流行りモノはその名のとおり移ろいゆく。クルマの世界でもそれは同様で、かつては人気を集めていたのに現在はそこまで注目されていないカテゴリーも多い。
今回のテーマにする「ステーションワゴン」もそんなカテゴリーのひとつだが、後退傾向にあるのは日本だけなのか? そしてその理由は?
クラウンエステートが再興のカギ!? とても便利な「ステーションワゴン」が減ってるワケとは?
文/長谷川 敦、写真/BMW、スバル、トヨタ、ボルボ、マツダ、三菱、メルセデスベンツ、FavCars.com
ステーションワゴンの定義は?
日本国内でもステーションワゴンの歴史は古く、1959年発売の初代トヨタ クラウンにもステーションワゴンは存在していた。写真は3代目クラウン(1967年)
ステーションワゴンとはステーション(駅)で使われるワゴン(貨車)のことで、駅に到着した荷物を目的地まで運ぶためのもの。ルーフを後部まで延長して、より荷物を載せやすくしたクルマがステーションワゴンと呼ばれるようになったのはこれに由来する。
ちなみにステーションワゴンは主にアメリカで使われていたカテゴリー名であり、イギリス英語の文化圏では同種のクルマをエステートと呼んでいる。つまりステーションワゴン=エステートと考えてよい。なお、エステートには「地所」や「財産」などといった意味がある。
ステーションワゴンはセダン車の後部を延ばしたクルマで、基本的な性能はそのセダンから受け継ぎつつ、荷物積載量と積み下ろしのしやすさを向上させている。近年人気のSUVやクロスオーバーモデルも荷物積載量は多いが、車高の低いステーションワゴンのほうが使い勝手がよいケースも多い。
このステーションワゴンが日本で流行したのが1990年代で、あるモデルのヒットがきっかけになった。
90年代ステーションワゴンブームをけん引したクルマたち
1990年代の国内ステーションワゴンブームはこの2代目スバル レガシィツーリングワゴンで決定的なものとなり、ライバルメーカーも続々と参入していった
それまではどちらかというと乗用車より商用車としてのイメージが強かったステーションワゴンだが、1989年にデビューしたスバルのレガシィツーリングワゴンは、そうしたイメージを一新するクルマだった。
レガシィツーリングワゴンにはステーションワゴンの名称は与えられていないが、このクルマは紛れもなくステーションワゴンであり、名前からも商用車的イメージを薄めているのがわかる。
デビュー当初から人気を獲得したレガシィツーリングワゴンだが、その名声は1993年登場の2代目で確固たるものになる。この頃になるとライバルメーカーからも多数のステーションワゴンがリリースされ、それがステーションワゴンブームを巻き起こすことになった。
レガシィツーリングワゴンのライバルになったのは三菱 レグナムや日産 ステージア、ボルボ エステート、メルセデスベンツ Eクラスステーションワゴンなど。初代レガシィツーリングワゴンに先行して発売されたトヨタ スプリンターカリブもブームの起爆剤になった一台といえる。
ステーションワゴンブームはなぜ終わったのか?
ステーションワゴンブームに「待った」をかけたのがミニバン勢の大攻勢だった。写真の初代ホンダ オデッセイ(1994年)もミニバンブームの急先鋒の一台
1990年代には人気の絶頂にあったステーションワゴンだったが、現在では人気カテゴリーとはいえない。では、何がステーションワゴンブームを終わらせたのか?
ステーションワゴンブームの陰りは早くも1990年代末期に始まっている。その要因となったのがミニバンの台頭だ。
ミニバンもステーションワゴンと同様に商用車のイメージが強いカテゴリーだったが、1990年代に発売されたホンダ オデッセイやトヨタ エスティマはそれまでのミニバンに比べるとスタイルの洗練度が高く、一般ユーザーも違和感なく使えるようになった。
こうして今度はミニバンのブームが始まった。ステーションワゴンのほうがスマートではあったが、室内の高さに余裕があり、さらに荷物積載量の多いミニバンは、子どもの多い家庭にも受け入れられた。
ミニバンに押されつつあったステーションワゴンに、さらなる打撃を与えたのがSUVだ。
それまで悪路走行もこなせるクロスカントリーモデルはやはり使用者が限定されがちだったが、この“クロカン”の要素もとり入れつつ、街乗りにも適応するSUVもまた時代が進むに連れて洗練されたスタイルになり、それがファミリー層だけでなく若者にも高い訴求力を発揮した。
メーカーが売れ筋のカテゴリーに力を入れるのは当然であり、そのぶんステーションワゴンが手薄になっていったのは仕方のないことだった。
クラウンエステートの復活はステーションワゴン再興につながるか?
2022年7月に発表されたトヨタの新型クラウンエステート。エステートはクラウンのステーションワゴンに与えられる名称だが、あまりそれっぽくない?
現在でも現役で販売されている国産ステーションワゴンはトヨタ カローラツーリングやスバル レヴォーグ などの数車種にすぎず、かつての隆盛を知るステーションワゴンファンはさみしいばかり。
だが、そんなステーションワゴン冬の時代に希望の光が差す可能性もある。それがクラウンエステートの復活だ。
クラウンエステートは以前トヨタがラインナップしていたクラウンのステーションワゴンモデルで、実際にエステートに改称される前はクラウンステーションワゴンの名で販売されていた。
しかしそのクラウンエステートも2007年をもってカタログから姿を消し、以降クラウンのステーションワゴンモデルは空席になっていた。
そんななか、2022年に大幅なリニューアルが断行されたクラウンにおいて、15年ぶりにエステートが登場するというのだ。
新生クラウンエステートの販売はまだスタートしていないが、すでにその姿は公開されている。
公開された新世代のクラウンエステートは、以前のモデルに比べるとステーションワゴンというよりSUV寄りのルックスになっている。
新たなクラウンエステートのフォルムは、果たしてステーションワゴンと呼んでよいのかさえ迷ってしまいそうではあるが、ここはまずエステート(=ステーションワゴン)の名称が復活することを喜びたい。
ドイツのメルセデスベンツも多彩なステーションワゴンモデルをラインナップしている。写真はCクラスのステーションワゴン
日本国内での勢いは落ちてしまっているが、海外に目を転じるとステーションワゴンの人気は健在だ。
特に欧州では流行に左右されず、ひとつのカテゴリーとしてステーションワゴンが定着している。
ヨーロッパでは高速で長距離巡行できる道路も多く、その際に車高が低めで空気抵抗が小さいため燃費に優れ、さらに荷物がたくさん詰めるステーションワゴンの利点が大きく生きてくるということだ。
実際、メルセデスベンツやBMW、ボルボなど多数のメーカーが最新のステーションワゴンモデルをラインナップしていて、そのどれもが人気を集めている。
もちろんこれは国境さえもクルマで越えてしまうことの多い欧州の話であり、それがそのまま日本国内にも当てはまるわけではない。だから今後日本でステーションワゴンブームが再来するとはいい切れない。
とはいえ、まだまだ魅力も多いステーションワゴンが再評価される可能性は十分にあり、このカテゴリーのファンはその日がくることを期待して待ちたい。
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