トップ4台が0.030秒差という近年稀に見る僅差の結果となった『第1回 瑤子女王杯 全日本スーパーフォーミュラ選手権富士大会』の公式予選。その中でポールポジションを勝ち取ったのは、今季チームを移籍した福住仁嶺(Kids com Team KCMG)だった。
福住としては、2021年の第2戦鈴鹿以来、3年ぶり2回目のポールポジションだったが、チームとしては参戦15年目で初のポールポジションとなり、チーム首脳陣も喜びを爆発させていた。
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■KCMG土居隆二監督「ありがとう仁嶺。速かったよ」
「ポールポジションが決まった瞬間に思ったことは……『仁嶺、ありがとう』でしたね」
そう語るのはKids com Team KCMGの土居隆二監督。フォーミュラ・ニッポン時代だった2010年から参戦を開始し、ここまで数々の苦しい思いを経験してきたひとりだ。
「もちろん、みんなに対して『ありがとう』という想いがありますけど、最終的にコース上で一点集中をしてトップを獲ってきてくれたことですね。あの僅差の中で仁嶺がやってくれたので、そこはみんなを代表して『ありがとう、速かったよ』という気持ちが湧いてきました」と土居監督。無線では興奮した様子で福住にポールポジション獲得を伝えていた姿が印象的だった。
その一方で土居監督は、7号車の小林可夢偉がQ1敗退となってしまったことも気にしている様子で、「今日は手放しで喜べないのは、可夢偉がQ2に行けなかったこと。7号車がQ2に行くということは僕にとっては大きなテーマだったので、仁嶺に対しては『初ポールありがとう』なんだけど、その一方で可夢偉サイドをなんとかしたいという気持ちが強いです」とも語った。
改めて、今回の予選を振り返るとQ1Aグループで小林が7番手で敗退し、「改めて『予選って本当に難しいな』と思いました」と、土居監督も肩を落としかけたというが、その直後にBグループの福住がトップ通過を果たし、「Bグループの結果を見た時に『これは行けるかな。仁嶺、良いところにハマっているな』と思いました」と、良い流れに向けることができたという。
「Q2も自信を持って行っている感じだったので『大丈夫かな』と思いましたけど、あれだけ僅差の結果を見ると、改めてスーパーフォーミュラは凄いなと思いました」
「富士スピードウェイというコースは本当に難しくて、今までなかなか結果が出ませんでした。Q1が良くてもQ2がダメになってしまうとか、何度もそういう経験をしてきました。だけど今回はQ2に向けてはタイヤを付け替えただけでいきました」
「あと今回は、仁嶺がすごく落ち着いていました。Q2の時もユーズドタイヤで最初にコースインせず、ニュータイヤをつけて、日向になるピット前に斜め出ししてタイミングを図りました。『バタバタせず、余裕を持っていきたい』と、すごく落ち着いていたのが良かったです」
これで“チーム初ポールポジション”という結果を達成したが、今度は“チーム初優勝”という目標が待ち構えている。
「15年かけて、ようやく一発の速さというところでトップを獲れましたけど、今回で言うと41周通しての速さは、まだ見せられていません。可夢偉は後ろからのスタートになりますが、レースはどうなるか分かりませんし、何とか優勝……できれば、チームでワン・ツーを獲れればいいなと思います」と土居監督。
実は、今大会にKCMGのチームオーナーであるポール・イップ氏も現場に来ているとのこと。土居監督は「(オーナーの)ポールを表彰台に上げる……これが、僕の一番の願望です。ここまで僕たちを信じてくれて、(チーム運営に関して)何も文句や口出しもせず、ましてや自分が乗るわけでもないのに、ずっとお金を出し続けてくれる。だから、最初はオーナーである彼に登壇してほしいと思っています。明日は、オーナーが登壇できるように頑張ります!」と、意気込みを披露した。
■松田次生アンバサダー「正直、ウルッときました」
もうひとり、チーム初ポールポジションで満面の笑みを見せていたのが、松田次生アンバサダーだ。
「本当に『やっと……』という感じですね。(ポールが決まった時は)正直、ちょっとウルッときました。自分が乗っているわけではないのに『こんなにウルッと来るんだ』と思いました」と松田アンバサダー。
前回の富士合同テストから、チームのエンジニア体制を微調整し、田坂泰啓エンジニアが8号車を担当。松田アンバサダーと協力してマシンのセットアップを進めてきた。
松田アンバサダーは田坂エンジニアを信頼している様子で「合同テストから体制を変えて田坂エンジニアが8号車側についてくれました。ここまで苦しいと思う場面もあったと思いますけど、(このポールポジション獲得で)本人もすごく自信になったと思います」と感慨深い表情をみせた。
予選での結果は喜ばしいものである一方で、最大の勝負となるのは日曜日の決勝レースであることは間違いない。そこについて松田アンバサダーは「このままの流れでいってくれれば、ロングも悪くないと思います」と、前回のテストデータを含めて自信をみせていた。
「今まではテストでロングランをやったことがなかったのですけど、この前の富士テストで1日目にロングをやりました。そこのデータもあるので、いけるのではないかなと思います」
「あとは、こういうトップをとった時は、タイヤ交換をするメカニックにプレッシャーがかかってしまうので、彼らにプレッシャーをかけないような流れに持っていくのも大事です。そこはうまくみんなが回るようにしたいですし、あとは戦略面でも、ポールスタートの戦略をしっかりと出せるようにしたいなと思います」
松田アンバサダーは、基本的に複数台のタブレット端末で公式アプリ『SFgo』を起動し、リアルタイムでライバルの動向をチェック。それに対して各号車に情報を伝えている。
「(戦略に関しては)最終的に田坂エンジニアと相談しながら決めていきますし、何といってもドライバーがタイヤの状況を一番知っているので、そこも聞きながらやっていきたいです」と、松田アンバサダーは早くも決勝レースを見据えていた。
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