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サーキットでも活きるKWサス フォード・フォーカス STトラックパックへ試乗 トルクステアも個性

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サーキットでも活きるKWサス フォード・フォーカス STトラックパックへ試乗 トルクステアも個性

KWの車高調コイルオーバーユニット獲得

フォードは、トラック(サーキット)パックの投入で、フォーカス STを更に磨き込んだ。現行の4代目フォーカスとしては、最もエキサイティングな走りを堪能できる足腰に仕上がっているようだ。

【画像】トルクステアも個性 フォーカス STトラックパック 競合のホットハッチと写真で比較 全113枚

2021年にAUTOCARが特別なフォーカス ST、「STエディション」へ試乗した際、その名前以上の改良が施されていたことへ触れている。今回試乗したのは新しい特別版、STトラックパックだが、内容に見合った名称だといえるだろう。

われわれが一般道で熱くなれる、前輪駆動のホットハッチに相応しい能力を宿している。英国での定番モデルとして。

ホンダ・シビック・タイプRのように甚大な最高出力は発揮しないし、派手なエアロキットで武装しているわけでもない。それでも乗り心地は適度に引き締まり、ステアリングの反応はクイックで、カーブできっかけを与えればリアタイヤを自在に振り回せる。

トラックパックに装備されるのは、特別なコンパウンドで成形されたピレリPゼロ・コルサ・タイヤと、従来品より10%軽いフローフォーミング技術を用いた19インチ・アルミホイール。その内側には、直径が363mmもあるフロント・ブレーキディスクが光る。

だが、最大のポイントといえるのがサスペンション。ドイツの名門、KW社製の車高調整式コイルオーバーユニットが奢られている。試乗車の場合、車高は10mm落ちていたが、更に15mm下げられる。減衰力は圧縮側で12段階、伸長側で16段階に調整可能だ。

280psの4発ターボにMT、ブレンボ・ブレーキ

ただし、車高や減衰力を変えるには少々手間がかかる。クルマをジャッキアップし、タイヤを外して作業する必要がある。ダッシュボード上のボタンを押すだけ、といった機能はない。

それでも、筆者がSTトラックパックのオーナーになったら、週末の度にタイヤを外し、サスペンションの調整を楽しむはず。どんな変化を体験できるのか好奇心が湧くが、今日は広報用車両だ。フォードが推奨する標準セッティングのままにしておいた。

それ以外のメカニズムは、従来のフォーカス STと変更はない。が、否定的には読まないでほしい。2.3L 4気筒ターボガソリンエンジンは、280psと42.7kg-mを発揮する。トランスミッションは、6速マニュアル。まったく問題ない。

ステーションワゴンのフォーカス STではATも選択できるが、STトラックパックはMTのみの設定。この内容で、英国価格は3万9950ポンド(約643万円)から。通常のフォーカス STと比較すると、3000ポンド(約48万円)増しとなる。

もちろん、視覚的な差別化もおろそかではない。ルーフスポイラーにリアディフューザー、フロントバンパーのトリム、フロントグリル、ルーフ、ドアミラー・カバーがグロスブラックで仕上げられている。

先述の19インチ・ホイールもグロスブラック。その内側では、レッドに塗られたブレンボ社製のブレーキキャリパーが鋭く輝く。レッドに塗られたSTのロゴも、縁がブラックの専用品だ。

シャシーが積極的にカーブへ飛び込んでいく

筆者が4代目フォーカスのSTへ試乗してから、しばらく間が空いていた。STエディションへの試乗機会はなかった。それでもSTトラックパックは、過去にないほど引き締められた足回りを得つつ、充分普段使いできる柔軟性も兼ね備えていることは明らか。

フォードの技術者は、高価なダンパーを採用することのメリットを説明する。これに組まれているアイテムは、市場では2300ポンド(約37万円)相当なのだという。

同時に、路面の隆起部分など強い入力はなだめつつ、洗練された姿勢制御や身のこなしを実現する、絶妙なブレンドを生み出す必要もある。ホットハッチを理解するフォードの仕事も素晴らしい。

試乗車のデフォルト設定は、サーキットでも見事に機能した。ライバルより遥かに機敏で、外側へ流れるアンダーステアを抑え込み、常にアクセルペダルの加減でラインを調整していける。

シャシーが積極的にコーナーへ飛び込んでいくような感覚すらある。ステアリングホイールには不満のない手応えがあるが、少し反応は過剰かもしれない。

高性能なフォードは、かつてここまで飛び抜けた能力を備えていなかった。それでも、シビック・タイプRの方が優れていることも確かではある。

非の打ち所がないパワートレイン

パワートレインは非の打ち所がない。330psを発揮する白眉のシビック・タイプRと比べれば、レッドライン間際のエネルギッシュさで劣るとはいえ、一般道で楽しむ前輪駆動のホットハッチとして、これ以上は必要ないと思えるほど速い。

最大トルクは42.7kg-mで、シビック・タイプRと並ぶ。サウンドはより特徴的で、シフトレバーの感触は滑らかだ。

トラクションもいうことなし。ボルグワーナー社製の電子制御リミテッドスリップ・デフが組まれている。機械式で、僅かなトルクステアが感取されるものの、気にするほどではない。

むしろ楽しい。筆者は、パワフルなホットハッチらしい個性だと思える。トラックパックという名に、そぐわない内容へ仕上がっている。

フォード・フォーカス STトラックパック(英国仕様)のスペック

英国価格:3万9950ポンド(約643万円)
全長:4378mm
全幅:1825mm
全高:1454mm
最高速度:249km/h
0-100km/h加速:5.7秒
燃費:12.4km/L
CO2排出量:185g/km
車両重量:1432kg
パワートレイン:直列4気筒2261ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:280ps/5500rpm
最大トルク:42.7kg-m/3000-4000rpm
ギアボックス:6速マニュアル

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