基本的な走行性能の進化も見逃せない
昨年の東京モーターショーでプロトタイプとして披露目された新型レヴォーグがいよいよ登場する。今回は、新型レヴォーグのデビューに先立って、プロトタイプの試乗会が行われたので報告しよう。
初代(現行型)レヴォーグの登場は2013年の東京モーターショーだった。大柄になった5代目レガシイツーリングワゴンに代わる日本向けのジャストサイズなツーリングワゴンとして登場し、その後待っていたように翌2014年、6代目となったレガシイがデビューしている。レガシィはラインアップから日本向けツーリングワゴンが消え、セダンのB4とSUVのアウトバックの構成となった。これによって、名実ともにスバルに継承されてきたグランドツーリングワゴンの血統はレヴォーグへとバトンタッチされたのだった。
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そんなレヴォーグも今年で7年。昨年(2019年)のモーターショーで次期レボークのプロトタイプが発表され、いよいよモデルチェンジの時期が迫ってきた。
新型レヴォーグの見どころは、SGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)によるシャシー性能の進化と、新エンジンのパフォーマンス。そしてもう一つ注目したいのがアイサイトの進化だ。今回はプロトタイプということで、主に新型アイサイト=アイサイトXにフォーカスした試乗会だった。
アイサイトX最大の特長は、準天頂衛星とGPS情報、それに3D高精度地図ユニットを利用して自動車専用道路での先進運転支援が可能となったこと。
具体的には、6つの機能が搭載されている。➀先のカーブの大きさから適切な速度まで自動的に減速してくれる「カーブ前速度制御」。(2)料金所ゲート手前で自動的に減速する「料金所前速度制御」。➂ハンドルを添えていると、レーンチェンジしてくれる「アクティブレーンチェンジアシスト」。(4)高速道路での渋滞時(50km/h以下)ハンドルから手を放しても走行可能な「渋滞時ハンズオフアシスト」。(5)渋滞でクルマが停車し1分以上時間が経過しても前走車に追従して自動的に再発進可能な「渋滞時発進アシスト」。(6)ドライバー異常時対応システムドライバーが心神喪失状態になった時に自動停止してくれる「ドライバー異常時対応システム」がそれ。
今回の試乗会ではそれぞれの機能に対して体験することができた。その中でやはりもっとも気になるのは(4)のハンズオフアシストではないだろうか。すでに高速道路でのハンズオフアシスト機能を可能にしているメーカーもあるが、スバルの場合は渋滞時のみの設定となる。スバルでは、あくまでも渋滞時の疲労軽減を考えているのだという。ハンズオフでの高速走行はもうしばらく先になりそうだ。
50km/h以下で前走車追尾が前提となるが、作動時の安定性は優秀。ドライバーの瞳の動きをモニタリングしていて、ドライバーが前方を見てれば、今回試乗した限りではハンズオフが勝手に切れてしまうということはなかった。とても完成度が高く、渋滞中の疲労軽減は大幅に軽減できるだろうと感じた。
ハンズオフ操作中に居眠りした場合も、すぐにアラームが鳴り、しばらくしてクラクションが鳴り出し、最終的には直線で自動停止する「ドライバー異常自対応システム」が機能する(よほどのことがない限りアラーム化クラクションで目が覚めるくらい音量が大きい)。
またハンズオフではないが、高速道路でのレーンキープアシスト機能も優秀。「カーブ前速度制御」も機能してくれるので、山岳区間などでは、地図データ等から車速を落としてくれるので、カーブで横Gに対応できずレーンキープアシストが解除されてしまうといったケースはかなり少なくなりそう。実際の高速道路で試していないので断言できないがほぼなくなるのではないだろうか。そう思わせるほど優秀だった。
試乗する限りアイサイトXは、性能として進化しているのはもちろんだが、先進機能の先進性を売りにするのではなく、現実世界のドライブアシストとして実用性を重視しているのを強く感じた。同時に、むやみに自動運転に向かうのではなく、ドライバーが運転を楽しむという点に軸足を置いて、いま実現可能なドライブアシストを駆使してドライバーの疲労を軽減するという、いまのスバルの立ち位置をはっきりと示しているとも感じた。
補足しておくと、アイサイトX搭載に当たって、新たにⒶ新型ステレオカメラ。Ⓑ前側方レーダー。Ⓒ電動ブレーキブースターが採用されている。またこの装備搭載により右折時の対向車、右左折時の歩行者、側方からの自転車に対して衝突回避機能が追加。さらにブレーキ制御だけで回避困難な時にハンドル操作をアシストする「プリクラッシュステアリングアシスト」や、斜め後方の死角にあるクルマを見落とした時にレーンチェンジの注意をステアリングアシストで促す「エマージェンシーレーンキープアシスト」側方からのクルマの接近を検知してブレーキ制御する「前側方プリクラッシュブレーキ」といった機能も盛り込まれている。
一方で新型レヴォーグプロトタイプ自体の性能について触れておこう。
ボディサイズは全長4755mm×全幅1795mm×全高1500mm、ホイールベース2670mmで、現行型と比べると全長が65mm、全幅15mm、ホイールベースが20mm大きくなっている。
インテリアも特徴的で、アイサイト搭載グレードはメーターが12.3インチフル液晶モニターとなり、ダッシュボード中央に11.6インチセンターインフォメーションディスプレイを採用。メーターにはナビ画面が表示できるほか、センターディスプレイには大型ナビ画面はもちろんのこと、スマホ末端機能を備えるカープレイや空調などのコントロールがタッチ操作できるようになっている。
エンジンは、現行型が1.6Lと2Lの構成なのに対し、プロトタイプは1.8Lのみ。水平対向4気筒直噴ターボで最高出力177ps、最大トルクは300Nmを発揮する。これに新型リニアトロニック(CVT)が組み合わされる。
プラットフォームはSGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)を採用するが、それだけで良しとせずに進化させているのがいかにもスバルらしいところ。古インナーフレーム構造にするとともに、構造用接着剤の拡大採用や、樹脂リンフォースの採用によってボディ剛性を大幅アップ。現行型に比べるとねじり剛性で+44%のアップを果たしているという。
また各部のチューニングも怠りない。2ピニオン電動パワステの採用やサスペンションのロングストローク化、フロントサスペンションのキングピン軸のマスオフセット化などが行われ、空力面でもマッドガードスリットやエアアウトレットを採用することで空気抵抗の低減や高速安定性のレベルアップが図られている。
試乗して感心したのは、4輪が路面にビタッ!と張り付いているような接地感だ。ドイツ車に見られるような明瞭な接地感とそこからくる安心感がある。ボディ剛性もかなり高そうな感触がある。インナーフレーム構造や構造用接着剤の拡大採用、樹脂リンフォースの採用などが効いているのだろう。
この硬いボディだから感じられるのか、サスペンションがよく動く。サスペンションの動きをバンプラバーで止めて動きを抑制するのではなく、必要な分ストロークさせている(といってもロールがことさら大きいわけではないが)。自然なロール感があるのだ。
リヤサス(タイヤ)の応答がよく、ハンドルを切り出すとボディごと曲がり出すようなスッキリした身のこなしの良さもある。
エンジンは、現行1.6Lと比べ、明らかに低回転域のトルクが厚く、発進が力強く滑らか。高回転域の伸び感もあって、全体に骨太な印象がある。過剰な速さや刺激的な加速性能はないが、必要十分+αの余裕があった。CVTとの相性も良く、全開加速の高回転域以外ではほとんどCVTの滑り感が抑えられており、素直にパワー(駆動トルク)が路面に伝わってくれる感じだ。
STI Sportsには、スバル初のドライブセレクトモード付き電子制御サスペンションが装備したドライブモードセレクトが装備される。トリプルチューブ構造を持ったザックス製可変減衰力ダンパーによる、減衰力制御のほか、SIドライブ、パワステ、AWD、アイサイト、エアコンなどを統合制御。これが本当に必要かどうかはまた別の機会に試してみたいと思うが、今回試乗した限り、広い変化幅を持っており、様々なシーンでフィット感のある走りができそうだ。
現行レヴォーグは、レガシイ・ツーリングワゴンに代わるグランドツーリングワゴンとして登場。この7年間各部を洗練・改良させながら年改を繰り返すことで、レガシイ・ツーリングワゴンの抜けた大きな穴を補完すべく成長してきたように思う。2代目となるレヴォーグ(プロトタイプ)は、レガシイに代わりスバルのグランドツーリング思想を受け継ぐ、正統なスバルのツーリングワゴンと位置づけて開発した、そう思わせるくらい力の入った設計が随所に見られる。すでに完成度は相当なレベルにあり、発売が楽しみなクルマでもある。
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