軽自動車からスーパーカーまであらゆるクルマを所有し、クルマ趣味を追求し続ける自動車ジャーナリストの西川淳氏のチャレンジ企画。タイトル通り、無茶、無謀とも思われる究極のクルマ遊びを考案し、それを実践。クルマ好きの、クルマ好きのための冒険連載。今回は猛牛ファンとして、ランボルギーニのトラクターに乗った!
ウルスで北上し、カウンタックで“楽園”へ
パンテーラの成功で、モデナ最大規模の自動車メーカーへ──イタリアを巡る物語 VOL.05
都内からウルスで東北道を北上する。650psを発揮する4リッター直噴V8ツインターボエンジンを積んだSUVはランボルギーニの名に恥じない、つまりはスーパーカー顔負けのパフォーマンスを誇るが、高速道路をゆったりクルージングするにも最適なGTである。8AT+電子制御4WDシステムのおかげで、どこからでも恐ろしいくらいの中間加速をみせるから、かえって余裕をもって走行車線をクルーズできた。こちらからガンガン追い越し車線を攻める必要はない。どこからでも掛かって来いや! という気分で坦々と走っていられる。何なら気筒休止システムさえ働いている。近頃の高性能車とは、そういうものなのだろう。
途中で以前にトヨタ2000GTでお世話になったオートロマンに立ち寄った。撮影用のカウンタック クワトロバルボーレを借りうけるためだ。サンドベージュというユニークなボディカラーの個体で、おそらくはランボの初代SUVのプロトタイプ、チータのイメージに似せたものだろう。新車時にナニ色だったか。クラシックカーの相場を決める今や重要な要素である。
カウンタックとウルスという新旧猛牛のマニアも羨む組み合わせで赤城山を目指した。ウルスから走るカウンタックの姿を眺めるというのも一興だったろうが、ドライブするならカウンタックのほうが楽しいに決まっている。V12エンジンを背負って、その盛大なメカニカルノイズを浴びながら、寝そべって地を這うように走る。エンジンの存在を身体全体で感じる。キャブレターが吸って吐くエンジンの盛大な呼吸。感覚的には空気が右アシ先から入って腑で増大し背中へと抜けていく感じ。自分の身体が吸排気によってエンジンに飲み込まれてしまうようだ。
その結果、マシンの力の発揮と乗り手の操作とが渾然一体となる感覚は、カウンタックでしか味わえない。それ以降のディアブロ、ムルシエラゴ、アヴェンタドールでは、もう少しクルマが快適なのだ。カウンタックはやはり唯一無二の存在である。
カウンタック・ドライブを久しぶりに楽しんでいると、アッという間に目指す“楽園”に辿り着いた。林牧場である。
そこは元々ドイツ村テーマパークがあった場所で、17年末に閉園したものを林牧場が買い取り、現在は本社および研修施設として使っている。自然に囲まれた広大な敷地内ではオンでもオフでも何でも走らせ放題(にみえる)。筆者からすれば“楽園”以外の何物でもない。素晴らしい環境だ。
林牧場は“かっこいい養豚”を掲げ、近代的な設備とシステムを用い地域環境に配慮した養豚業を展開する。群馬県赤城山麓を中心に数十の施設を有し、およそ30万頭もの豚(国内総数の約2%)を飼育する国内有数の養豚事業者だ。クラシックカーマニアでありミウラも所有する林ファミリィが施設の整備用に最近導入したのがランボルギーニのトラクターというわけだった。
ついに“フェルッチョなりきり撮影会”
到着すると、すでにミウラとトラクターが広場にセットされていた。事前に“あのシーンを撮りたい!”とお願いしておいたのだ。あのシーンと言われて、ミウラとトラクターを予め配置してくれるあたり、さすがはトラクターまでランボルギーニを選ぶ好き者ファミリィである。
最後のパズルピースよろしくベージュのカウンタックを並べて、いざフェルッチョ風の記念撮影、と、そこで嬉しいプレゼント。林家が今日のためにランボルギーニのトラクター繋ぎを用意してくれていた。その場で早速着替え、これまた別に用意してくれた赤いベスト(なにせ件の写真のフェルッチョが赤いベストを着ている! )も羽織って、いざ! フェルッチョなりきり撮影会だ。もうこれで、目的=究極のランボルギーニ趣味の半分以上は果たしたも同然。
しばしクルマ談義に興じながら、一族経営のレストラン「とんとん牧場」からテイクアウトした林牧場“とんかつ”に舌鼓を打つ。ぽかぽか陽気のなか、このまま夢のような3台(+その奥にウルス)を眺めつつ、木の葉が集める風に身を任せて惰眠を貪りたい、などと思い始めたとき、「せっかくだからオシゴトをしていただきましょう」という社長の声が頭上で響いた。
そうだ、トラクターに乗らねば究極の趣味実現は終わらない。「今日せっかくトラクターを運転してもらうというんで、畑一面、草を刈らずに残してありますから! 」。これほど歓待を受けて“いや、とはいえトラクターなんで、乗った証拠程度にちょっとだけ動かさせてもらえればそれでいいんですけれど、などとはとても言えず、まずはトラクターの助手席に乗り込み、現場へと向かった。
かなり背が高い。ほとんどトレーラーなみ。すべてを見下ろしている感じ。これでも取材したモデルは“140”という中型機で、ホイールベースは2550mmである。同じスパークの最大級グレードともなれば3m近くもあるというから、北海道あたりでないと使いこなせそうにない。
それにしても最新トラクターのコクピットまわりは複雑だ。クルマというよりも戦闘機に近い。ひとつひとつの機能操作を覚えるのが大変そう。そして、何より驚いたのは快適であること。エアコンも効くし音楽も聞ける。働くクルマは働く人にも優しくなければならないというわけだ。
“ともに働くランボルギーニ”はスーパーカーに優るとも劣らぬ
現場までの一般道も快適。さすがにタイヤの大きさとパターンを感じる乗り心地だが、すぐに慣れる。タイヤが巨大なぶん、コーナリングにはちょっとコツが要りそうだが、フツウの速度で抜けていく。“試乗車”はスパークVRT140というモデルで、3.85リッターの直4ディーゼルエンジンを搭載。無段変速機付きであった。
大人の腰の丈ほどの高さに成長した草で一面の畑に到着。まずはそのまま助手席で草苅の要領を教わる。セットさえすれば実は簡単で、オートクルーズもできるから、あとは進路を適切に取ればいい。
いよいよトラクターで草苅の初体験だ。前輪の内側を刈り取る場所のラインに合わせて走らせるとちょうどいいらしい。ときおり後を振り返りながら刈り残しがないか確認するのだが、キレイに刈った跡を見ること、これが望外に面白い。道無き道を進んで道を造る。そういう楽しさがある。効率よく刈り取るには頭を使うことも必要で、それもまた単純作業にシンプルな面白みを与えている。草苅がこんなに楽しいものだとは! 夢中になってトラクターを駆っているうちに、1時間ちょっとで一面を刈り終えてしまった。ちなみに同じ畑の草を一面刈り取るのにこれまでは小型のトラクターでは半日以上掛かっていたらしい。さすが、ランボルギーニの高性能トラクターである。
ともに働いたあとに、降り立って改めて仰ぎ見るランボルギーニのトラクターは、ミウラやカウンタックに優るとも劣らない格好良さだった。
ちなみにランボルギーニのトラクターを輸入してきたのは、フェラーリで有名なかのコーンズ&カンパニーの関連会社コーンズAGである(2018年よりオリックス傘下になった)。
PROFILE
西川淳
軽自動車からスーパーカーまであらゆるクルマを愛し、クルマ趣味を追求し続ける自動車ジャーナリスト。現在は京都に本拠を移し活動中。
文・西川 淳 写真・柳田由人 編集・iconic
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ランボ生活送りたい