エヴァイヤ、異端ではなく象徴だった
text:Takuo Yoshida(吉田拓生)
【画像】1000ps超え、当たり前? 世界のハイパーカー【5選】 全107枚
editor:Taro Ueno(上野太朗)
2019年の7月、突如として発表されたロータスEvija(エヴァイヤ)。ロータス初のBEVという肩書きはその通りだろう。
しかし最高出力2000psのハイパーカー、車両価格2億6000万円以上という驚愕の数字は、これまでのロータスのアーカイブに当てはまらない異端なモデルにも思えた。
今回発表された「Driving Tomorrow」の中には、エヴァイヤに関するインフォメーションも数多く含まれていた。
それによればエヴァイヤを頂点として、2025年に登場するBEVのスポーツカーや、社外ベンダーと協力して開発し、2020年代の後半の登場を予定しているBEVのライフスタイルカーが脇を固めることになるという。
であればBEV専業メーカーとなるロータスの新しいモデル・ロードマップの象徴、急先鋒としてエヴァイヤがいちはやく登場することはごく自然な流れだと感じた。
ロータスのタイプナンバーに倣って130台の限定生産となるエヴァイヤ。その車重は1680kgに抑えられ、発生するダウンフォースは車重を上回るという。
ロータス初のBEVハイパーカーはヘセルの敷地内に作られた新工場において今年後半に生産の前段階に入るという。
ロータス・マジック、残り20%まで
ビークルエンジニアリングを率いる現在のロータスのハンドリングマイスター、ギャバン・カーショウ。
ロータスに33年間在籍し、ブランドのDNAを熟知している彼によれば、エヴァイヤの開発プログラムは80%完了しているという。
パンデミックの影響もあるし、現代の自動車開発には当然のようにシミュレーターのようなヴァーチャルな要素も絡んでくる。
しかしヘセルの敷地内には全長3.6kmのテストコースがある。現在エヴァイヤはヘセルを精力的に走り込み、乗り心地やハンドリング等を煮詰める、つまりロータス・マジックをふり掛ける作業が20%ほど残っているだけだという。
つい2000psという圧倒的なパワーが気になってしまうが、エヴァイヤの開発陣がいつも気をつけているのは、「For the Drivers」というロータスの設立以来の理念である。
パワーや刺激が先行し、ドライバーが扱いきれないようなモデルではロータスのバッヂを付けることは許されないのだ。
エヴァイヤのビークル・ダイナミクス・エンジニア・リーダーであるルイス・カーによれば、エヴァイヤの加速はF1マシンのレベルだが、しかし最初の50ヤードを走っただけでロータスであること、クルマとの一体感が感じられる仕上がりになっているという。
またエヴァイヤは絶えずクラウドサーバーと交信する最先端のテレメトリーを搭載しており、世界中のどこにいてもすぐにサポートできる体制も整いつつあるという。
2000psの加速はF1? グループC?
マネージング・ディレクターであるマット・ウィンドルは、エヴァイヤのプロトタイプ、EP1(パフォーマンスが最も高いプロトタイプ)に試乗している。
彼によれば、エヴァイヤはエクストリーム・ハイパーカーとして期待通りの性能を示してくれたが、しかしロータス・フィールの持ち主であるとも述べている。
コーナーからの脱出時、ガソリン・エンジンのクルマは例え自然吸気でも最高出力に達するまでの時間差がある。
だが4つのモーターを備えたエヴァイヤは瞬時に最大パワーを発揮する。その驚異的ともいえる加速をギャバン・カーショウは「ロケット感覚」と表現している。
彼はエヴァイヤの加速は物理の法則すら打ち破れるのではないかと思うほどだと言い、クローズド・コクピットであるためF1よりもグループCカーに近いとも表現している。
かつてはロータスのF1マシンのシェイクダウンの場であったヘセル。この伝説のテストコースで、エヴァイヤは当然のように最速タイムを記録し、さらにロータスらしい軽快なハンドリングの純度を高めている。
電動化の未来を象徴するエヴァイヤの仕上がりが、スポーツカー世界における今後のロータスのポジショニングを決定することになるだろう。
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