新旧の軽自動車が入り乱れての戦いが開幕!
福井県にあるタカスサーキットでは、オープン以来長年に渡って軽自動車だけの耐久レースが開催されている。この耐久レースシリーズ「TAKASU.66 CHAMPIONSHIP(タカス・コンマロクロク・チャンピオンシップ)」開幕戦が5月16日に行われた。 昨季からマンガ「CROSS OVER REV!」の冠が付いたこのシリーズは、本来なら開幕戦に合わせて作者の山口かつみさんも来場する予定だったが、居住地域に緊急事態宣言が出されたため、残念ながら欠席となってしまった。
軽自動車好き必見! じつはお手軽なエンジン載せ換えという楽しみ方
開幕戦は200マイルレース/210周で争われた
全4戦で争う「TAKASU.66 CHAMPIONSHIP」は昨シーズンの開催が危ぶまれたが、無事に全4戦を実施できた。今季もこの5月からシーズンがスタート。参加者たちも待ち望んだ一戦となった。全戦のレース距離が異なるシリーズで、開幕戦は200マイルレース。約320kmの210周で争われた。
また今季は、エントラントの意見や要望を反映させる形でクラス分けを実施。なんでもありのオープンクラスともいえるTC-1(NA車)とTC-2(ターボ車)から、旧規格、新規格、さらにはHA23アルトとHB23キャロルだけのTC-7と、車両の仕様別にTC-1からTC-7までの7クラスが組まれており、車両の識別はゼッケンの色によって判断できる。
ほかにもAT車両によるTC-ATクラスと、新設のナンバー付き無改造クラス(TC-Nクラス)もあり計9クラスを設定(本来なら大学選手権クラスTC-Cもあるのだが、このコロナ禍の影響で学生が活動できていないため今シーズンは休止)、ビギナーからエキスパートまで楽しめるような仕組みとなっている。
また、レース前日は「おもいっきり走行会」と題して、終日練習走行できる日を設けるなどの気遣いもあり、通常戦となる今回は1チーム2名以上(第3戦の8時間耐久では3名以上)での参戦が可能になっていた。
「モータースポーツとして楽しみましょう」というコンセプトで開催
タカスサーキットの岸下力生さん(左)と、このシリーズに長年参戦してきたナビックの吉田謙一代表(右)は、現在エクゼクティブプロデューサーとして就任。おふたりに話をうかがった。
岸下さん:「ミニサーキットは本来ショップさんなどの走行会やレースイベントなどで貸し切り利用していただくカタチがメインです。しかし地方の弱いところもあって自分たちで企画して何かできないか? と考えていたところ『独自で軽自動車の耐久レースをやりたい』というショップさんからお声掛けをいただきました。ただ『貸し切り料金を考えると結構きつい』という話になり、そこでタカスサーキットが主催してショップさんにはエントラントに回ってもらう形でこのシリーズを立ち上げたのです。そんななかナビックの吉田さんにも参加者として協力していただいてきました。おかげさまでイベントの盛り上げにもご協力いただき、当初は18台分のピットが埋まらないような状況でしたが、最近はもうこれ以上来ないでほしい……(笑)と思うくらい大盛況です。シリーズ当初から『モータースポーツとして楽しみましょう』というコンセプトで、和気あいあいゴルフコンペのような雰囲気でイベントを楽しんでいただきたいと思ってやっています」
吉田さん:「岸下さんの志にわれわれも共感してお手伝いさせてもらっています。今回もそうですが、レースが終わるとみんなレースの緊張から開放されて仲良くしていますよ「CROSS OVER REV!」にも協力いただいて痛車ミーティングなども昨年開催したのですが、新型コロナに邪魔されている状態です。コロナが終息したら山口かつみ先生にもお越しいただき派手にイベントを打っていきたいなと思っています。他にもこのTAKASU.66でさまざまなアイデアがあるのですが、それを岸下さんがカタチにしてくれるのでとても良いイベントになっています。これからもどんどん良い企画を考えていきますよ」。
おふたりの話を聞いているとTAKASU.66への愛にあふれ、それがイベントの成功につながっているのだろうと実感できる。2021年のシーズン開幕戦には初参加のチームから常連組のツワモノたちを含めた全23チームが参戦。8月開催の第3戦「8時間耐久」は人気イベントであり、出場するためには第1戦もしくは第2戦へのレース参加が条件。開幕戦には腕試しでエントリーしたチームもあったようだ。
波瀾万丈のレース展開が繰り広げられる
この日、朝からどんよりをした雲が上空にかかり、ホームストレートでは向かい風となる南東からの非常に強い風が一日中吹き付ける荒天となった。午前9時10分から20分間の練習走行の後、決勝グリッドを決める5分間のみの予選セッションを実施。
2回の予選はドライバーが交代してアタック。合算した速いタイム順でグリッドが与えられた。そして10時半、ローリングスタートで210周の決勝レースがスタート。
オープニングラップはポールポジションを取ったTC-1クラスの「#80 アールエイト倶楽部(アルトワークス/HA23V)」がトップで帰ってきたものの、1周目を走り終えたところで一気にペースダウン。代わってTC-2クラスの「#26 グループホームシルクセロ(トゥデイ/JA4)」がレースを引っ張っていく。
それを「#68 ハーテリーTIGRE(TC-2/アルト/HA23V)」、そして「#55 LINE UP WITH BOLD(TC-2/アルト/HA36V)」、「#6 TSコルセ(TC-7/アルト/HA23V)」が追いかける展開からスタートした。
まもなく1時間が経過するところでポールポジションを獲った80号車にトラブルが発生。フロントのハブが折れて最終コーナー出口でマシンを止めざるを得ない状況。そしてセーフティカーが導入され、このタイミングでピットロードオープンとなり多くの車両が続々とピットイン。
このコンマ66ではピットイン&ピットアウトの際は、ピットロードでの一旦停止ルールが設けられピットへ戻る車両の列が最終コーナーにまで伸びる展開となった。
また、給油制限もあり、この日の給油開始はレースがスタートするまでNG。決勝レース前の練習走行から予選、決勝でも限られた燃料で走るため、練習走行や予選をスキップするチームもあるほど。給油作業も最低6分の停止が課せられるため、同一ドライバーの連続周回可能数60周というレギュレーションを戦略的に活用しながら、レースの進行をにらみながらの給油計画が必要になる。
スタートから2時間半が経過した午後1時。給油するチームも増えてきて給油ポイントには渋滞が始まっている。耐久レースならではの作戦の成否がここの辺りで決まってくる。
路面状況は好転せず雨は時折激しく打ち付ける展開のなか、徐々に上位勢が固定されていく。ドライバー交替のたびに入れ替わっていたトップ争いも、徐々に55号車がトップを堅持する展開。そんななか常連チームの2台が最終コーナーで接触しそのままグラベルでストップしてしまった。
給油やドライバー交替を予定していたチームは、ここぞとばかりにセーフティカーの導入を見越して一気にピットロードへなだれ込む。そしてこの日2度目のセーフティカーランになるも、各チームの判断が早かったこともありピットロードオープンとなっても戻ってくる車両はおらず、大きな混乱もなくレースは再開された。
この2度目のセーフティカー導入を機に、天候は回復。路面コンディションも少しずつ良くなって、ここからラストスパート。TC-6クラスをトップで快走中の「#3 SUNDAY‘Sレンタ3号(TC-6/ミラ/L275V)」が右リアタイヤが外れるトラブルが発生する混乱もあり3度目のセーフティカー導入。
そしてセーフティカーが解除されると、総合順位で2番手につけていた26号車が自己ベストを更新しながらのトップを猛追。最後はアルトの最新モデルと、この日参戦の最古参モデルであるトゥデイという時代を超越した新旧勝負となった。しかし、トゥデイがあと36秒というところまで迫ったものの、アルトが200マイルをトップで走り切り、開幕戦は「#55 LINE UP WITH BOLD(TC-2/アルト/HA36V)」が真っ先にチェッカーを受けた。
参加者に聞いたTAKASU.66 CHAMPIONSHIPの魅力
TC-1クラス優勝 #28 しのぶ@vivio・YRT(196周)
スピンしちゃいましたが、なんとか逃げ切りました。ライバルがガス欠で止まってしまったのでクラス優勝できました。これに懲りず頑張ります。次も完走します。今回はバネを変えて1分15秒出たので、お金をかけずにもうひとつ欲をかいて、次もタイムを削ってしっかり走り切ろうと思っています。
TC-2クラス優勝 #55 LINE UP WITH BOLD(210周)
チームとしては初参戦ですが、この36型用の車両のパーツを開発していて、実戦投入ということで参戦しました。うまく優勝できて(HA36V型初優勝)よかったです。一発の速さはないのですが、ただただコンスタントにラップを刻むという作戦でした。8時間耐久レースも、セントラルの軽カーミーティングもあるので、そういったところでデータを取って、過酷な状況のなかで確認して良い商品を生み出していけたらと思います。
TC-6クラス優勝 #10 チームナビックB(202周)
今回はチームAが参戦しないということで、Aから助っ人を借りて参戦しました。この車両のシェイクダウンだったんですが、うまくクラス優勝することができました。次戦もエントリーしてチームAのノウハウを盗みながら、夏の8時間耐久に向けてチームBのレベルが上げられたらと思っています。
TC-7クラス優勝 #85 SUCC&ガレージ仲ヤマ2号(206周)
昨年の初参戦から1シーズン戦い、2シーズン目の初戦で無事にクラス優勝できました。今日は途中でウエットになってまたドライになるという難しい路面コンディションでしたが、タイヤチョイスと燃料配分、あとはサスペンションのセッティングが決まったことが勝因ですね。足のセットのためにかなり走り込みましたから。
TC-ATクラス優勝 #24 チームWB(195周)
途中で2から3速のシフトアップでギヤ鳴りするようになり、このまま使い続けるとギヤがなくなってしまうので3速ホールドで走りながらストレートだけ4速を使い走りました。最後の30周はブレーキパッドまでなくなっちゃってペースを落としてなんとか優勝できました。シリーズ優勝が決まるまでは頑張って参戦します。
TC-Nクラス優勝 #86 SUCC&ガレージ仲ヤマ1号(185周)
チーム2台(滋賀大学自動車部をベースに軽自動車仲間で一緒にやろうということで結成)で参戦しています。トラブルなく快調に走行できて、速いドライバーを集めた85号車とともに、こちらもクラス優勝できました。次戦もNクラスで出ようと思っていますので、車検に通る範囲内で少し気になった点を改良して、あとはドライバーの腕を磨くため練習をがんばりたいと思います。
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