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値上がり必至!? 日本の軽自動車がEVになった時に価格はいくらになる?

掲載 更新 44
値上がり必至!? 日本の軽自動車がEVになった時に価格はいくらになる?

 日本の自動車メーカーによる軽自動車規格の電気自動車(EV)は現在、三菱のi‐MiEVが生産終了しており、軽商用のミニキャブMiEVが販売されているのみになっている。

 しかしながら、日産は新型軽EVの投入が予定されていて、ホンダは軽EVが電気自動車普及のカギになると社長が明言。スズキはインドで軽EVを発売するという報道があるなど、最近は軽EVの話題がいろいろ出てきている。

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 ただ、EVとはいっても軽自動車の場合は、特に地方では生活の足として使われているだけに重要になってくるのが価格の安さだろう。軽自動車がEVになった時に、価格はいくらくらいになるのだろうか?

文/御堀直嗣
写真/日産、ホンダ、三菱自動車、テスラ、ASF、ベストカーWeb編集部

【画像ギャラリー】 日本の本格EV化は軽自動車から!? 各社や新興勢力の動きに要注目だ!!

■最近軽EVに関する話題が増えてきた理由とは?

 軽EVの動きが、目につくようになってきた。

 2年前の東京モーターショーにコンセプトカーで出展した日産自動車は、軽EVを2022年度初頭に発売することを8月27日に発表した。三菱自動車との共同プロジェクトのNMKVで開発している軽クラスEVとなる。

 三菱は、i‐MiEVで軽EVの経験を10年以上持ち、現在なお軽商用とはいえミニキャブMiEVの販売を続けている。

三菱自動車が販売する日本で唯一の軽EV「ミニキャブMiEV」。i-MiEV譲りのシステムを搭載し外部給電も可能だ。ネックは240万円~の価格と150km(JC08モード)の航続距離だろう

 スズキは、インドでの話だが、100万円台を目指した安価なEVを25年に導入する道を探っているとの報道があった。原価を抑えたEVを製造できれば、日本での軽EVも視野に入ってくるのではないか。

 スズキと永年の競合であるダイハツは、かつて鉛酸バッテリーの軽EVを通じ国内でもっともEVを販売してきたが、2005年頃に組織が解体され、代わりに軽販売でスズキを抜き1位を得たが、EV開発では後れを取っている。

 ホンダの三部敏宏社長は、2024年に向けた軽EVの導入を進めていると表明した。

 ほかに、宅配便大手の佐川急便は、配送車として7200台の軽商用EVを導入する。台湾の企業家である蕭偉城(ショウ ウェイチェン)率いるHWエレクトロは、年内に軽自動車規格に合致する商用EVの導入を公表し、数年のうちに新型の軽商用EVも導入する計画を明らかにしている。

 国内におけるEV比率は1%にも満たない状況だが、ホンダの三部社長は「EVを広めていくうえで鍵を握るのは軽自動車だろう」と述べた。

■軽EVが成立するカギはコストと用途に合わせたバッテリー容量の選択にある

 では、どのような軽EVが考えられ、その車両価格はどれくらいになるだろうか。

 EV価格を決定づけるのは、リチウムイオンバッテリーの原価だ。

 象徴的なのが、米国テスラのモデル3が日本市場において今春約80万~150万円も値下げしたことである。中国・上海にギガファクトリーが完成し、しかもモデル3の専用バッテリー工場であることから、単一製品を大量生産することで値下げを実現した。

EVのコストで多くを占めるのがバッテリーだ。テスラがEV普及のため、自前でバッテリー工場を建設してコストダウンを進めている。その結果もありモデル3の日本価格が最大150万円下がった

 EV化を明確にした自動車メーカーは、テスラのようなギガファクトリーの建設を世界的に行う投資をはじめている。バッテリーは、ワッセナー協約(かつてのココム)の対象品目で、自由に輸出入できないからだ。

 ドイツのフォルクスワーゲン(VW)は240ギガWh(ワット・アワー)、FCAとPSAが合体したステランティスは260ギガWhの工場建設を計画し、それは400万~500万台分のEVに相当する規模になる。さらにVWは、安価な車種も視野に、リチウムイオンバッテリーの電極材料を原価に合わせて変える計画も持っている。

 そこから軽EVの原価低減を探るなら、販売台数を明確にすることで見えてくるリチウムイオンバッテリーの確保が基本だ。バッテリーメーカーは、生産規模が見えることで原価低減に協力できる。

 規格を揃えたバッテリーであることも重要だ。リチウムイオンバッテリー購買の戦略が整わなければ、軽EVの道は見えてこない。

 次に、リチウムイオンバッテリーの搭載容量を明確にする必要がある。車載容量が増えれば一充電走行距離を伸ばせるが、一方で大容量になるほど原価上昇を招く。この点について、二つの視点が考えられる。

 ひとつは、ホンダeは都市型EVを目標として長距離移動を二の次と考え、バッテリー積載容量を抑えた。評論のなかには〈一充電走行距離が短く実用的でない〉との声もあった。しかし都市で使うEVとして合理的な走行距離は満たしている。

昨年登場し話題となった、ホンダe。街乗りを前提としたEVとして開発したため、航続距離は300kmに満たない。セカンドカー用途で考えれば充分だが、それで450万円~という価格は高価か?

 この着想は、同じく都市での利用が多いと見込まれる軽EVに必要なバッテリー車載量の参考となるはずだ。

■軽商用バンでは、電池の搭載量を少なくし、低コストなモデルの開発が進む

 もうひとつは、佐川急便が購入を予定する中国生産の軽商用EVや、米国製品をもとにしたHWエレクトロのような、軽商用EVから手を付ける段取りである。

日本のEVベンチャーASFが車両を企画し、中国で生産される佐川急便専用の軽EVバン。従来の常識にとらわれた車両企画ではコストが高く、中国勢にその隙を狙われる状況になりつつなる

 ラストワンマイルといわれる軽商用バンでの配達は、一日の走行距離の目安が付けやすい。たとえば100kmで足りるなら、それに必要なだけのバッテリー容量を計算すればいい。

 長距離移動が必要なときは、途中で急速充電すればいいだけだ。容量の少ないバッテリーであれば、短時間で80%近い充電を済ませられる。急速充電は、30分待たなければいけないわけではない。バッテリー容量に応じて、あるいは目的地への距離によって、必要な分だけ短時間で充電すればいい。

 HWエレクトロの蕭(ショウ)社長は、軽商用EVの採算分岐点は、「1kmで1万円」ではないかと述べている。100kmの一充電走行距離が必要なら、100万円となる。

HWエレクトロの小型EVバン「エレモ」。全長が軽自動車規格を500mm程オーバーのため、小型商用車登録だ。軽自動車規格に合わせたモデルも開発中だ。価格は約220万円~330万円

 これは、ミニキャブMiEVを持つ三菱のガソリンエンジン車のミニキャブでもっとも安い98.67万円(5MT)に近い金額だ。一般社団法人日本物流団体連合会によれば、約50kmでも活用できるとの話もある。そうなれば、もっと安くすることも視野に入る。

 そのうえで、EVの電気代はガソリン代の半分以下になる。ミニキャブバン(5AMT)とミニキャブMiEVの比較で、1km走行するのにかかる燃料代は、ガソリン(1L:150円)が7.73円、電気代(1kWh:30円)が3.81円と試算でき、半分以下だ。

 またオイル交換は不要で、ブレーキパッドも回生を使った運転をすればほとんど交換せずに済むのではないか。軽商用EVは運航経費が安く上がるだろう。

 軽商用EVを手始めに、バッテリー搭載量と、確実性の高い販売台数が決まれば、リチウムイオンバッテリー購買の基礎が固まる。

 そこから乗用の軽EVを考えたとき、「1kmで1万円」が成り立てば、200万円前後の車両価格と仮定した場合、一充電走行距離を伸ばすほう、あるいは装備の充実などに原価を充てることが考えられる。

■街乗りと用途を限定し、機能を厳選すれば価格を抑えた軽EVが登場可能だ

 装備面では、空調の学会で車内の空気を冷暖房するエネルギー消費の無駄を検討しており、暖房については、既存のEVでもシートヒーターやハンドルヒーターといった体を直接温める方法が広がりつつある。エアコンディショナーに比べ10分の1の電力消費で済むからだ。

 また小型車を中心に、室内の天井にエアサーキュレーターを取り付ける動きがあり、これとエアコンディショナーを連携させると、室内温度を効率よく調節できる。

 限られた電力でいかに快適性を確保し、省電力にできるかは、単に動力の効率化だけでなく、一台のクルマの商品性を高めながらEV化を実現する新たな開発の仕方となる。ゼロからの新車開発の挑戦として、軽EVは最適な素材だ。

日産が発売予定の軽EV。補助金を利用すれば200万円で購入可能との情報も入ってきた。航続距離はWLTCモードで150km程度。街乗り前提であれば、充分な性能ではないか?

 既存の軽乗用車も、ターボ車となれば200万円を超える車種がある。購入後の電気代や整備費の安さを視野に入れながら、200万円プラスαが軽の乗用EVに興味を抱かせる上限ではないか。

 なお、来年登場予定の日産と三菱のNMKVによる軽EVは、実質購入価格は約200万円からとなる見込みだとしている。

 付け加えると、スズキの初代アルトがボンネットバンとして47万円で売り出したように、営業車用や通勤用としてボンネットバンのEVを格安で用意できれば売れるのではないか。EVなら、廉価仕様でも充分快適で、動力性能も高いはずだ。

軽ボンバンの目指す手本はかつてのスズキ「47万円アルト」か。街乗り用途に限定すれば、電池搭載量や装備を抑えつつ、EVならではの動力性能や快適性も確保可能と一挙両得となるかもしれない

 車載バッテリー量と、あるべき軽EVの姿や標準装備を具体的に起草できるかが成否の分かれ目になる。既存のエンジン車にとらわれたり、頭(机上)で考えたりするだけでは、前へ進めない。

 具体的に検討できるのは、開発が最終段階に入っているであろう日産や三菱、そしてホンダeという現物を持つホンダではないか。他社は、リチウムイオンバッテリーの購買が何より難題だろう。

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みんなのコメント

44件
  • 頼むから、EV軽自動車に一台ごと何十万円もの補助金バラ撒くような愚策は避けてくれよな、日本政府!

    ただでさえコロナで財政困窮してんのに、例えば数兆円使って200万台の軽自動車をEVにしたところで、社会的には百害あって一理なしだから!
    って、庶民の気分転換だけでも人気取り・票になると思う政治家ならやっちまうかも、、、
  • 軽規格の崩壊か、排気量でクラス分けしていた自動車区分の抜本的な見直しに進むだろうね。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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