メルセデスF1、ハンガリーGPでも勝てば強さは“ホンモノ”？ 予想外の2連勝で自信深める「正直、次の2戦で期待していた」

　現行レギュレーションが導入されて以降苦しんできたメルセデスF1は、今季のオーストリアGPとイギリスGPで優勝を果たした。仮に次戦ハンガリーGPでも勝利を収めれば、かつての常勝軍団としての姿が戻ってきたという証明になるはずだ。

　メルセデスのルイス・ハミルトンは、945日ぶりの勝利となったイギリスGP制覇がいかに重要であったかを率直に語っていた。

　レッドブルのマックス・フェルスタッペンと激闘の末に思わぬ形でタイトルを逃した2021年アブダビGPの“悪夢”から、ハミルトンが真に開放されることはないのかもしれない。しかし少なくとも、あの夜以降、2度とF1で勝てないのではないかという不安を打ち消すことはできた。

　メルセデスにとって、イギリスGPでの優勝は統計的にも意味を持つ。というのもメルセデスが連勝を達成したのは、2021年シーズン終盤戦以来のことだからだ。

　2022年から導入されたグラウンドエフェクト時代においてレッドブルが優勢の今、昨年のシンガポールGPでフェラーリのカルロス・サインツJr.が勝利を挙げた時のように、ライバルチームはその場限りの勢いで終わることがほとんどだった。

　レッドブル以外のチームによる直近の連勝記録は、2022年のイギリスGPからオーストリアGPでフェラーリ勢が挙げた2連勝だが、その後フェラーリは失速。結果的にレッドブルが他を圧倒するというシーズンになった。

　現行レギュレーション導入以降、今年の2連勝までにメルセデスが挙げた勝利は2022年サンパウロGPでジョージ・ラッセルが挙げた1勝のみ。そしてこの勝利はメルセデスにとって、独自のマシン開発アプローチが思い通りに機能し始めたと誤解する“偽りの夜明け”となった。

　メルセデスの連続優勝記録は2021年末まで遡る必要があり、物議を醸したアブダビGPを前に、ハミルトンがサンパウロGP、カタールGP、サウジアラビアGPで3連勝をマークした。

　今年はそれ以来の2連勝。メルセデスが常勝軍団としてF1の頂点に戻ってきたという機運が高まる一方で、上位4チームの競争力が揺れ動くことでコンストラクターズランキングに変動が起こる可能性がある。

　実際にF1では現在、ランキングのトップ2チームがそれを追いかける2チームほど結果を残せていないという状況が起きており、チーム間の争いが注目を集めている。

　レッドブルはランキング首位もセルジオ・ペレスの絶不調で足を引っ張られ、ランキング2番手のフェラーリはカナダGPでの惨敗とスペインGPに投入したフロアアップデートの問題で勢いを削がれた。

　対照的にマクラーレンはマイアミGPにアップデートを投入して以来安定して優勝を争い、メルセデスはモナコGPの新フロントウイング投入とオーストリアGPでのサスペンション改良によって新パッケージのポテンシャルが開花しつつある。

　モナコGP以降のカナダGP、スペインGP、オーストリアGP、イギリスGPの直近4戦での獲得ポイント数では、メルセデスが125点でトップ。マクラーレンが111点なのに対し、レッドブルは97点、フェラーリは50点だった。

　メルセデスが一歩前進したと思われる直近2戦だけを取り上げてみると、その変化はさらに著しい。オーストリアGP／イギリスGPでは、メルセデスが70点を獲得。マクラーレンは58点、レッドブルは43点、フェラーリは32点だった。

　ランキング4番手のメルセデスとランキング首位のレッドブルのポイント差は現在152点だが、今季残りは12レース。現在の調子が続けば、決して届かないターゲットではない。

　今季シーズン序盤で力強いスタートを切ったレッドブルが大きな貯金を築いているため、ライバルチームがタイトルを狙うにはポイント差が離れすぎているかもしれない。しかし今後の上位争いは非常にスパイシーな展開になる可能性がある。

　実際、現在ランキング2番手のフェラーリとメルセデスの差を追ってみると、順位こそ変わっていないものの、状況がどれほど変化しているのかがよく分かる。

　モナコGP終了時の段階で、フェラーリは252点を稼ぎあげ、メルセデスに156点差をつけていた。しかしそれ以降の4戦でフェラーリはメルセデスに負け越し、その差は81点にまで縮まった。

　4レースで75点差を縮めるということは、1戦あたり平均18.75点の接近具合。現状の勢いが続けば、メルセデスはあと5戦でこの差を完全に埋めることになる。

　しかしイギリスGPの後フェラーリのフレデリック・バスール代表は、アップデートが思うように機能しないことでランキング2番手の座が危うくなってきている中でも、ランキングや獲得ポイント数にはこだわらないという姿勢を見せた。

「レッドブルと何点差なのか、どれくらい先を行っているのか、誰が3番手なのか分からない。多分マクラーレンだね」

　バスール代表は笑いながらそう語った。

「今のトピックは、パフォーマンスを見つけること、モナコやイモラなどの状況に戻ること、そしてポールポジションと優勝を争えるようにすることだ」

「（コンストラクターズ）チャンピオンシップはまだ12レース残っている。つまり、全てが変わるタイミングが10回もあるということだ」

　しかし全てが変わるには10戦もかからないかもしれない。ラッセルが挙げたオーストリアでの勝利は、トップを争ったフェルスタッペンとマクラーレンのランド・ノリスが接触するという運も味方しており、今季ここへ来てのメルセデス連勝は予想外のモノだった。

　そして、特に過去2年間ポールポジションを獲得してきた得意のハンガロリンクで開催されるハンガリーGPに向けて、メルセデスは追加アップデートを武器にさらに調子を上げてくるはずだ。

　チーム代表のトト・ウルフは次のように語った。

「（オーストリアで）我々は大きく離されていなかった。あのクラッシュ前のギャップを見ると、1周あたり0.2秒か、もう少しあったくらいだ。過去にあまり得意ではなかったサーキットで、ここのところ一番接近できた」

「どんどん良くなっているというヒントのようなモノになった。ただ正直なところ、それがシルバーストンになるとは思っていなかった。我々がマシンに投入できたのは小さなパーツで、ほとんど何もなかったからね」

「我々はブダペスト（ハンガリーGP）やスパ（ベルギーGP）により期待をかけていた。しかし自分たちのやっていることが現時点で正しいということを証明できた」

　ハンガリーGPで2021年以来となるハットトリックを達成することができれば、メルセデスが復活したという証明になり、タイトルの行方もいよいよ未知数になってくるはずだ。