軽より小さい、3つの選択肢
執筆:Hajime Aida(会田肇)
【画像】宏光ミニEVのバッジエンジニアリング車【EUで一番安いEV】 全8枚
今、日本で新たなカテゴリーの自動車に注目が集まっている。それが、超小型モビリティだ。
国土交通省はこれを「自動車よりコンパクトで小回りが利き、環境性能に優れ、地域の手軽な移動の足となる1人~2人乗り程度の車両」と定義。
つまり、超小型モビリティとは、軽自動車よりも小型で数人が乗れる“ご近所グルマ”として新たに設けられたカテゴリーなのだ。
道路運送車両法に基づくと、超小型モビリティは第一種原動機付自転車(ミニカー)、軽自動車(認定車)、軽自動車(型式指定車)の3つに区分されている。
たとえばコンビニなどが配達用として使っているトヨタ「コムス」は、この中の「ミニカー」に相当。
「認定車」は軽自動車の大きさ(全長3.4m以下、全幅1.48m以下、全高2m以下)よりも小さい車両で、地方自治体などが定めた「交通の安全と円滑を図るための措置を講じた場所」に限って、公道での走行ができる。
超小型モビリティは「型式指定車」に区分される車両で、2020年9月1日、道路運送車両法施行規則の一部が改正されて新たに定義付けされた。
高速道路を走れない?
「型式指定車」のボディサイズは、全長2.5m以下、全幅1.3m以下、全高2m以下で、乗車定員は4名。
最高速度は時速60km以下とし、高速自動車国道または自動車専用道路などを“運行しない”ことが条件となっている。
なお、車両の安全対策として、時速40kmでの前面衝突試験を行うなどの衝突安全基準も設けられている。
パワーユニットに縛りはないが、これまでに開発が進められている車両は基本的に電気自動車(EV)であり、すでにトヨタは2人乗りの小型EV「C+pod(シーポッド)」を開発済みで、来年にも一般販売する予定になっている。
さらに出光興産がタジマモータースと組んで4人乗りの車両を計画。
日本発のEVベンチャー企業である「FOMM(フォム)」も日本国内での販売を目論んでいる。
気になるのはそのスペックだろう。
現在、販売されているEVの多くは航続距離を伸ばすためにフロアいっぱいに多くのバッテリーを積む。航続距離の長さをウリとしているテスラでは東京~大阪間を充電なしに走り切ることを豪語しているほどだ。
そんな中で、最高速度60km/h未満で高速道路も走れないこのEVを、いったい誰が買うのか。そう考える人は決して少なくないだろう。
しかし、それこそが超小型モビリティの狙いでもあるのだ。
本格EVには、数100kgのバッテリー
実はEVに搭載されるバッテリーはことのほか重い。
日産リーフの標準的な30kWhモデルでバッテリー重量は315kgとされ、テスラ「モデルS」では500kgを超える。
両車ともエネルギー密度ではニッケル水素電池などよりもはるかに高いものの、それでもガソリン車など内燃機関には敵わない。
つまり、航続距離を伸ばすために多くのリチウムイオン電池を積めば、車重が増し、それはエネルギーを消費する要因を作ることにつながるわけだ。
しかもバッテリーは高価でもあり、多くのバッテリーを積めばそれだけ車両価格に反映されてしまう。
それでも、ガソリン車などと比べて満足いく航続距離は得られていない。
リチウムイオン電池も徐々に進化しつつあるが、状況が大きく変わるのは次世代電池と言われる「全固体電池」の登場を待つしかないのだろうと思う。
そうした中で注目が集まるのが超小型モビリティなのだ。ポイントは“ご近所グルマ”として必要にして十分なボディサイズとバッテリーを搭載したことにある。
地域交通における自動車の利用実態を調べると、移動距離は10km以内が7割を占め、乗車人数も2人以下が9割以上を占めるとされる。
つまり、大半のユーザーにとって、現在販売されているEVはオーバースペックとも言えるのだ。
45万円EV、宏光ミニEVの普及
たとえばバッテリー容量は、前出のトヨタ・シーポッドで9.06kWhにとどまり、これはリーフの1/3以下でしかない。
しかし、バッテリー容量が小さければ重量も軽くて済むから、その割に航続距離はフル充電で150km(WLTCモード)を確保できている。
もちろん、バッテリーが小さい分、価格も安く設定できるようになるわけで、それは購入のハードルも低くなり、普及もしやすくなるだろう。
この参考になりそうな例が中国の五菱汽車が販売している「宏光ミニEV」(宏光:hong guang=ホンガンと読む)にある。
このクルマは昨年秋に“45万円EV”として中国国内で発売され、台数ベースではテスラを上回る販売を達成したことでも注目された。
この低価格を実現できた理由は、やはりバッテリー容量を小さくしたことにある。
標準仕様で9.3kWhと、ほぼ日本の超小型モビリティと同等レベル。バッテリー容量が小さいことや、急速充電に対応しなかったことも低価格化を実現できた理由だ。
ただ、日本の超小型モビリティと違って最高速度は高速道路も走れる100km/hとした。
さらに中国では、EVを「新エネルギー車(NEV)」として補助金の支給対象とし、宏光ミニEVにも適用される。
これが奏功してとくに所得がそれほど伸びていない農村部で圧倒的な支持を獲得。充電設備などのインフラ整備も推し進め、出掛けた先でも気軽に充電できるようにしたことも、普及に拍車をかけたと言えるだろう。
「すべてをEVに」が無理なら
こうして宏光Mini EVの普及が進むことで何よりも注目したいのが、脱炭素を目指す世の中のニーズにマッチしやすくなることだ。
バッテリーの容量を小さくしたことで、バッテリー生産時の二酸化炭素排出量も抑えられ、軽量なEVが街の中を多く走るようになれば、エネルギーの“消費効率”も飛躍的に上がっていくはずだ。
日本の超小型モビリティがそのまま当てはまることはないと思うが、この導入によって少なくともエネルギー消費効率は大幅に上がるはず。
コンパクトなボディは円滑な交通社会の構築を進められるし、駐車場などの場所も小型化することができる。
シェアリングサービスをはじめとしたMaaSに組み込みやすく、観光地などでも活躍する場面が多くなることは容易に想像できる。
今、世界的にEVシフトが叫ばれているが、すべてをEV化することは現実的に不可能だ。
現状のままでそれを推し進めれば、それこそ移動そのものを否定することにもつながりかねない。
長距離移動ではエネルギー密度が高い内燃機関エンジンを組み合わせるハイブリッド車(PHEV含む)を使い、近距離は環境負荷が少ない小容量バッテリーで済むEVを使ってラストワンマイルにつなげる。
それが現実的な対応なのではないだろうか。
そのためにも一刻も早く充電インフラを整備を進め、普及したときの“充電難民”を生まないような施策を望みたいと思う。
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みんなのコメント
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