「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、スバル インプレッサ WRX STI スペックCだ。
スバル インプレッサWRX STI スペックC(2010年:車種追加)
走りにこだわりを持ち続けるスバルの、代表的なモデルがインプレッサだ。1.5Lのエントリーグレードを用意する一方、トップモデルのWRX STIにはシンメトリカルAWDに2Lターボエンジンを組み合わせ、スポーツモデルとして日々進化し続けている。
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しかも、そのバリエーションは豊富だ。当初WRXは5ドアHB(ハッチバック)のMTのみだったが、その後セダンボディに2.5Lターボ+5速ATを組み合わせた「Aライン」を追加。ボディ バリエーションを増やすと同時に、5ドアHBはコンパクトさを生かして軽快さを追求し、セダンは空力特性の良さを生かして、超高速ハンドリング性能を追求した。
そして今回、WRXシリーズの頂点として、5ドアHBに「スペックC」が、セダンにSTIチューニングによる「tS」がラインアップに加わった。まずは、スペックCから試乗する機会を得た。エンジンはターボにボールベアリングタイプを採用して最高出力は308psと従来のSTIと変わらぬものの、最大トルクは発生ピークを1200rpm落とした3200rpmで0.8kgm高い43.8kgmを発生。ボールベアリングターボのレスポンスの良さで、低速域からトルクを素早く立ち上がらせている効果が理解できる。
スペックCは5ドアHBの設定で、ボンネットをアルミ製とし、ウインドーガラスに薄板タイプを採用して、軽量化を徹底。標準モデルのWRXが1480kgなのに対して40kg軽い1440kgまで車両重量をシェイプアップしている。それでいながら室内を見渡してみればエアコンやパワーウインドーなどの快適装備は標準化されていて、従来の競技車ベースモデルのように寒々しい印象はなく、実用性も保たれている。
スパルタンな走りっぷりは、峠を攻めたくなる
実際に試乗してみると、スペックCはひとことで言えば「スパルタン」だ。Sタイヤ(セミレーシングタイヤ)のようなタイヤを履いていることもあって、路面からの入力はゴツゴツとハッキリとしている。タイヤが強靱なために積極的に荷重をのせていく必要はあるものの、反応したときの動きは切れ味鋭くインを指す。
躊躇していると跳ね返されてしまうような強さがあることから、遠慮なくスロットルを踏んでいくとリア寄りのトルク配分によって、リアの沈み込みがグッと感じられると同時にステアリングの向いている方向に一気に速度を増していく。リアの追従性の速さはHBならではの醍醐味で、ガンガンとフロントをねじ込んでさえいけばボディ全体が一体となってコーナーをクリアしてくれる。点をつなげていくような切れ味で、コーナーへ思い切って飛び込んでいける鋭いハンドリングが持ち味だ。
軽いボディの効果もあって、エンジンもレスポンスの良さが一層光る。標準のWRXに比較して、500rpmくらい低い3000rpm弱からスッとパワーが立ち上がり、3800rpmを越すとターボパワーが高まり、7500rpmまで一気に回りきる。パワーが高まってからトップエンドまでの吹け上がりは明らかに速い上に、低速域のトルク感も太く、ボールベアリングターボの効果は全域で発揮されている。
スペックの伸びしろ以上にパワーの立ち上がりが速く、扱いやすさと瞬発力は歴代のWRXでトップであるばかりか、スバル最強エンジンとして名を残すに違いない。
シャシがそのパワーに十分に応えてくれているので、スペックCはタイトなワインディングロードでガンガン攻め込んでみたくなる、そんな気にさせてくれる1台だった。
■インプレッサWRX STI スペックC 主要諸元
●全長×全幅×全高:4415×1795×1470mm
●ホイールベース:2625mm
●車両重量:1440kg
●エンジン種類:水平対向4 DOHCターボ
●排気量:1994cc
●最高出力:227kW<308ps>/6400rpm
●最大トルク:430Nm<43.8kgm>/3200rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:フロント縦置き4WD
●10・15モード燃費:10.4km/L
●タイヤ:245/40R18
●当時の車両価格(税込):364万3500円
[ アルバム : インプレッサWRX STI スペックC はオリジナルサイトでご覧ください ]
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