なぜヴィッツ、4代目からヤリスに?
text:Kumiko Kato(加藤久美子)
【画像】アメリカ版ヤリス、デミオがベース 面影は? 全51枚
10月16日に情報解禁となったトヨタの新しいコンパクトカー「新型トヨタ・ヤリス」。4代目にモデルチェンジをしたトヨタ・ヴィッツである。
トヨタからの発表によると、4代目となるヴィッツは、ヴィッツの名前を使用せず欧州をはじめとする海外と同様に、「ヤリス」の車名を使うことになった。
改名というか、もともとヤリスはヴィッツの海外車名である。ヴィッツは1999年に日本で発売開始となったが、その際、海外での名称はYaris(ヤリス)を使うことになった。
Vitz(ヴィッツ)の響きが欧米ではあまり好ましくないという理由で国内ではヴィッツ、海外ではヤリスを使用することになったのである。
10月15日に開催された報道関係者向けの発表会でトヨタの吉田守孝副社長は「ヤリス」に換えることを以下のように述べている。
「念願のWRC(FIA世界ラリー選手権)の日本開催、来年5月からすべての販売店での併売など、このクルマを取り巻く環境も大きく変わります」
「こうした大きな変化のなかで、TNGAで一新されたこのクルマを、新しいスタートを切るとの思いを込めて、名前をヤリスへと変更することにいたしました」
「今後、このヤリスとヤリス・ブランドを大切に育てていきたいと思います」
小さくても上質な良いクルマであることを目指し、まるきり新しい設計のクルマとしたこと。登場から20年という節目となること。
また、悲願のWRC国内開催が決定したこともWRCのイメージが強いヤリスという車名につなげたい思いもあったようだ。
世界販売台数は約33万台 7割が欧州
ヤリスは欧州市場で売れているクルマ、というイメージが強い。実際、欧州で一番売れているトヨタ車はヤリスだ。
トヨタ自動車の発表によると、2019年の上半期は欧州で12万3266台を販売し、モデル末期であるにも関わらず前年同期比は6.2%増。昨年に続いて前年同期の販売台数を上回っている。
2018年のヤリス世界販売台数は約33万台でそのうち7割が欧州での販売となる。コンパクトカー激戦区の欧州においても高い評価を得ているのだ。
一方、北米ではどうだろうか?
北米は欧州に比べて日本車そのものが非常に強い市場で、乗用車/SUVではトップ10の常連もほとんど日本車である。
トヨタブランドで人気と言えば、RAV4、カムリ、カローラなど。2017年も2018年も、トヨタRAV4が乗用車/SUVカテゴリーで堂々1位となっている。販売台数はいずれも40万台超。
そして、アメリカ(北米/南米)でもヤリスは販売されている。しかし、欧州とも日本とも大きく違っていることがある、
それは現在、アメリカで販売されているヤリスはマツダ・デミオのOEMということだ。
北米 トヨタ・ヤリス=マツダ・デミオ
ヤリスは全世界で販売されるグローバルコンパクトカーだが、ヤリスの車名でも地域によって全く別のクルマが販売されているケースがある。
北米/南米においては、最新のヤリス=デミオ(マツダ2)である。
まず、北米では2003年から「トヨタ・エコー」(2ドアクーペ/4ドアセダン)の名前で初代トヨタ・ヴィッツのセダン版(=トヨタ・プラッツ)が販売されていた。
その後、2代目北米ヤリスからは「トヨタ・ヤリス」(4ドアセダン=トヨタ・ベルタ)として販売されている。2009年に「トヨタ・ヤリス5ドアハッチバック」(=ヴィッツ5ドア)を追加した。
3代目北米ヤリスのハッチバックも同様に日本のヴィッツの北米仕様として2019年1月まで販売。以降、北米における「4代目」ヤリスのハッチバックはマツダ2のOEM版が販売されている。
なお、マツダ2はアメリカでの販売はハッチバック、セダン共にナシ。
マツダは2014年1月から稼働している新工場(メキシコ合衆国グアナファト州サラマンカ市)でマツダ2を生産しているが、同時に同工場でサイオン(Scion)iAの生産も開始。
サイオンとは米国トヨタが2003年から展開していた「ジェネレーションY」をターゲットとする若者向けブランドである。
2016年にサイオンブランドが廃止されたことに伴い、2016年8月発売の2017年モデルから、車名をサイオンiA→トヨタ・ヤリスiAに改称し、さらに、2019年モデルからトヨタ・ヤリスセダンに改称している。
北米仕様のヤリスは、現在、ハッチバックは現行デミオ、セダンはデミオ・セダンとなっている。
デミオのセダンで日本では一般販売されていないが、2019年より自動車教習車として全国の教習所に導入が始まりつつある。
名前の変更 ディーラー店員の反応は?
さて、新型ヤリスの「現場」での評判はどうだろうか? 3代目までのヴィッツは「ネッツ店」のみの販売だった。いっぽう新型ヤリスに関しては、トヨタディーラー全店で販売される。
名前も取り扱い店も大きく変わることになるが、トヨタ車を販売するディーラーの営業マンたちはどのように思っているのだろうか?
「アグレッシブな顔つきと車名変更によって1代目、2代目までのヴィッツのように万人ウケするクルマとは言えないかなと思います」(神奈川県内ネッツ店)
「ヴィッツは軽自動車じゃ不安だけど、あまり大きなクルマは運転しにくい。そしてハイブリッドじゃなくても安くて燃費が良いクルマが欲しい、という女性ユーザーに支持されてきました」
「コロっとしたかわいらしいスタイルでも、女性ウケを重視するために可愛すぎないところが評価されていたと思います」
「走りに振ったスポーティなクルマが好きな女性も増えていますが、まだまだ少数派です。クルマに関しては保守的な方が多い。可愛いけど可愛すぎないクルマが支持されます」(長野県内ネッツ店)
「ヤリスは、世界ラリー選手権(WRC)に参戦してきました。ワールドラリーカー『ヤリスWRC』でも知られています」
「燃費が良く使い勝手の良いコンパクトカーという日本でのイメージとはだいぶ異なりますが、スポーティなイメージになったことで若い男性ユーザーを取り込めるのではないかと期待しています」
「うちでは、これまでヴィッツを扱っていませんでしたが新モデルから販売が可能となるので楽しみです」(愛知県内トヨペット店)
機能もスタイルもすべてが斬新な新型ヤリスは来週から開催される東京モーターショーでプロトタイプがお披露目される。
発売は2020年2月以降を予定している。
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