BODY 高級ミニバンにふさわしい静粛性と走行安定性を実現
グランエースは海外仕様のハイエースと一部の構造を共有しながら、乗用ユースに対応するために専用設計されている。2019年に新型となった海外仕様のハイエースは、TNGAの設計思想に基づいて開発されたボディを採用し、フロントノーズを持つスタイルを特徴としている。日本におけるハイエースは、商品などを運ぶ配送車のイメージが強い。しかし、海外では多人数を乗せて移動するコミューターとして使われることが多い。
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そこで新型ハイエースの開発にあたり、ドライバーだけでなく2列目以降に乗るパッセンジャーの快適性を高め、静粛性や乗り心地を向上させるために、ボディやシャシーを新設計した。そして、その設計開始の時点で、さらに快適で高級なミニバンのような存在として、グランエースも同時進行で開発された。
そのため、グランエースはベースとなったハイエース同様、左右にスライドドアを持つセミボンネットタイプで、駆動方式はFR。エンジンは2.8Lディーゼルターボを採用。3列または4列シートのインテリアや高級感のあるエクステリアともに専用のデザインとなっている。そして、そのうえで、さらに上質な乗り味を実現するために、サスペンションなどはグランエース専用のセッティングとなっているのだ。
多人数乗車ができるハイクラスミニバンは、ドライバーにとっては操縦安定性に優れ、運転がしやすいクルマでなければならないと同時に、後席乗員の快適性の高さも要求される。人を乗せ、心地よく移動するための高級車である以上、乗り心地のよさや高い静粛性も必要となるだろう。
そのためには、まずすべての基本となる「ボディ」をしっかりとしたものにすることが重要だ。ボディサイズが大きくなれば、走行中の車体の前後・上下・左右の揺れも大きくなる。また、ミニバンのような箱形ボディでは、走行中に生じる車体のねじれも発生しやすい。
そこで、まずボディの基礎となるプラットフォームのアンダーボディ骨格は、前後・左右方向のクロスメンバーやサイドメンバーを、よりストレートに近いレイアウトで組み合わせる構造とした。アッパーボディは、B/C/Dの3カ所のピラーをアンダーボディのサイドメンバーとつなぎ、さらにルーフのリインフォースに繋げることで、それぞれの部位で環状骨格構造を形成するレイアウトとしている。
そのほか、アッパーボディではフロントウインドウとリヤクオーターウインドウに高剛性ウレタン接着剤を使用し、さらにフロントドア、スライドドア、バックドアといった開口部には、スポット溶接と構造用接着剤を組み合わせてパネル同士の結合力を高めている。
こうした基本骨格での剛性確保に加え、乗り心地を向上させるために、サスペンションを構成するパーツの各取り付け部分を中心に補強を施している。走行中に路面からの入力がボディに伝わる着力点は、ボディがねじれるなど剛性が低いと、入力分以上の大きな動きになり、フリクションや振動の発生原因になったりする。サスペンションをより正確に作動させることが、乗り心地の向上につながるため、グランエースではサスペンションパーツの取り付け点剛性を高めている。
フロントサスペンションまわりは、サスペンションタワーを後方のダッシュパネルと溶接することにより直接結合し、さらに通常はダッシュパネル側に配置されるダッシュカウルを、サスペンションタワー側にも接続することで剛材の一部として利用している。下まわりでは、サスペンションメンバーを閉断面形状とすることで、ボディへの取り付け点数を増やすなどして剛性を確保。ロアアームの正確な動きをサポートする構造とした。
リヤサスペンションまわりでは、アッパーアーム、ロアコントロールアーム、ラテラルリンクのボディ側取り付け点それぞれにブラケットを配置。ブラケットはクロスメンバーやサイドフレームといった骨材に連結する構造としている。
上質な乗り心地とともにグランエースに必要なのが車室内の静粛性だ。箱形ボディということもあり、車室内での音の共鳴・共振が発生しやすいこともあるが、ディーゼルエンジンを搭載しているため、とくにフロント方向からの騒音・振動を抑え込むことに注力されている。
エンジンルームと車室を仕切るダッシュパネルは、エンジン側にノイズを吸収する吸音材を配置し、車室側にはカウルパネル上端部まで覆う形でインナーサイレンサを設置。さらにロードノイズやエンジンノイズを低減させる効果のあるサンドイッチ鋼板(制振材)を配置している。また、エンジンノイズはボンネットを通してフロントウインドウまわりからも車室内に侵入するが、これを抑制するためにボンネットフードの裏側とカウル部分にもサイレンサを配置している。
走行中のタイヤの回転などによって発生するロードノイズ対策としては、フロントフェンダー、リヤホイールハウスに吸音ライナーを設置。またフロントフェンダー内にはエンジンルームやフロントグリル付近から侵入する騒音を低減するエプロンシールを配置している。
アッパーボディでは、各ピラーやルーフフレームの中空部分に発泡ウレタンを埋め込み、またリヤホイールハウスとインナーパネルはウレタンフォームによって空間断面をふさぐことで、空気内を伝わる音を遮断。発泡ウレタンやウレタンフォームを用いることで、高い遮音性を実現している。
グランエースのようなミニバン形状のボディであっても、ボディ全体の空気抵抗を低減することは、騒音抑制のほか操縦安定性や燃費性能の向上につながる。そこで、フロアの下側にアンダーカバーを設置した。フロントバンパー下からボディ前半部はほぼフルカバーとし、スペアタイヤハウスやリヤフェンダーにもアンダーカバーを装着。さらに一部のアンダーカバーには、整流効果のあるエアロスタビライジングフィンを設定している。
こうしたボディ各部をグランエース専用設計することにより、クルマとしての基本性能を高めながら、ハイクラスミニバンにふさわしい優れた操縦安定性や快適性、静粛性を実現しているのだ。
CHASSIS 上質な乗り心地とハイレベルな走行安定性を実現
全長5.3m、車重約2.8トンという大柄なボディを支え、そのうえで操縦安定性や乗り心地を追求するべく、グランエースのサスペンションは専用設計となっている。サスペンションは、フロントにマクファーソンストラット、リヤにトレーリングリンク車軸式を採用。
マクファーソンストラットは、国内最大級となるサイズだが、それは車重を支えるとともに、操舵時の応答性や一体感、ステアリングシステム全体の剛性を高めるためだ。フロントサスペンション全体としては、FR車のメリットを最大限活用し、素性のいい配置にこだわった。
キャスター角は、ハンドルを大きく切ったときに必要となる操舵力と直進性を両立できる最適値に設定し、ロアアームの取り付け位置(ボディ側/車輪側)の最適化によって、ロールセンター高を上げて、積載時(多人数乗車時)でもロール量の増大を抑え、操舵応答性を高めた。そして、このロアアームボールジョイント位置に対し、ステアリング機構のタイロッドボールジョイントを極力車両外側に配置することで、タイヤ切れ角アップとハンドル戻り性能を両立。またロールセンター高アップに伴うキングピンオフセット増大に対応すべく、ホイール中心を内側にセットしている。
リヤサスペンションは、後席の乗り心地と操縦安定性を両立させることができるトレーリングリンク車軸式を採用。後車軸が収まるアクスルハウジングから、左右それぞれ2本のリンク(アーム)を前方に伸ばし、ボディと連結する形式のサスペンションだ。フロア高を下げるために、コイルスプリングとショックアブソーバーを別置きとして、コイルスプリングをロアコントロールアームの真上に配置し、その外側にショックアブソーバーを配置している。
リヤサスペンション開発において、もっともこだわったのは後席乗員の快適性だ。日本国内よりも道路事情が悪い地域での使用も想定した設計のため、サスペンションストロークは十分に確保。さらに国内専用のアイテムとして、路面からの入力振動の周波数に応じて減衰特性が変化する、周波数感応型ショックアブソーバーを採用している。
操縦安定性向上のためには、ドライバーの操作性も重要なポイントだ。車体の大きな車両では、取りまわし性とドライバーの操作に対する車両の応答性が悪化する傾向にある。グランエースでは、車体の大きさを感じさせない操作性を実現するため、最小回転半径を5.6mに設定しており、タイヤの切れ角を大きく(最大45度)取ることでそれを実現している。
フロントのマクファーソンストラットの大型化に合わせて、パワーステアリングシステムもラック&ピニオン式としては国内最大級サイズとした。車重の大きさとタイヤ切れ角が大きいため、ステアリング機構自体のパワーが必要だったのだ。また、操舵フィーリング向上のためステアリングシャフトも大径タイプとし、さらに極力直線的なシャフトレイアウトに。路面からの入力による不快な振動を遮断するため、ジョイント部分にも新機構のカップリングを採用している。ステアリング機構はコラプシブル構造で、チルト&テレスコピック調整機構を備えている。
そのほか操作系では、ステアリングとアクセルおよびブレーキペダル、シフトレバーの位置関係を最適化。ドライバーの左膝まわりのスペースを確保し、なおかつ左右席間のスムーズなウォークスルーも可能にしている。
多人数乗車や多積載が前提のクルマなら、ブレーキ性能も高めておかなければならない。ブレーキシステムは、フロント、リヤともに16インチの大径ディスクとし、フロントには2ピストンキャリパーを採用。また、倍力装置の容量も拡大し8インチ+9インチのタンデムブースターを組み合わせている。さらに、軽いペダルタッチと剛性感を両立させるため、ペダル比を可変としたリンク式ブレーキペダルを採用している。同時にペダル高さやペダル角、踏み込み角も最適化した。
POWER TRAIN あらゆる性能を高次元で調和させた
グランエースに搭載されるエンジンは、2.8L直噴ディーゼルターボ(1GD-FTV)となる。GD型はすでにハイラックスやランドクルーザープラド、そして海外仕様のハイエースにも搭載されている。マイナス40度以下の気温となる寒冷地域や、4500m超の高地など、通常では考えられない過酷な使用環境に対応するタフなエンジンだ。グランエース用は、基本的にはランドクルーザープラドと同じユニットとなる。
国内仕様のGD型は、尿素SCRシステムを採用したクリーンディーゼルだ。GD型は従来のKD型エンジンに対し、小排気量で高出力、さらには小型軽量という特徴がある。グランエースへの搭載に関しては、車両重量に見合ったトルク特性を発揮することに加え、直列4気筒ならではのコンパクトさもその理由のひとつとなった。
トヨタの次世代ディーゼルとして開発されたGD型は、吸入空気量の増大や燃焼温度の制御により、高い熱効率(最大44%)を実現した。具体的には、高効率低流動吸気ポートを採用し、吸入空気をストレスなく燃焼室に流入させることによって、圧力損失の低減を図っている。高圧・高制御コモンレール式燃料噴射システムによる燃料噴射位置やタイミングの最適化により、燃焼温度をコントロール。燃料噴射も1燃焼に対し3回行うことで燃焼効率を高めている。
ターボチャージャー(トヨタ内製)は小型化・高効率化により、エンジン本体の性能向上と合わせて、約50%の高応答化を実現している。こうしたエンジン全体の高効率化に加え、アイドリングストップ機構も搭載している。
この2.8Lディーゼルエンジンにトランスミッションは6速ATを組み合わせ、WLTCモード燃費は10.0km/Lを達成している。ギヤ比はランドクルーザープラドやハイラックスと同様だが、最終減速比をグランエースの車両重量やタイヤサイズに合わせて最適化している。
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