SUVブームや高級軽自動車の先駆けとなったモデルも!
平成の元号が間もなく終わろうとしている。31年間続いた平成という時代はバブル景気の絶頂期と崩壊、阪神大震災や東日本大震災といった大規模災害、長かった不景気など、激動の時代であった。激動だったのは日本車の大躍進や次々と変わったユーザーの志向の変化など、時代を映す鏡とも言われるクルマも同じだった。そこで平成の終わりを期に、平成を駆け抜けたインパクトあるクルマを良かった方、悪かった方含めて振り返ってみたいと思う。今回は平成6年編をお届けしたい。
本格的な不景気を予感しつつも名&迷車は生まれる! 平成5年誕生のインパクト大な国産車4選
■平成6年(1994年)ってどんな年?
この頃から円高による輸入品のプライスダウン(この年にレンジローバーが約900万円から約600万円へ約300万円値下げされた)も関係した値下げ競争が始まり、価格破壊という言葉も生まれた。
スポーツ界ではプロ野球セリーグでは当時の年間130試合で129試合目に巨人と中日が同率首位で、最終戦の130試合目でリーグ優勝が決まる10・8決戦と呼ばれた試合で巨人がリーグ優勝。競馬界ではナリタブライアンが10年振りとなる牡馬三冠馬(皐月賞、日本ダービー、菊花賞)となった。
モータースポーツ界ではF1第3戦サンマリノGPで予選2日目に日本での活動も長かったローランド・ラッツェンバーガー選手、決勝では日本のF1ファンの間ではホンダエンジンとの関係を含めカリスマ的な存在だったアイルトン・セナ選手のふたりが事故死するという悲しい出来事もあった。
またこの年は10月4日に北海道東方沖地震、12月28日に三陸はるか沖地震という大きな地震があり、後になると翌1995年1月17日の阪神淡路大震災の予兆だったようにも感じる。
娯楽ではプレイステーションやセガサターンといった新しいゲーム機のプラットホームの登場し、歌謡界ではTMNのプロジェクト終了により音楽プロデューサーとなった小室哲哉氏率いる小室ファミリーやMr.Childrenといった新しい力の台頭が目立った。
1)トヨタRAV4(初代モデル)
当時はクロカン4WDと呼ばれることが多かった現在のSUVは、90年代初めから日本車では三菱パジェロを筆頭に乗用車化、高級化が進んでいた。しかしラダーフレーム、本格的な4WDシステムを持つクロカン4WDは悪路走破性こそ素晴らしい代わりに、舗装路を走ることがほとんどの日常ユースでは重量増による燃費の悪さ、重心の高さによる走行安定性の悪化というデメリットも目立った。
そんな時代に登場したRAV4は乗用車をベースにし、全体的に乗用車的な仕上がりながら雪道や悪路の走破性は十二分というスタイルを含めライトなSUVであった。この乗用車ベースのSUVというコンセプトは世界中で支持され、この後SUVは乗用車をベースとするのが主流となった。
同時にRAV4は世界的に見ればトヨタにおける基幹車種の1台に成長した。日本ではしばらくRAV4は販売されなかったが、RAV4の登場から25年となる節目となる今年、もう間もなく新型が日本でも発売される。
2)ホンダ・オデッセイ(初代モデル)
当時ホンダはバブル崩壊や今でいうミニバンやSUVといったRVの拡充の遅れによる販売不振で、対照的に好調でメインバンクが同じだった三菱自動車との合併が噂されるほどの不振に陥っていた。
そんなころにアコードをベースにしたミニバンとして登場した初代オデッセイは、スライドドアではなくヒンジドアを使った点、低いフロアによる高い室内高、乗用車的な乗り味、価格の安さなどが支持された。今になるとそれほどできのいいクルマではなかったものの大ヒット車となり、ホンダのピンチを救った救世主となった。またホンダは初代オデッセイからクリエイティブムーバーと呼ぶRV戦略を開始し、ラインアップにRVを拡充していく。
3)マツダ・カペラ(6代目モデル)
この年のマツダは博打のような5チャンネル制の失敗による経営危機、販売不振に陥っていた。そこでやや高級路線を狙ったあのクロノス兄弟とは対照的な「価格の安いミドルセダンが必要」と考えたらしく、登場したのがクロノス兄弟への移行で一度車名を消しながら車名が復活したカペラであった。当時の日本車はバブル崩壊によるコストダウンでインテリアの質感に代表される安っぽさを感じるクルマがあったのだが、5ナンバーサイズとなったカペラはその中でも群を抜いてひどい「安いけど、できも悪い」というクルマで、悪い意味で記憶に残った。
コンパクトボディにV6エンジン搭載のスポーツモデルも登場
4)三菱FTO
当時のセリカ、シルビア、プレリュードに対抗するFFのミドルサイズのスペシャリティカーで、気持ちよく回る2リッター V6エンジンの搭載やコーナリングスピードの速さにより、短い期間ながら日本車FF最速となった。その点以上に印象的だったのがINVECS-IIと呼ばれたワインディングロードなどにも賢く対応するDレンジとポルシェのティプトロニックのような独立したMTモードを持つATで、この点が高く評価されFTOはこの年の日本カーオブザイヤーを受賞した。
5)三菱・パジェロミニ(初代モデル)
当時のパジェロをそのまま小さくしたスタイルを持つ、ジムニーよりはシティユースを重視した軽のクロカン4WD。スタイルやパジェロを引き継いだイメージの良さで大人気となっただけでなく、ターボ車は4気筒の5バルブDOHCを搭載したこともあり軽自動車ながら200万円近いグレードもあった。その高価なグレードがよく売れ、軽自動車の高級化の先駆けとなったことも印象的だった。
6)スバル・インプレッサWRX タイプRA STi
1992年に登場したスバル・インプレッサは、モータースポーツ参戦も視野に入れたスポーツモデルのWRXのスポーツ性をさらに向上させたSTiを1994年1月に追加。またこの年の10月に加わったWRX タイプRA STiはその名の通りSTiのラリーやジムカーナ参戦ベースとなる快適装備のないスパルタンな仕様で、特に注目したいのは現代のWRX STIまで続くドライバーズコントロールセンターデフ(DCCD)を初めて搭載した点だ。 (上記写真はWRX STi)
重心の低い水平対向エンジンを積むインプレッサを含むスバル車は4WDながら回頭性の高さが美点だったが、DCCDの搭載によりダイヤルで前後駆動力配分をドライバーの任意で直結4WD状態からFR車に近い35:45のフリーまで変更できるようになり、競技中のコース状況などに幅広く対応する4WDに進化。さらにDCCDは競技中にスピンターンなどをするためにパーキングブレーキを引いた際にはセンターデフがフリーとなる機能も備えており、前後輪が干渉せずに綺麗なターンを決められることも魅力だった。
またDCCDは2代目インプレッサの中盤以降オートモードが加わるなどの進化を遂げると同時に、宿命のライバルである三菱ランサーエボリューションに対してもランエボVIIからDCCDに近い機能を持つACDが備わったことでも影響を与えた。
このほかにもパジェロをベースにしたミニバンの三菱デリカスペースギアや、今でいう乗用車よりのSUVとなるクロスオーバーの先駆けとなる日産ラシーンが登場するなど、振り返ると1994年はRVの台頭が目立った年だった。
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