プラットフォームはアベンジャーと同じe-CMP2
いかにもイタリア車らしい、フィアット600eが登場した。ミケランジェロなど数多くの芸術家を生み出し、美味しいイタメシを育んできた土地は、著名なサッカー選手だけでなく、フェラーリやランボルギーニ、ランチアなど、数多くの名車も排出している。
【画像】イタリア車らしいクロスオーバー フィアット600e 競合するEVと比較 500eも 全133枚
イタリア固有の、ドラマチックとすら表現できる風土は、他の国が真似できるものではない。トリノ・リンゴット工場の屋上で新車のテストを繰り返してきた、フィアットもその一員だ。
600eのリアバンパーには、誇らしくイタリアン・トリコロールが刻まれている。選べるボディカラーは、色彩豊かなものばかり。近年のモデルのように、モノトーンな色調へなびくことはない。思わず、同社の姿勢を応援したくなる。
ここにはブルーの空が広がり、オレンジ色の太陽が輝く。とはいえ、大地を象徴するグレーのフィアットも好ましいが。
どのカラーでも、新しい600eは個性的でスタイリッシュ。フィアット500eよりボディはひと回り大きく、クロスオーバー風に仕立てられている。
デザインは、500eから影響を受けたことを隠さない。ボディ面は柔らかくカーブし、半分まぶたを閉じたようなヘッドライトが、丸くくり抜かれている。内燃エンジン版のフィアット500X、より均整が取れているように思う。
車内空間や快適性が重視され、500eよりシルエットは直立気味。プラットフォームは、ジープ・アベンジャーと同じe-CMP2となる。
小さなボディに156ps オシャレなインテリア
丸いボディは、予想以上にコンパクト。全長が4171mm、全幅は1781mm、全高は1523mmで、フォルクスワーゲンTクロスと同等といえる。入り組んだ市街地でも駐車しやすく、長距離ドライブも苦にならないサイズだ。
先にリリースされるのは、51kWhの駆動用バッテリーを積むバッテリーEV版。2024年には、ハイブリッド版も提供が始まるという。しばらくは、現行型の500Xと併売されるそうだ。
駆動用モーターは156psで、前輪を駆動。車重は1520kgと重すぎず、0-100km/h加速を9.0秒でこなし、航続距離は408kmがうたわれる。急速充電能力は、DCで最大100kWまで対応する。不必要に速いバッテリーEVとは異なる。
インテリアはオシャレに仕立てられつつ、快適性や利便性にも配慮されている。ダッシュボードのベースはアベンジャーと共有するが、ちゃんと差別化されている。
塗装された化粧パネルが与えられ、安っぽい印象は皆無。頻繁に手で触れる部分の素材も、質感に優れる。試乗車はラ・プリマと呼ばれる上級グレードで、ブルーの差し色が入ったアイボリー・レザーが素敵だった。
足元には硬質なプラスティック製部品も使われているが、モダンでフレッシュ。人間工学的にも配慮されている。
インフォテインメント用の10.25インチ・タッチモニターは鮮明に描画され、アップル・カープレイとアンドロイド・オートへ対応し、システムも扱いやすい。モニターの下には、エアコン用の実際に押せるハードスイッチが並ぶ。
不満ない動力性能 優しい乗り心地
車内空間はフォルクスワーゲンID.3や日産リーフほど余裕はないが、ファミリーカーとして充分な広さがある。平均的な大人なら、リアシートに問題なく座れるし、大きめのチャイルドシートも2脚据えられる。
荷室容量は360L。上級グレードを選ぶと、荷室の床面を1段持ち上げることも可能。60:40で倒せるリアシートの背もたれとフラットにつながり、床下には充電ケーブルを収納できる。
市街地を走らせると、156psの600eは不満ない動力性能を備えることがわかる。流れが速い郊外の道での追い越しでは、少々息苦しさを伴うものの、ノーマル・モードでもスポーツ・モードでも普段使いで不満を感じることはないだろう。
回生ブレーキは、デフォルトでは弱め。Bモードを選ぶと強く変化し、加減速を繰り返す市街地では扱いやすさが増す。ブレーキペダルを踏まずに済む、ワンペダルドライブには対応しない。
高速道路の速度域でも、周囲の流れへ合わせやすい。長距離通勤や週末旅行にも活躍してくれるはず。エコ・モードは加速が鈍くなるが、航続距離を伸ばせる。
乗り心地は、18インチ・ホイールを履くラ・プリマ・グレードでも快適。トリノ周辺の滑らかではない路面を、優しく均していた。荒れたアスファルトや凹凸を通過しても、揺れは良く抑えられている。ただし、サスペンションのノイズが耳に届く。
大きめの隆起部分や舗装が剥がれた穴などでは、ボディが揺さぶられる。とはいえ、コーナリングでよろめくようなことはない。
ベースグレードも装備は充実 実力は充分
ステアリングホイールは軽く回せ、レシオは適度にクイック。意欲的にカーブへ侵入すると、反応は予想しやすく、安心感のある手応えを得られる。フィーリングが豊かとはいえないまでも、気持ち良く運転できる。
今回の試乗では、イタリアの山道も交えた複合的なルートを走らせたが、平均での電費は6.9km/kWhと良好だった。この数字を踏まえると、現実的な航続距離は温かい日で約390kmとなる。冬場は290km前後へ落ち込むだろう。
装備は充実し、英国価格3万2995ポンド(約597万円)のベースグレードでも、パーキングセンサーにオートLEDヘッドライト、クルーズコントロールなどが付いてくる。効率に優れるヒートポンプ式エアコンが標準なことも、特筆すべきだろう。
ラ・プリマ・グレードには、シートヒーターやアダプティブ・クルーズコントロール、キーレスエントリーなどが追加される。4000ポンド(約72万円)高くなるが、アベンジャーよりお手頃だ。
フィアット600eは、しっかり練られた魅力的なパッケージングにある。ベースを共有し、無骨な見た目のジープ・アベンジャーの方が、運転の楽しさでは若干勝る。とはいえ、丸く愛らしい見た目へ強く惹かれるなら、躊躇する必要はないだろう。
このクラスのバッテリーEVでは、英国価格が比較的安く、装備は充実し、エネルギー効率も悪くない。能力として際立つ材料がないようにも思えるが、個性的なスタイリングがそれを補う。全体的な実力は、充分に高いといっていい。
◯:エネルギー効率 滑らかな走行フィーリング
△:クルマの能力として際立つ部分が弱い 運転する魅力がもう少し欲しい
フィアット600e ラ・プリマ(欧州仕様)のスペック
英国価格:3万6995ポンド(約669万円)
全長:4171mm
全幅:1781mm
全高:1523mm
最高速度:149km/h
0-100km/h加速:9.0秒
航続距離:405km
電費:7.8km/kWh
CO2排出量:−g/km
車両重量:1520kg
パワートレイン:永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:51kWh
急速充電能力:100kW(DC)
最高出力:156ps
最大トルク:26.4kg-m
ギアボックス:シングルスピード・リダクション(前輪駆動)
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