではいないからね」
一方、クルーチーフのビリー・スコットと再会し、旧知のエンジニアやメカニックらの多くと新世代NASCARのスタートを切ったカート・ブッシュは、新たな環境に加えてNext-Genモデルの個性を学ぶという難しいタスクに挑んでいる。
「消化すべきことが山積みだったが、これまでのところクルマに対する小さな発見を重ね、ある程度のスピードを見い出すことが出来たと思う」と語ったカート・ブッシュ。
「その後、タイヤの摩耗についてもう少し理解するために、10周のショートランを数回ほど繰り返した。これで小さなボックスをチェックし、今後はより大きなプログラムに向けて取り組めるはずさ。トランスアクスルで従来とは異なるし、車の後部にある多くの要素を変更することも出来る。あらゆる種類のセットが可能な、そんなパーツが盛りだくさんの……最高のオモチャだね!」
今回のシャーロットでのテストに続き、一行は12月14~15日にはフェニックスに移動し、年明けの1月11~12日はデイトナでのテストを実施。その後もラスベガス、マーティンズビル、ホームステッドでの走行が予定されている。
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