ストリートもレースも自在なパワー調整が出来るターボ
「このハヤブサはオーナーの原田康次郎さんが、第2世代が出てすぐ買ったものでした。当初は純正のオレンジ色でしたね。今はレーサーに見えますけど、ウインカーとミラーを戻してナンバーを付ければ、公道も走れるんですよ」。レッドモーターの中村圭志さんは言う。確かにサスもあり、タイヤもパターンありのリヤ190幅だ。
「それでJD-STERドラッグレースに参戦して、タイムを詰めるステップとしてパワーアップと、それを受け止めるようにローダウン、ロングホイールベース化しています。パワーアップは見ての通りターボによる過給で、現状では1kg/cm2のブーストで200~210psというセッティングをしています。3~4kg/cm2かければ360ps行く仕様ですけどね」
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出そうと思えばノーマル(190ps)の倍近く。それはこのターボチューンだけで出されているという。
「ターボはアメリカ製のキットで、タービンと排気系にサージタンク(過給された新気をFI直前に滞留させる)、過給圧を任意で逃がすアクチュエーターと、そのコントローラー。あと過給に合わせたローコンプピストンが含まれてました」と、同店メカニックの吉田さん。中村さんとともにもう30年近くドラッグレースに携わり、ふたりで多くのノウハウと実績を築いてきた。
「そのローコンプピストンを組んで、強化コンロッドを組んでいる以外はエンジンはノーマルです。オイルクーラーは干渉するので外して、あとクランクメタルは定期チェックしています。
この車両でターボを使っているのは、レース現場での面倒さを減らすためです。現場でセッティングを変えるにしても、シート下に収めたコントローラーで過給の設定を少しいじればいい。時間がなくても対応出来るし、メカチューンやNOSのようにほかの部分には大きな負担をかけなくて済む。そんな利点もあってのことです」(吉田さん)
「今、210ps~というパワーは、これまでの国内の路面に合わせてのもの。日本ではタイヤのグリップがいいものを選んだ上で、そこにバイクを合わせる感じ。アメリカではパワーは出して、タイヤのグリップはそこそこ(それでも十分高い)にして前に進める感じでしょうか。それで現状のパワーでバランスを取っている状態です。路面など条件が良ければ、パワーも上げていけます」(中村さん)
ハヤブサの限界は650ps以上で、中村さんはライダーとしてもその世界を体験している。その感覚も、路面にどう伝えるかも熟知してこその言葉だから心強い。
このターボハヤブサは’20年末までで、1/8マイル(約201m)で5秒9、1/4マイル(約402.1m)では9秒0というタイムを出している。’21年はJD-STERも新会場での開催で条件が良くなり、さらにタイムは詰まるはずだ。
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Detailed Description 詳細説明
フロント/サイドカウルはノーマルで、テールカウルとサイドカウルを外して燃料タンクを上げればそのまま各部にアクセスできる。スイングアームでロング化しているのとタイダウンでのローダウンはフロントのリフトを抑え、前に進むようにパワーを使う定番手法。
削り出しトップブリッジとセパレートのハンドルはアグラスで、メーターはハヤブサノーマル。左右のレバーは変更されるがマスターもハヤブサノーマル。ターボ化に関わる各種補機類も備えられ、速度計の手前に追加されるのはDefi製ブーストメーターだ。
2段式で走行時に着座位置を変えるのにも対応するシートと、一体式のシートカウルはドラッグレース用FRP製。テールランプも作動する。ウインカーを配線し、ミラーとナンバーをつけてレース用ゼッケンを外してしまえば普通にストリートカスタムになってしまう。
写真左が前方向。燃料タンクの下にはこのようにアルミボックスが収まる。これはサージタンクで、タービンで過給された新気をいったん滞留させて、4つのスロットルボディ/FIに導く。このサージタンク上面には圧力センサが備わり、ブーストの検知を行う。
シート下に収められるターボコントロールユニット(ALR製AMS-1000)。ハガキ大のサイズで、必要なブースト圧の設定がボタンプッシュで行える。この設定によりタービンのアクチュエーター(ウエストゲートバルブと同じ役目のバイパスバルブ)を動かし圧を変える。
シートカウル内にはボンベがあり、ターボのアクチュエーターやエアシフターを動かす圧搾空気が入る。NOS用亜酸化窒素だと1レース(5~10回程度)なのが、1年(5~10レース)保つ(設定された必要な過給圧になるまでは閉じ、それを超えると開くという程度の作動で済む)使い勝手の良さも採用理由。ボンベ奥はシフトライトコントローラー、その下にはサブコンのパワーコマンダーV(ターボ用)を設置。
エンジンは1340ccのノーマルでピストンをローコンプ化(トップは凹型で過給を受け止める)、コンロッドも強化、クラッチカバーはAPE製に変更される。ターボはエンジン前下に置かれ、中央から新気が入り(普段は写真のようにエアクリーナーも装着)、排気で回転するタービンと同軸の吸気側タービンによって過給される。フレームはノーマルで左右にスライダーを装着、エアシフターも備える。
アメリカ製のターボキットによるターボ。サイズもハヤブサの排気量に合わせ、適切な出力と特性を得ている。排気の力をタービンで受け、これに接続したもうひとつのタービンで新気を過給するため、上で紹介したようにエアクリーナーはこの中央に装着。
車体右側から見たタービン部、中央上の黒い部分が過給圧を制御するアクチュエーター。そこから伸びる黒いゴムパイプがボンベからの圧搾空気を導き内部の圧力弁を開閉する。下はタービンからの排気管だ。
前後ホイールは3.50-17/6.00-17サイズのハヤブサ純正で、ブレーキまわりも同様にハヤブサ純正パーツをそのまま使っている。フロントフェンダーはカーボン化。フロントフォークはドラッグレース時はBrock'sのタイダウンキットによってローダウン化される。
リヤはロアリングトイズ製8cmエクステンションによってロングスイングアーム化。グリップの良い路面ではスイングアーム自体をTRAC DYNAMICS製10cmロングスイングアームに変更するという。リヤのローダウンはリンク部で行われ、リヤスプロケットは現状48Tを装着する。
取材協力:レッドモーター
レポート:ヘリテイジ&レジェンズ編集部
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