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バッテリーEVのタイカン 4Sか、V8ツインターボのパナメーラ GTSか? ポルシェ、4ドアクーペの選択肢を探る

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バッテリーEVのタイカン 4Sか、V8ツインターボのパナメーラ GTSか? ポルシェ、4ドアクーペの選択肢を探る

Porsche Panamera GTS × Tycan 4S

ポルシェ パナメーラ GTS × タイカン 4S

世界で最も贅沢なスーパースポーツ、ランボルギーニ アヴェンタドールS ロードスターの比類なき快感 【Playback GENROQ 2018】

時代の架け橋

ポルシェ初のBEV、タイカンは4ドアクーペだ。しかし、すでに長いホイールベースを利して、驚くべき運動性能と高いユーティリティを両立するパナメーラがラインナップされている。電気モーターとV8ツインターボという別世界の2台で旅をした。

電動化は一筋縄ではいかない。内燃エンジンの高効率化も必要だ

自動車界の盛衰を長く見守ってきたクルマ好きの皆さんは心配要らないと思うが、トレンドに乗り遅れまいとする、あるいは何にでも“いっちょかみ”したい政治家や評論家などの話は冷静に現実的に聞き分ける必要がある。地球温暖化を抑止するために温室効果ガス削減に努力するのは私たちの義務だが、だからといって自動車という製品側だけで一気に変革を成し遂げられるものではないのは明らかだ。

電動化は一筋縄ではいかない。それはポルシェの製品戦略を見ても伺える。電動スポーツカーのタイカンのラインナップを拡充するのと同時に、内燃エンジンを搭載する既存車種の高効率化、高性能化にも手を緩めないのだ。

全長5m強、車重2.1トンもの巨体がこのレベルで走れること自体驚きだ

高性能サルーンのパナメーラ・シリーズ(現行型は2016年発表の2代目)は昨年夏にマイナーチェンジを受け、インフォテインメントシステムなどがバージョンアップされるとともに、搭載エンジンもさらにパワーアップされた。ターボ改めターボSは80ps/50‌Nm増しの630ps/820Nmへ、ここに紹介するGTSも353kW(480ps)/6500rpmと620Nm/1800-4000rpmへ+20psの増強を見た。

ポルシェの「GTS」はもともとノンターボの最上級グレードという位置づけだったが、911を含めてほぼ全モデルがターボエンジンを搭載するようになってからはいささかポジショニングが曖昧になった。だが、トップモデルの「ターボ」に次ぐグレードと見て間違いない。そういえば、ポルシェ初のピュアEVであるタイカンの場合もトップモデルが「ターボS」、それに続くのが「ターボ」と「4S」だ。言うまでもなくターボチャージャーなどは備わらないが、最高性能モデルを象徴するのだという。一般人はもちろん、クルマ好きにとっても正直いまひとつ釈然としないネーミングではある。

よりパワフルなエンジンのおかげで改良型パナメーラ GTSの0-100km/h加速は4.1秒から3.9秒に向上したというが(最高速度は300km/h)、全長5m強で車重2.1トンもの巨体がこのぐらいのレベルで加速すること自体驚きだ。改良型4.0リッターV8ツインターボエンジンは、従来よりも自然吸気エンジンのような自然なパワーの盛り上がりを実現したというが、自由自在の逞しさと滑らかさに明確な違いがあるとは思えない。

オプションの機能コンポーネンツが増えるほど高性能を発揮

それよりもスポーツエキゾーストシステムからの排気音がいささか猛々しいことが気になるほど。しかも例によって、巌のような安定感(当然4WDである)と硬質ながら滑らかな乗り心地を両立させている。グループ内で広く使用されている3チャンバー式エアスプリングと可変ダンパーによるサスペンションはさらに磨き上げられているようで、今や重量級高性能車の定番と言ってもいい。

高価になればなるほど(いつものように無数のオプション込みでほぼ2500万円)、オプションの機能コンポーネンツが増えるほど隙のない高性能を発揮するポルシェの面目躍如である。これほどのパフォーマンスを備える大型サルーンを日本で使いこなせるかはまた別の話だが、他ブランドに遅れを取らないためには立ち止まることはできない。

最高速度はEVとしては異例の250km/hを誇るタイカン 4S

フランクフルトショーに現れた「ミッションE」からほぼ5年、ポルシェの電気自動車「タイカン」は、まず「4S」と「ターボ」、そして「ターボS」の3モデルでスタート、今年に入ってから後輪駆動のベースモデル「タイカン」が追加された。

4Sは前後アクスルにそれぞれ一基のモーターを搭載する4WDタイカンの中のベーシックグレードだが、この試乗車はパフォーマンスバッテリープラスという93.4kWhのバッテリー(標準のパフォーマンスバッテリーは79.2kWh)を搭載する高性能仕様である。2基のモーターを合わせた最高出力は360kW(490ps)、ローンチコントロール使用のオーバーブースト時は420kW(571ps)、同じく最大トルクは650Nmという。パナメーラよりもひと回りスリークなボディながら車重は2.3トン近くもあるが、それでも強力なモーター2基と4WDの利点を活かして0-100km/h加速は4.0秒、最高速はリヤのみ2段ギヤボックスを持つせいでEVとしては異例の250km/hを誇る。

速さだけではなく低速時の微妙な加減速や、ブレーキのフィーリングも洗練されている

タイカン 4Sは当たり前だが静かに、滑走するように走り、曲がる。常にベクタリングが効いているような切れ味抜群のハンドリングには若干の違和感がないとはいえないが、追い込んでもまったく音を上げずただただ速い。EVやPHVはバッテリーの重さのせいか、荒れた路面ではブルブルとした振動が残るクルマもあるが、パナメーラなどと同じく3チャンバー式エアスプリングと可変ダンパーを備えるタイカンは、路面を問わずほぼ完璧にしなやかでフラットな姿勢を保つ。

タイカンはアウディeトロンと同じようにコースティング優先で、アクセルペダルを戻しても前方から見えない手に引っ張られるようにスーッと惰性走行する。シフトパドルの備えはなく、回生レベルを上げたい場合はドライブモードをスポーツに切り替えるか、ステアリングホイールの左スポークに備わる小さなアクセラレーターボタンで選ぶようになっている。速いだけでなく、低速走行での微妙な加減速時や傾斜のついた駐車場などでのブレーキのフィーリングも気にならないレベルに洗練されているのがさすがである。そのブレーキは実際にはペダルを踏んでもその9割を回生ブレーキで賄っているという。

パナメーラよりも若干小さいボディはテスラ モデルSと同等だが、全高のみはかなり低い。それでもバッテリーの形状を工夫してリヤシートの足元がえぐれているおかげで、一旦収まってしまえば自然な着座姿勢を取ることができる。

感心するだけで済ませられないのはEV特有の課題がある

ただし、さすがはポルシェのEVだと感心するだけで済ませられないのはEV特有の課題があるからだ。389-464km(WLTP)という航続距離そのものよりも充電環境である。今回は西伊豆のコンビニの急速充電器(20‌kW)を当てにしていたが(近くの公共施設の30‌kW器は日中しか使えなかった。充電器あるあるだ)、やはりそれで30分刻みだと1回で30kmぐらい分しか充電できない。まるで小さな蛇口でプールに水を注ぐようなものだ。

車両側は270kW(!)まで対応しており、その場合100km分を5分で充電可能というが(50‌kWでは約30分で100km、AC11‌kWの場合は空の状態から満充電まで9時間とされている)、そのようなものは日本にはまだない。ポルシェ・ジャパンは独自の急速充電ネットワークを整備すると言っているようだが、今のところはテスラやアウディのように自前のユーザーサービスを始めているわけでもないし、150kWの高出力で充電できるという触れ込みの「ポルシェターボチャージャー」充電器(お台場の期間限定ストアには設置)も、ケーブルの冷却系が間に合っていないという理由で当面90‌kWに制限されるという。

心置きなくパフォーマンス発揮するにはまだタイカン向けの環境が整っていない

大電流は発熱も大きく、充電機器にも冷却システムが必要なのである。さらに言えば試乗車には普通充電用ケーブルも充電用カードも備わっていなかったし、ポルシェ・ディーラーでの充電にも予約が必要(電動ポルシェがそれほど多いとは思えないが)というわけで、現状では人に勧められるような状況ではない。予め調べて綿密な充電計画を立てるような人ならば、あるいはそういうスケジューリングを苦にしない人ならば問題ないかもしれないが、思い立ってドライブに出かける、あるいは急に旅程を変えるようなドライバーにはそもそも向かないというべきだろう。

走ればポルシェの名に恥じない、むしろ新鮮なパフォーマンスを見せるものの、心置きなくそれを発揮するにはまだタイカン向けの環境が整っていない。要するに価格から言っても充電環境から見ても、タイカンを使いこなせる人はごく限られる。もっとも、それはすべてのポルシェに共通することである。

REPORT/高平高輝(Koki TAKAHIRA)
PHOTO/平野 陽(Akio HIRANO)

掲載誌/GENROQ 2021年 6月号

【SPECIFICATIONS】

ポルシェ タイカン 4S

ボディサイズ:全長4963 全幅1966 全高1379mm
ホイールベース:2900mm
トレッド:前1710 後1694mm
車両重量:2215kg(EU)
モーター最高出力:420kW(571ps)※
モーター最大トルク:650Nm(66.3kgm)※
バッテリー容量:93.4kWh(パフォーマンスバッテリープラス)
トランスミッション:2速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前225/55R19(8J) 後275/45R19(10J)
最高速度:250km/h
0-100km/h加速:4.0秒
エネルギー消費率:24.6kWh/100km
消費税込価格:1556万7000円

※パフォーマンスバッテリープラス ローンチコントロール時

ポルシェ パナメーラ GTS

ボディサイズ:全長5053 全幅1937 全高1417mm
ホイールベース:2950mm
トレッド:前1657 後1639mm
車両重量:2095kg(EU)
エンジン形式:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3996cc
ボア×ストローク:86×86mm
エンジン最高出力:353kW(480ps)/6500rpm
エンジン最大トルク:620Nm(63.2kgm)/1800-4000rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:ベンチレーテッドディスク
タイヤ&ホイール:前275/40ZR20(9.5J) 後315/35ZR20(11.5J)
最高速度:300km/h
0-100km/h加速:3.9秒
エネルギー消費率:10.9-10.7L/100km
消費税込価格:1949万円

【問い合わせ】
ポルシェ コンタクト
TEL 0120-846-911

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みんなのコメント

5件
  • ベンベ8シリグランクーペなら、ポルシェの全てを凌駕している。
    当然だよね!
  • 確かにアウディは選ばんわな。カービュー見れば買いたくなくなる。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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