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【アウディ・クワトロ40周年】選りすぐりの5台を乗り比べ 歴代最高のクワトロとは? 前編

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【アウディ・クワトロ40周年】選りすぐりの5台を乗り比べ 歴代最高のクワトロとは? 前編

新たな解決策

パイオニアだと見做されてきたモデルが、実際にはそうではなかったという例など枚挙に暇がない。

【画像】歴代最高のクワトロとは? 全10枚

史上初の高級SUVの座はレンジローバーのものではなく、ルノー・エスパスもMPVの始祖ではなかった。

ホットハッチというジャンルを創り出したのはフォルクスワーゲン・ゴルフGTIではなく、史上初めて公道に舞い降りたターボモデルはサーブ99でもポルシェ911でも、BMW 2002でもない。

そして、アウディ・クワトロも史上初のハイパフォーマンス四輪駆動モデルではなかった。

1968年から1971年にかけて、ジェンセンFFが生産されていたからだ。

だが、先にご紹介したレンジローバーやゴルフGTIなどと同じく、アウディ・クワトロがハイパフォーマンス四輪駆動モデルという新たなテクノロジーの完成度を高め、ひとびとに知らしめた存在であることに間違いはない。

クワトロ以前の四輪駆動モデルでは、すべてのタイヤに駆動力を伝達するため、重く嵩張るトランスファーボックスが必要なことが問題だった。

こうした方法は実用性に劣るとともに高価でもあり、だからこそジェンセンFFの生産台数はわずか320台に留まることとなったのだろう。

そして、この問題に新たな解決策を発見したのがアウディのヨルグ・ベンジンガーだった。

彼は縦置きギアボックスの背後に設置したセンターディフェレンシャルを中空のシャフトで駆動すれば、このシャフトのなかを通した別のシャフトでフロントホイールへと駆動力を伝達出来ると気が付いたのだ。

その結果、トランスファーボックスが不要となり、史上初の現代的な四輪駆動システムの発明へと繋がっている。

駆動方式以上の意味

1970年代中盤にはすでにベンジンガーたちは開発作業に着手していたものの、彼らの努力がアウディ・クワトロと言う名のボクシーなクーペに結実するには1980年まで待つ必要があった。

以降アウディはつねに四輪駆動モデルをラインナップし続けており、いまや世界中の主要な自動車メーカーからもこうしたモデルが登場している。

だが、アウディにとって四輪駆動システムというものは、単なる駆動方式以上の大きな意味を持つこととなった。

1台のクルマとして始まったクワトロという名だが、すぐに自動車史に残る存在となり、BMWのMやメルセデス・ベンツのAMG同様の輝きを放つ、アウディのサブブランドへと発展している。

では、そんなクワトロのなかでもっとも偉大な1台とはどのモデルだろう?

候補は多いが今回ノミネート出来るのは5台だけであり、初代と最新のクワトロを外すわけにはいかないなか、選考は決して簡単ではなかった。

今回選ばれた5台に納得できないというひとびともいるに違いない。

だが、今回選んだのは初代クワトロの最終モデルと、いまやアウディを象徴する存在である狂気のエステートモデルの始祖となるRS2アバント、初代クワトロ以上にその革新的なデザインがスポーティーな四輪駆動クーペを身近な存在にした初代TT、そして初代R8と最新のRS6アバントだ。

確かにV10モデルやRS4、スポーツクワトロにSQ2も含まれていないが、SQ2が選ばれなかったことで落胆しているひとびとはそれほど多くはないだろう。

記憶に残る速さ

最初にステアリングを握るのはもちろん初代クワトロだ。

後期の20バルブモデルが新車だった当時テストしたことがあるが、なによりも記憶に残っているのはその驚異的な速さだった。

デビューからすでに10年が経っていたにもかかわらず古さを感じなかった記憶があるが、さすがにいまではその時代を感じないわけにはいかない。

現代の基準から見れば奇妙なドライビングポジションとさらに奇妙なギアレシオ、まるでゲームセンターにあるゲーム機を彷彿とさせるダッシュボードデザイン、さらには大量に使用されているハードプラスティックが時の流れを感じさせる。

ギアボックスはスムースさに欠け、ブーストが掛かるまでの間、低速ではまったく活気のないこのエンジンに対しては、時代が違うとは言え、思わず失望という言葉さえ出て来るかもしれない。

だが、回転上昇に伴い「乱れ打ち」という以外に表現のしようがないサウンドが響き渡ると、数十年前のものとは思えないこのエンジンの素晴らしさに改めて気付かされることになる。

いまも思わず夢中になるほどの速さを感じさせ、空力を無視したようなボディデザインのせいで頭打ちにはなるが、193km/hまでは易々と加速してみせるのだ。

そしてこのクルマのドライビングの楽しさにも変わりはない。

初代クワトロの新車当時であれば四輪駆動モデルならではと言えたグリップもいまでは控え目というべきレベルに留まっており、さらにはアンダーステアも明らかだが、ステアリングフィールそのものは素晴らしく、シャシーバランスも記憶にある以上の見事さだ。

ポルシェによるエンジニアリング

一方、RS2アバントに対してこうした評価を与えることは出来ない。

このモデルに続く数多くのRSバッジを纏った狂気のエステートモデル同様、RS2の真骨頂も直線での速さにある。

そして、初代クワトロ引退後わずか3年で登場したというのに、RS2ははるかに現代的なフィールを備えており、この2台はまったく別の時代のモデルだと感じさせる。

まさにRS2は現代のモデルだと言えるが、このクルマの高い組立品質と使われているマテリアルの見事さは、ポルシェの関与がその理由かも知れない。

当時苦境にあったポルシェは本業以外でも収益を上げるべく、あのメルセデス・ベンツ500Eに続いてこのRS2のようなモデルのエンジニアリングも請け負っていたのだ。

そして、このポルシェによるエンジニアリングが、基本的には同じエンジンでありながら、初代クワトロの220psからRS2では315psへとパワーを引き上げることに成功した理由だろう。

RS2が特別なモデルであることはいまも変わらない。

スタイリングは素晴らしく、たっぷりとしたレカロ製ドライビングシートに腰を下ろして、ホワイトダイヤルに目をやれば、このクルマに対する期待が高まって来る。

26年前にリッター当り142psを達成していたこのエンジンではターボラグが明らかなものの、一旦3500rpmを越えれば、そのエンジンサウンドとパワーバンドの広さには思わず驚かされることになるだろう。

そして、RS2は初代クワトロが193km/hに到達した地点で225km/hに達してみせる。

惜しまれるコーナリング性能

だからこそコーナリング性能だけが惜しまれるのだ。

なんとかコーナリングラインを維持しようとはするものの、RS2が断固としたアンダーステア特性を備えたアウディ製ハイパフォーマンスモデルの始祖であり、その伝統は簡単には覆らないということを思い知らされる。

だが、TTへと乗り換えてみれば別の楽しみを味わうことが出来る。

個人的にはつねにデザインよりも中身を優先してきたが、それでもTTに乗り込んでみれば、思わず走り出さずにはいられないだろう。

シートに腰を下ろしてキャビンを見渡せば、すべてが特別で素晴らしい感触を備えていることに気が付く。

いまならこのクルマがあれほどの人気を博した理由を十分理解することが出来る。

見た目も感触もそのほとんどを他のモデルと共有する派生車種だなどとはほとんど感じさせず、完全に専用設計されたモデルのようだ。

そして組立品質も素晴らしく、この個体はすでに21万6000kmを走破しているものの、キャビンには一切の緩みなど感じられない。

新車当時このクルマを冷笑していたようなひとびとは、TTへの評価を改めるべきかも知れない。

もちろん、このクルマはポルシェ・ケイマンではないが、225psを発揮する20バルブエンジンは活気に溢れ、その6速ギアボックスは素晴らしく、ハンドリングは記憶にある以上の落ち着きを見せるとともに、ノーズヘビーな様子など微塵も感じさせない。

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