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ロータリーエンジン搭載バイク【バンビーンOCR1000】漫画『熱風の虎』にも登場した70年代モンスターマシンに乗る

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ロータリーエンジン搭載バイク【バンビーンOCR1000】漫画『熱風の虎』にも登場した70年代モンスターマシンに乗る

バンビーンOCR1000が搭載するのは「2ローターで996cc」のロータリーエンジン、最高出力は100ps

私(1966年生まれ)世代のライダーでバンビーンの存在を知っている人は、おそらくバイク漫画『熱風の虎』の影響を少なからず受けているのではないだろうか。私が小学生のときに少年ジャンプに連載されていたその漫画には、当時の花形モデルであるMVアグスタ750SやBMW R100RS、モトグッチ・ルマンなどが続々と登場し、折しもスーパーカーブームと連動して私の記憶に深く刻まれた。なかでもバンビーンは、ミュンヒ・マムートと並びその頂点に君臨するモデルとして描かれており、何も知らない純粋な少年の心を鷲づかみにしたのであった。

【画像15点】熱風の虎で知った人も多い!?「バンビーンOCR1000」貴重なロータリーエンジンバイクを写真で解説

とまあ、それほどまでに強烈な印象を与えたこの漫画の内容を、実はさっぱり覚えていない。内容は覚えていないけれど、バンビーンの孤高とも言える存在感だけが心にとどまっていたようである。

初めて見るバンビーンの実車も、存在感たっぷりだった。カワサキ Z1000Mk-IIやZ-FX系にも似た角張った燃料タンクやテールカウル、メーターまわりには至ってオーソドックスなバイクという印象を受けるものの、半面巨大な2ローターのエンジンの造形は、モンスターマシンにふさわしい一種異様なまでのオーラを放っている。フル装備で350kg近い重量と、日本に実動する同車がこの1台という現実が相まって、メインスタンドを降ろすだけでも神経が張り詰める思いである。

(エンジン説明)
■ルクセンブルク大公国・コモーター社製2ローターのロータリーエンジンを搭載。コモーターは1967年5月にNSUとライセンス契約を交わしており、本家NSUとヴァンケル社を除くと、世界で16番目のメーカーとなる。このロータリーエンジンはシトロエン製の4輪車に使われていたもので、水冷で吸気はペリフェラルポートだ。無論、補機類のほとんどはOCR1000用に新規開発している。おむすび状のマークロゴ部分がエキセントリックシャフト位置になり、ロゴが入るカバー内は無接点式点火装置のユニットが収まる。その上に伸びた部分はベルト駆動のウォーターポンプ。このあたりの構造が4輪用からの転用であることを伺わせる。

2ローターのエンジンフィールは「振動もなく抵抗もない、軽やかな回転感」

この車格に対して、頼りないほど幅の狭いハンドルバーに不安を抱きつつ発進すると、スロットルをひねる度に2サイクル車のような白煙が舞い上がっていることがバックミラーで確認できる。一般的な4サイクル車よりもフライホイールの存在感を感じさせないのは、バンビーンがフライホイールをエンジンと逆回転させていることもあるのだろうけれど、抵抗感のまるでない軽やかな回転上昇、そしてスロットルを戻したときのエンブレの少なさや滑空感は、4サイクル多気筒の滑らかさと2サイクルの高回転に向かって弾けるようなフィーリングを併せ持つ独特なもの。これがロータリーか……。

ただ、試乗車が完調ではなかったのだろうか(動くだけでもスゴイことなのだが)、漫画みたいな圧倒的なパフォーマンスで私を驚かせるまでには至らない。もっとも、このバンビーンが製作されたのは1977年。今日ほどバイク造りのノウハウが確立されておらず、ロータリーエンジンに限らずターボ車など様々なトライ&エラーが繰り返されていた時代である。

そうした背景を考えると、バンビーンを世に送り出すための開発陣の苦労や情熱は、前例がないだけに相当なものだったはず。その辺りもバンビーンの魅力となって、ファンやオーナーの琴線に触れるのだろう。それに同車のしっかりした車体による確かな走行感は、時代を先取りしていたのではないだろうか。車重を感じさせないと言えば誇張になるが、今日のリッターバイクと同じ感覚で扱える点にも感心したのである。

バンビーンOCR1000の各部を写真とともに解説

■エンジン右側、おむすび状マークロゴのカバー内は発電系コイルが収まる。そのさらに奥、角張った大きく平たいカバー内にはフライホイールが入り、その周囲のリングギヤをカバー左上に付くセルモーター(黒い部品)が駆動する。

■ソレックス製2バレル1ステージキャブはタンク下、エンジン前方に付く。同車の吸排気レイアウトを見ると、ローターは車輪と逆回転することが分かる。

■エンジン下部を前方から見たところ。エキパイが生えるふたつの白っぽい部分がローターハウジングで、それらの間の黒っぽい部分がインターメディエイトハウジング。

■シート下は電装系部品がところ狭しと押し込まれている。リヤフェンダー上のヒューズは6系統。グレーの小さな角形部品はリレー類のようだ。

■メーター類はすべてバンビーン社ロゴが入る専用品。中央の小径のメーターはエンジンオイル量を示す。

■右サイドカバー内の部品はこんな配置。バッテリー手前、左からウインカーリレー、セルモーターリレー、ダイオードボードである。

■ブレーキは伊・ブレンボ製で他メーカーでも使用していたものだが、バンビーン社ロゴが入ったフォークアウター、社名が入ったホイールはOCR1000専用品。

■最終駆動はシャフト。シャフトが通るスイングアーム、ファイナルギヤユニット、そしてホイールまで専用品。ファイナルはオプションで高速寄りのギヤも用意。

バンビーンOCR1000主要諸元

■エンジン
水油冷2ローターRE  排気量996cc  圧縮比9.0  吸気方式ペリフェラルポート 燃料供給装置ソレックス製32mm 点火方式トランジスタ 始動方式セル

■性能
最高出力100ps/6500rpm 最大トルク13.8kgm/3500~5000rpm 最高速度200km/h以上

■変速機
4段リターン 変速比1速2.53 2速1.61 3速1.10 4速0.88 一次減速比— 二次減速比2.66

■寸法・重量
全長2190 全幅850 全高1160 軸距1525 最低地上高—─ シート高830(各mm) キャスター── トレール—─ タイヤサイズF3.50-V18 R130/80-V18 車両重量345kg

■容量
燃料タンク22L オイル2.0~3.3L

■発売当時価格
2万4198独マルク/355万円(輸入時参考)

文●縞田行雄 写真●小見哲彦 編集●阪本一史

*当記事は八重洲出版『別冊モーターサイクリスト』2011年11月号の記事を再編集したものです。

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みんなのコメント

6件
  • Love8月
    スズキもロータリーのバイクを出していましたよね、RE-5だったかな?500ccくらいのバイクで1ロータリーのバイクでしたよね?
  • dar********
    「別冊モーターサイクリスト」に出ていたのを見ました。喫茶店のオーナーがミュンヒとバンビーンを買って店に飾っているという記事だった。2ページ見開きの写真にオーナーの詩を載せていた。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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