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東京ナイトクルーズで煌めく「ロールス・ロイス カリナン」の世界 【Playback GENROQ 2020】

掲載 更新 1
東京ナイトクルーズで煌めく「ロールス・ロイス カリナン」の世界 【Playback GENROQ 2020】

Rolls-Royce Cullinan

ロールス・ロイス カリナン

ビッグマイナーチェンジで深みを増したベントレー ベンテイガ。数値では測れない熟成度を確かめる

夜、東京、宝石。カリナンの世界観を見る

世界最大のダイヤモンドに由来する車名を持つカリナンはロールス・ロイス初のSUVである。
彼らがハイ・ボディド・ビークルと主張する、ニューモデルの乗り味を夜の東京で確かめた。

「ロールス・ロイス大躍進の立役者となったカリナン」

直近で発表されたロールス・ロイスの2019年1~9月期の販売台数は前年同期に対してなんと42%増の3777台。つまり年間販売5000台の大台も窺えるところにいるという。大躍進の立役者は言わずもがな、このカリナンだ。本格的なデリバリーが始まったのは今年だが、カスタマープロファイルや年齢層もこれまでのモデルとは異なっており、それはロールス・ロイスにとって好影響となっているという。

アメリカと軽井沢で行われた試乗会に次いで、3度目の試乗となったカリナン。その舞台は東京や横浜の都市部だ。性能面での一番大きな差異は履いているタイヤがサマータイヤ(コンチネンタル・スポーツコンタクト5)になったこと。以前の2回は仕向地や気候の関係でウインタータイヤを装着していた。

「SUVらしいモダンさとスポーティネスから導かれたデザイン」

平穏な日常風景にぬっと現れたカリナンの姿は多くのクルマを見慣れた目にもやはり異質だ。全長5340×全幅2000×全高1835mmという、その三寸はベントレー ベンテイガやキャデラック エスカレードにほど近いものの、長さではそれらをひと回り上回っている。その大きさも相まってか、ロイヤルパープルをイメージしただろうボディカラーを差し引いても、カリナンの路上での注目度は相当なものだった。

乗る側は果たしてその巨体がどう見えているかについては、水平の強いボンネット&フェンダーと立てられたAピラーという古風な組み合わせのおかげで、前方視界側の見切り感は実にすっきりしている。欲を言えばファントムのようにフェンダー上縁がリブ化されていれば全幅がカッチリと認識できそうだが、デザイナーの話では、SUVらしいモダンさとスポーティネスからこの形状になっているという。対して後方側はそもそもの車格やクォーターピラー形状もあって形状把握は簡単ではないが、当然ながらカメラ&ソナーシステムはもれなく装着されているので不自由はない。

「日常的な速度域で接する限り、ゴースト以上でファントムにも迫る快適性」

オンロードタイヤを履いた日本での標準仕様においては、セルフセンタリング性が気持ち強くなった印象で、交差点や駐車場での取り回しの際には操舵から直進状態への戻りが明快になったように思える。また、タウンスピードでは僅かながら凹凸に対する反応が伝わりやすくなってもいる。ただしロードノイズの質量は低く小さい。

これらを鑑みるに、高速域での運動性能はある程度割り切り、操作に対する有機的な反応と滑るような乗り味を重視するならオールシーズン系のタイヤを敢えて選択する意味はあると思う。が、これは基本的な乗り心地と静粛性のレベルがそもそも同業他車とは別次元にあるがゆえの、重箱の隅的な話でもある。街中から首都高へと、日常的な速度域で接する限り、ゴースト以上でファントムにも迫る快適性というカリナンへの印象は変わらない。

「タイトコーナーが続く首都高でも、ドライバーは自信をもってそこに臨める」

首都高のような車線の狭い道路でのライントレースはさすがに気を遣うが、操舵応答は明快に躾けられており、微妙な修正も素早く反映してくれる。もちろん今日びのスポーティなSUVほど締め上げられてはいないものの、平時の浮遊感たっぷりの乗り心地を思えば望外にロール感も抑えられており、乗員や荷物が不用に揺すられることもないのはさすがだ。ステアリングはリムが相変わらずの細径で繊細な入力を入れやすい点は素晴らしいが、送りハンドルの必要もなくスポーツカーのように力むこともないカリナンの運動性を思うに、一番握りたくなる9時15分付近がボタン付きの太いスポークで占められているのは些か残念だ。

カリナンのキャラクターが掴めてくればこの大柄な車体を手の内に収めるどころか、軽快に走らせることも無茶な話ではないだろう。タイトな曲率のコーナーが続く首都高のような場面でも、ドライバーは自信をもってそこに臨めるはずだ。

「性能でも設えでも、クルマは果たしてどこまで工芸的な万能化を遂げるのか?」

想像を覆す旋回力の高さと安定感の源は、アルミスペースシャシーの素性に加えて通常50対50というフルタイム四駆の駆動制御の巧さにある。コーナーにおいて前輪側の駆動の存在感は安定のためにやや強めに現れるが、そこからアクセルを踏み込めば慎重にリヤ側へと駆動配分を移し旋回のためのヨーを自然に車体に与えていく。ともあれ乗員にその存在を気づかせない。ノイズや振動を含め、カリナンの四駆システムは徹底的に黒子化している。

リムジンを選んで後席に座るという様式美は偽りなくあり続けるべきだといちクルマ好きとして思う。が、そんな自分でさえ、カリナンに乗ると思い浮かぶのは陸王という言葉しかない。性能でも設えでも、クルマが果たしてどこまで工芸的な万能化を遂げるのかについて、カリナンは模範解答を示しているように思う。

REPORT/渡辺敏史(Toshifumi WATANABE)
PHOTO/篠原晃一(Koichi SHINOHARA)

【SPECIFICATIONS】

ロールス・ロイス カリナン

ボディサイズ:全長5340 全幅2000 全高1835mm
ホイールベース:3295mm
車両重量:2660kg
エンジン:V型12気筒DOHCツインターボ
総排気量:6748cc
最高出力:420kW(571ps)/5000rpm
最大トルク:850Nm(86.7kgm)/1600rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前255/50R21 後285/45R21
最高速度:250km/h(リミッター作動)
環境性能(EU複合モード)
燃料消費率:15.0L/100km
CO2排出量:341g/km
車両本体価格:3920万円

※GENROQ 2020年 1月号の記事を再構成。記事内容及びデータはすべて発行当時のものです。

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みんなのコメント

1件
  • あんまりカッコよくはないが、大都市でこれみよがしで乗り回すには悪くない。
    ロールスロイスから街を見下ろしながら流す。気分いいだろなぁ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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