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シトロエン2CV + ルノー4 世界で愛されたフランスの大衆車 上級志向の2台 前編

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シトロエン2CV + ルノー4 世界で愛されたフランスの大衆車 上級志向の2台 前編

初めから完璧なレシピだった2CV

フランス人は、市民の大衆車を芸術の域にまで高めた。その先頭を突き進んだのが、実用的でありながら、優雅とさえ感じるデザインのシトロエン2CV。その成功に刺激され、ひと時代を置いてモダンなルノー4(キャトル)が続いた。

【画像】シトロエン2CV AZAM6とルノー4L 最新マイクロカーのアミに、ルーテシアも 全102枚

画期的といえたシトロエンの2CV、「ドゥ・シュヴォ」が姿を見せたのは1948年。シンプルでありながら実用的。質素でありながら快適な乗り心地。初めから、レシピは完璧なものだった。

それから13年後の1961年、ルノーは成功のレシピを独自に展開。パッケージを煮詰め直し、ベストセラーを生み出した。

キャトルも、間違いのない結果を残した。だが、2CVという偉大なライバルも消えずに残った。とりわけ1965年1月にベルギーで誕生した、AZAM6という上級志向のモデルは、強くルノーが意識されていた。

木漏れ日の中を、クリーム色のルノー・キャトルが走る。愛らしいルックスへ見とれていると、空冷2気筒エンジンが放つ、威勢の良い鼓動が周囲を満たし始める。AZAM6のオーナーは、集合場所を間違えたらしい。

2CVが、遅れを取り戻そうと必死に走ってきた。シンプルなシャシーと非力なエンジンが組み合わされているが、驚くようなスピードで、のどかな丘陵地帯を駆けてくる。カーブでは、遠心力と戦うようにボディが傾く。見た目からは想像できない運動能力だ。

2CV以上のクルマへの需要

彼のAZAM6は、フランスの農民たちに戦後から愛された、2CVの直系子孫に当たる。オーナーのジェイソン・ソープ氏は、流石にリアシートへ朝摘みオレンジが詰まった木箱や、産みたての卵が並んだバスケットを積んでこなかったけれど。

補強のリブが入ったボンネットに、ハンモック状の2列シートを採用していた初代。時代が進み自動車市場が変化していくなかで、生産終了までの40年間以上、2CVらしい特徴が変わることはなかった。

発表直後、ベーシックながら優れたシャシーが支持され、2CVは大ヒット級の人気を集めた。耕したばかりの畑でも柔軟にタイヤを上下させる、ロングトラベルのサスペンションが自慢だった。

フランスの道路網は、当時まだ充分とはいえず、オンロードでもその能力はいかんなく発揮された。エンジンはメンテナンスが容易な、375ccの空冷2気筒。少々回転に荒っぽさはあっても、信頼性に不安はなかった。

そもそも、安価で活発に走る個人の移動手段は、医者からの要望だったといわれる。しかし、徐々に経済活動が回復していくと、2CV以上のクルマへの需要が高まっていった。

戦後の緊縮的な空気を反映するように、2CVは極端といえるほどに簡素。しかも、呆れるほど遅かった。エンジンは途中で425ccへ大きくなるが、眠気を誘う加速は変わらず。100km/hなど、夢のスピードだった。

ワゴンボディに水冷4気筒エンジン

そんな嗜好の変化へ沿うように、ルノーは独自のパッケージングを練った。実用性や経済性を損なうことなく、より上級で現代的な要素も取り入れることが目指された。

1961年10月、2CVのユーザー層へ働きかけるべく、ルノーのディーラーにキャトルが並んだ。ボディとシャシーが分かれたセパレート構造に、前輪駆動。サスペンションは、前後ともに独立懸架式を採用していた。

ボディは、空間効率に優れたワゴンタイプ。農場での利用にも理想的な、大きな荷室を備えていた。

キャトルのもう1つの強みが、747ccの水冷4気筒エンジン。2CVより上質に回り、ノイズも遥かに静かだった。フランス政府が敷設した真新しい高速道路にも、不満なく対応できた。自国を超えて、世界の人々が新しいルノーへ夢中になった。

キャトルの生産台数が2CVを超えた1963年、シトロエンはAZAM仕様を発表。それに対抗した。

シトロエン・アミ6用のハブキャップに、新しいフロントガラス・フレーム、丸いドアハンドル、クロームメッキ加工のヘッドライト・アクセントやワイパーアームを採用。上級に仕立てることで、イメージチェンジを図った。

見た目で最も特徴的なのが、前後バンパーに付けられたループ状のオーバーライダーだ。「わたしは、ベターなインテリアとプラスティック製のステアリングホイールが、ポイントだと思いますよ」。と、オーナーのソープが話す。

「ルノーと争うように、1963年には18psの425ccエンジンも導入されています」。AZAMは、よりモダンでクラス上のシトロエン・アミとのギャップを埋めることにもなった。

最も上流意識が強いベルギー仕様のAZAM6

最も上流意識を表す2CVが、アミ6用のフロアパンと602ccエンジンを流用した、ベルギー仕様のAZAM6だろう。ソープが続ける。「発売は1965年。ベルギーやオランダ(ネーデルラント)、スイスのシトロエンによる、コラボレーションです」

「スイス向けにベルギーで製造されましたが、オランダでも高い人気を誇りました。697台がドイツへ輸出されたほか、北欧にも渡っています。スウェーデンやノルウェーでも、まだ元気に走る姿を目にしますね」

「その後、ベルギーの工場は2CVを改良したディアーヌと、バンの生産へシフト。AZAM6の生産は1967年後半に終了しています」

そんなAZAM6だが、実物を見れば、上級という表現が過大だと思わざるを得ない。ステンレスやクロームメッキが輝いているものの、少し離れると、それ以外の2CVとほとんど見分けがつかない。おそらく、オーナーズクラブの人でも。

反面、実際にステアリングホイールを握ると違いは歴然。26psを発揮するエンジンが、ずっと運転しやすいクルマにしている。

俊足と呼ぶには、まだ及ばない。ダッシュボードから伸びるシフトレバーを前後に動かす4速MTはリモート感が強く、丁寧にシフトチェンジしなければ内部を傷めてしまう。だが、速度が増すほど全体が良くなっていく。

しなやかで、信じられないほど伸長するサスペンションが活きてくる。目を疑う速度でのコーナリングも、確かに可能だ。

この続きは後編にて。

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