約12年ぶりに日本市場へ復活する三菱自動車の新型「トライトン」について、注目ポイントを世良耕太が徹底解説する。
ラダーフレーム構造を継続採用
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三菱自動車は7月26日、タイ・バンコクで1tピックアップトラックのトライトンをフルモデルチェンジし、世界初披露した。同時に、三菱自動車は新型トライトンを、タイを含むASEANやオセアニアなどでグローバル展開することを発表した。
注目すべきは日本市場での販売が含まれている点だ。2024年初頭の販売を予定しているという。本記事ではメカニズム面を中心に、トライトンの特徴を紹介したい。
今回発表されたトライトンは2014年以来、約9年ぶりのフルモデルチェンジ。三菱自動車のピックアップトラックとしては6世代目になる。起源は1978年に発売された「フォルテ」だ。ちなみに、このフォルテをベースにRV(現在でいうSUV)化したのが初代「パジェロ」だ。
日本では2006年から2011年までの間、2世代前のトライトン(3.5L・V6ガソリンエンジンと4速ATを組み合わせた仕様)が導入されたのみなのでなじみは薄いかもしれないが、三菱オフロード4WDの“原初”の姿を進化させながら受け継いでいるのがトライトンなのだ。
新型トライトンは、同型で採用例の多いモノコックボディではなく、ラダーフレーム構造を継続採用する。しかも、新型ではラダーフレームを新開発。断面積を65%増やし、曲げ剛性を60%、ねじり剛性を40%強化した。
これにより、路面から大きな入力が入ったときもフレームの変形が抑えられ、走行性能が向上。サスペンションが狙いどおりに機能しやすくなるので、乗り心地の向上も期待できる。また、フレームが強靱になったことで、積載時の耐久性が強くなるメリットもある。
フレームに載せるボディには新たに1180MPaのハイテン鋼(高張力鋼板)を採用することで、衝突安全性を担保すると同時に軽量化を図っている。
エンジンはディーゼルのみサスペンションはフロントにダブルウィッシュボーン式を採用、リヤはリーフリジッドだ。形式自体は前型を踏襲するが、これも新開発。フロントのダブルウィッシュボーン式は、アッパーウィッシュボーンをホイールの内側ではなく車輪の外側に配置するアッパーマウント式を採用。
配置自体は前型と同じで量産車としては一般的だが、アッパーアームの取り付け部を上方に20mm移動し、ストローク量を20mm増やしている。これにより接地性と乗り心地の向上を果たす。
リヤはリーフスプリングの強度を維持しながら軽量化。ショックアブソーバー(ダンパー)を大径化することで容量を増やし、乗り心地の向上を狙っている。
エンジンは2.4L・直列4気筒ディーゼルを搭載。“新開発”との説明だが、型式名は「4N16」と発表されているので、実体は前型トライトンが搭載していた4N15のアップデート版だろう。
圧縮比は4N15の15.5から15.2に低められている。最高出力/最大トルクは3タイプ設定されており、新型ターボチャージャーと新燃焼システム(詳細不明)を採用した高出力仕様は150kW/3500rpmの最高出力と470Nm/1500~2750rpmの最大トルクを発揮。残り2タイプは標準仕様に位置づけており、最高出力/最大トルクはそれぞれ、150kW/430Nm、110kW/330Nmだ。
縦置きに搭載されるエンジンの後方に配置されるトランスミッションは、全エンジン仕様で6速ATと6速MTを設定。日本国内に投入するエンジン仕様とトランスミッションについては発表されていない。
古典的な技術に最新技術をプラス4WDシステムは、3代目パジェロ(1999年登場)のシステムに起源を持つ「スーパーセレクト4WD-II」を搭載する。駆動方式の切り換えをいったん停車しておこなう必要がなく、走行中に行うことができるのがスーパーセレクト4WD-IIの大きな特徴だ。
駆動モードは4種類。後輪駆動の「2H」、フルタイム4WDかつ前後の差回転を許容する「4H」、センターデファレンシャルを直結し、前後の差回転を許容しないリジッドの「4HLc」、センターデフ直結かつローギヤの「4LLc」だ。
ドライブモードは多彩で、「NORMAL」はすべての4WDモードで選択が可能。2Hには経済性を重視した「Eco」を設定。4Hに「GRAVEL(未舗装路)」と「SNOW(氷雪路)」、4HLcにはトラクション性能を引き出す「MUD(泥濘)」と「SAND(砂地)」、4LLcには「ROCK(岩場)」のモードを設定する。
新型トライトンにはスーパーセレクト4WD-IIよりもシステムが簡便なイージーセレクト4WDも設定され、こちらは後輪駆動の「2H」とセンターデフ直結の「4H」、センターデフ直結かつローギヤの「4L」が選択できる。国内に導入されるのは、高機能版のスーパーセレクト4WD-IIだろう。
スーパーセレクト4WD-IIには、「アクティブヨーコントロール(AYC)」も採用された。AYCは旋回中に内輪側前輪に弱くブレーキをかけることでヨーモーメント(車両の重心点を中心に自転する動き)を発生させ、旋回性を向上させる技術だ。
また、空転している車輪にブレーキをかけることで、路面をグリップしている車輪に駆動トルクを分配し、雪道など滑りやすい路面での走破性を向上させるアクティブLSD(ブレーキ制御タイプ)を採用。新型トライトンは古典的な技術に最新技術をプラスし、走行性能を高めている。
先進安全装備にも抜かりはない。新型トライトンでは先行車の加速・減速・停止に追従走行し、設定した車間距離を保ちながら走行するレーダークルーズコントロールシステム(ACC)を新搭載したのが目玉。スマートフォンと連携した操作によって燃料の量やオイルの状態を確認したり、リモート操作によって乗車前にエアコンを作動させたりすることも可能で、日常使いの利便性が大きく向上している。
新型トライトンに投入された技術からは、ピックアップトラックに求められるタフな性能を向上させつつも、走行機能や快適性に安全性、利便性の向上にも力を入れた力作であるのがわかる。三菱自動車の最新の技術力を結集したモデルであることは間違いない。
2024年初頭と予告された日本市場導入の日が楽しみだ。
文・世良耕太 編集・稲垣邦康(GQ)
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みんなのコメント
できればエンジンは3.0位にして
2.4はターボ効くまでナメクジ