RS eトロンGTの生産開始
アウディの電気自動車のアウディRS eトロンGTの生産が、ドイツ・ネッカーズルムのベーリンガーホフ工場で始まった。
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この工場で採用される製造プロセスは、クルマと同様に非常にユニークであり、アウディの市販車では異例の短期間で生産準備を整えた。
プラントマネージャーであるヘルムート・ステットナーは、「電気駆動方式とスポーツ性を兼ね備えたモデルであるRS eトロンGTは、ネッカーズルムのベーリンガーホフのスポーツカー生産工場と完璧にマッチしていた。新型コロナウイルス感染症のパンデミック下においても予定どおりに生産が開始できたのは、これまでに蓄積してきた数多くの能力と、素晴らしいチームワークの結果である」と述べた。
ネッカーズルムの拠点では、既にプラグインハイブリッド車の生産に焦点を当てており、A6、A7、A8のプラグイン、およびマイルドハイブリッド・バージョンにより、アウディの生産拠点の中でも電動化モデルの割合がもっとも高くなっている。
さらに、ヘルムート・ステットナーは、「RS eトロンGTは、ドイツ国内で初めて生産されるアウディの電気自動車であり、これによって私たちは、未来に向けて次の大きな一歩を踏み出す」と付け加えた。
カーボンニュートラルな生産方法
「持続可能」なのは、このグランツーリスモの駆動コンセプトだけではない。
ベーリンガーホフの生産プロセス全体が、完全にカーボンニュートラルなものになっている。2020年初めに、ネッカーズルムの生産拠点全体が使用する電力は、すべてグリーン電力に切り替えられた。
バイオガスを燃料とする熱電併給プラントは、ベーリンガーホフ工場が車両の生産において必要とする熱を供給する。再生可能なエネルギー源の使用上、避けられないCO2の排出は、認証を受けた気候保護プロジェクトのカーボンクレジットを使用して相殺される。
アウディAG生産およびロジスティクス担当取締役のペーター・ケスラーは、「ベーリンガーホフ工場は、ドイツ国内のアウディ生産拠点として初めて、製造工程の完全なカーボンニュートラル化に成功した。これはネッカーズルム拠点にとって重要なマイルストーンであり、2025年までに全世界においてカーボンニュートラル化を達成するという道のりにおける重要なステップである」と語った。
クローズド・ループによる環境保護
生産拠点において、重要な資源は節約され、原材料も現場でリサイクルされる。その最も良い例が、「アルミニウム・クローズド・ループ」である。これは、ネッカーズルムの拠点においてのRS eトロンGTのサイドウォールフレーム製造の際にプレスショップから出るアルミニウムシートの端材を再利用する、クローズド・リサイクルチェーン。
RS eトロンGTのサイドウォールフレームは、絞り加工の最高点と最低点の差が35cmにも上り、それによってホイールアーチのショルダー部分に、クアトロ・ブリスターと呼ばれる特徴的で力強い造形が生み出される。
この難易度の高いプロセスを実現するため、最先端のアルミニウム加工技術が採用されているが、アルミニウム・クローズド・ループにより、切断後のアルミニウムシート端材はサプライヤーに戻され、リサイクルされてアウディが再使用する。これにより、ネッカーズルムの拠点において年間数千トンのCO2排出量が削減されている。
環境に配慮したプロセスは、アルミニウムだけに留まらない。プラスチックのリサイクルでは、「古いものを新しいものに変える」という考え方を採用する。現在進行中のパイロットプロジェクトでは、A6およびA7の組立作業に由来するプラスチック端材は仕分けおよび裁断されて、特殊な繊維に生まれ変わり、これらのフィラメントは、生産プロセスの3Dプリンターで使用される。
そして、ベーリンガーホフ工場における社内3Dプリンティングチームは、各従業員の要件に合わせてカスタマイズされた多様な組立作業補助具の製造を担当する。このようなリサイクル・プロジェクトの目的は、「完璧なポリマークローズドループを創出すること」という。
実車プロトタイプなしでの開発
原材料を節約するためのアプローチは、クローズド・ループだけではない。
RS eトロンGTは、アウディでは初めて、物理的なプロトタイプを製作することなく製造工程が計画された。
現在、生産現場で実際に使用されているすべて組立手順は、社内で開発したソフトウェアおよびVRアプリを活用して仮想的にテストを受けたもの。繊細なパーツの輸送に使用する専用コンテナの一部も、新しい仮想メソッドを使用してプロトタイプなしで製作された。
これにより、金属だけでなく、部品を保護するためのパッケージも節約できる。キーワードは、「廃棄物の削減と紙の節約」という。
ボディショップと組立ラインでは、ほとんど紙を使用することはない。従来の書面による記録の必要性をなくしたメンテナンスアプリなどの新しいプロジェクトも、紙の節約に貢献している。
このほか、電子ラベルの活用などにより、アウディのプロジェクトチームは、サプライヤーと共同で、梱包材の体系的なスリム化と廃棄物の削減につながるソリューション開発に取り組んでいる。
スマートファクトリーと熟練工
2014年以来、R8はベーリンガーホフ工場で組み立てられている。
ネッカーズルム拠点の中にあるベーリンガーホフ工場は、熟練工がスポーツカーを手作業で生産する場所であり、RS eトロンGTの生産に向け、2019年に拡張とアップグレードを受け、設備も一新された。
アウディのパワフルで最速の2つの量産アウディモデルが、この工場で生産されている。
生産責任者のウルフガング・シャンツは、「技術的にまったく異なる2つのモデルが、1つの組立ラインで生産されるのはグループ内でも非常に珍しい。RS eトロンGTの生産を引き受けることにより、ベーリンガーホフ工場は、高い柔軟性を備えるハイテク生産施設へと変容したが、熟練工による生産という特徴はそのまま保たれている」という。
RS eトロンGTは2021年春から受注を開始される。
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