新車試乗レポート [2022.09.08 UP]
【BMW i4 M50】電気自動車の実力を実車でテスト!【グーEVテスト】
文●石井昌道 写真●ユニット・コンパス
【BMW i4】電気自動車の実力を実車でテスト!【グーEVテスト】
欧州や中国では、クルマを取り巻く環境や政府の補助金政策なども追い風となり、EV(電気自動車)のセールスが急進。対する日本も、普及はまだまだこれからという状況ながら、補助金の充実や新しいEVの登場&上陸など、EV関連のニュースが次々とメディアをにぎわせている。そうした状況もあり、「そろそろかな」とEVが気になり始めている人も案外多いのでは?
とはいえエンジン車とは異なり、EVの所有はハードルが高いのも事実。航続距離や充電効率、使い勝手などは車種によって大きく異なるため、どんなモデルが自分にとってベターな選択なのか、見分けるのがまだまだ難しい。
本連載は、EVや自動運転車といったクルマの先進技術に造詣が深い自動車ジャーナリスト・石井昌道氏の監修・解説の下、各社の注目モデルを毎回、同様のルートでテスト。実際の使用状況を想定した走行パターンでチェックすることで各モデルの得手不得手を検証し、皆さんの“EV選びの悩み”を解決することを目的とする。
今回フォーカスするのは、BMW「i4 M50」。高性能モデルに掲げられるBMW Mのバッジと電動車ブランドBMW iが初めて競演するこのモデルは、どんな実力の持ち主なのだろうか?
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BMW i4 M50のプロフィール
BMW i4 M50
欧州や中国では、クルマを取り巻く環境や政府の補助金政策なども追い風となり、EV(電気自動車)のセールスが急進。対する日本も、普及はまだまだこれからという状況ながら、補助金の充実や新しいEVの登場&上陸など、EV関連のニュースが次々とメディアをにぎわせている。そうした状況もあり、「そろそろかな」とEVが気になり始めている人も案外多いのでは?
とはいえエンジン車とは異なり、EVの所有はハードルが高いのも事実。航続距離や充電効率、使い勝手などは車種によって大きく異なるため、どんなモデルが自分にとってベターな選択なのか、見分けるのがまだまだ難しい。
本連載は、EVや自動運転車といったクルマの先進技術に造詣が深い自動車ジャーナリスト・石井昌道氏の監修・解説の下、各社の注目モデルを毎回、同様のルートでテスト。実際の使用状況を想定した走行パターンでチェックすることで各モデルの得手不得手を検証し、皆さんの“EV選びの悩み”を解決することを目的とする。
今回フォーカスするのは、BMW「i4 M50」。高性能モデルに掲げられるBMW Mのバッジと電動車ブランドBMW iが初めて競演するこのモデルは、どんな実力の持ち主なのだろうか?
BMW i4 M50のプロフィール
BMWの高性能モデルに備わるBMW Mのエンブレムが、ついにピュアEVにも掲げられることになった。同社の電動車ブランドBMW iの新しいハイパフォーマンスモデル「i4 M50」がそれだ。
ふたつの“BMW M eDriveモーター”によって4輪を駆動するi4 M50は、スポーツ・ブースト・モード選択時にはシステム最高出力544ps、同最大トルク81.1kgfを発生する。その結果、0~100km/h加速タイムはわずか3.9秒(本国仕様)と驚速。車内のスピーカーから放たれる“アイコニック・サウンド・エレクトリック”による魅惑的なサウンドとあいまって、アドレナリンが全身を駆けめぐるような加速フィールを提供してくれる。
バッテリーのレイアウトを工夫することで低重心化を図った上、前後重量配分を約50対50としたシャシーも秀逸。専用のチューニングが施された“アダプティブMサスペンション”や、大型のブレーキディスクにフロント=対向4ピストンキャリパー、リア=フローティング1ピストンキャリパーを組み合わせた“Mスポーツ・ブレーキ”を組み合わせることで、軽快なフットワークと安心感のあるストッピングパワーを実現する。
それでいて、走行用バッテリーは83.9kWhと大容量だから、1回の充電で546km(WLTCモード)の走行が可能。最大150kWの急速充電器に対応し、10分間の急速充電で130km以上の走行を可能にするなど、ハイパフォーマンスと“長い足”、そして優れた利便性を併せ持つ。
i4 M50のエクステリアは、基本的にベースモデルとなった4シリーズ グラン クーペのそれに準じるが、“M エアロダイナミクス・パッケージ”を標準装備することで、精悍なスタイルに。クローズドタイプの“M キドニー・グリル”や“M リヤ・スポイラー”といったMならではの専用パーツの数々が、ダイナミックな個性に仕上げている。
一方のインテリアも、EV化によって細部のデザインがベースモデルとは異なる。12.3インチのメーターパネルと中央部にある14.9インチのコントロールディスプレイがひとつのユニットにまとめられている上、パネルを湾曲させることでモダンな印象を与えつつ、操作性や視認性を追求。M独自のステッチが施された“マルチファンクション Mスポーツ・レザー・ステリング・ホイール”などにより、視覚的にもドライバーのやる気をかき立てる。
それでいてi4 M50は実用性も上々。キャビンの居心地は、ベースモデルである4シリーズ グラン クーペと同等で、ラゲッジスペースは標準状態で470L、リアシートの背もたれを倒した状態で最大1290Lまで拡大できる。
■グレード構成&価格
・「M50」(1080万円)
・「eDrive40」(791万円)
■電費データ
<eDrive40>
◎交流電力量消費率
・WLTCモード:157Wh/km
>>>市街地モード:159Wh/km
>>>郊外モード:151Wh/km
>>>高速道路モード:161Wh/km
◎一充電走行距離
・WLTCモード:604km
<M50>
◎交流電力量消費率
・WLTCモード:173Wh/km
>>>市街地モード:177Wh/km
>>>郊外モード:167Wh/km
>>>高速道路モード:175Wh/km
◎一充電走行距離
・WLTCモード:546km
BMW i4 M50のディテール
【高速道路】全高の低さが空気抵抗低減につながり良好な電費を記録
ラッキーなことにi4 eDrive40 Mスポーツと同日テストとなった。同じモデルで性能が違うグレードを同時に走らせれば、差がくっきりと出てわかりやすいからだ。スペック的にはi4 eDrive40 MスポーツはRWDで電費は少々良く、i4 M50 は4WDとなってパワフルだが電費はちょっと落ちる。
i4 M50の高速電費は、制限速度100km/h区間のその1が6.3km/kWh、その4が6.4km/kWh、制限速度70km/h区間のその2が6.9km/kWh、その3が6.7km/kWhだった。これに対してi4 eDrive40 Mスポーツはその1が7km/kWh、その4が7km/kWh、その2が7.7km/kWh、その3が7.3km/kWh。WLTCモード電費は約10%の差があるが、実走行でも概ねそれぐらいの差であり、区間による傾向もほぼ同じだった。
電費の違いは駆動方式とパワー&トルクだけではなく、車両重量とタイヤサイズによるものも大きいだろう。i4 eDrive40 Mスポーツの車両重量は2080kg、タイヤは前245/45R18、後255/45R18、i4 M50は2240kg、前245/50R19、後255/40R19となっている。今回の制限速度100km/h区間は交通量が多く、電費的に有利だったとはいえ、両グレードともにWLTCモードの高速モードを超えているのは秀逸。また、過去にテストしたモデル達と比較しても高速電費は良く、さすが低全高なだけのことはある。
往路の高速テストコース
往路の高速テストコース。東名高速道路 東京ICからスタート。海老名SAまでを「高速その1」、海老名SAから厚木ICから小田原厚木道路を通り小田原西ICまでを「高速その2」とした。復路の高速テストコースは小田原厚木道路の小田原西ICから東名厚木ICを経由し横浜青葉ICまで走行。途中海老名SAで充電を行った
【ワインディング】ベースモデルに対してスペックどおり13%程度の差が出た
約13kmの距離で963mも標高差があるターンパイク登りの電費は1.5km/kWhで、i4 eDrive40 Mスポーツの1.7km/kWhと13%の差が出た。これも概ねスペック通りといったところだろう。車両重量2200kgのBMW iX3も1.5km/kWh。高速道路ではiX3よりも電費は明らかにいいが、制限速度50km/h区間のターンパイクでは空力の影響はあまり出ないことがわかる。車載電費計からの推測で、下りでは3.74kWh分が回生された。ちなみにi4 eDrive40 Mスポーツは4.04kWh。RWDよりも4WDのほうが有利かと思いきやそんなこともなかった。テストではACC任せでほぼ一定速で下っているが、もっと速度変動があってときに強いブレーキをかける状況ならば4WDが有利になるかもしれない。
下りに向けてスタートするターンパイク大観山ではバッテリー残量63%、走行可能距離237kmだったが、約13kmの距離を下って67%、258kmに回復していた。i4 eDrive40 Mスポーツは62%→67%、240km→379kmで、走行可能距離の表示に大きな差があるが、この数値は直近の電費による概算なので変動しやすい。i4 eDrive40 Mスポーツのほうはワインディング試乗のためにアクセルをたくさん踏んだ直後だったので、スタート前の走行可能距離がかなり短く表示されていたのだ。
自動車専用道路である箱根ターンパイク(アネスト岩田ターンパイク)を小田原本線料金所から大観山展望台まで往復した
【一般道】スポーツ仕様であることの特別なデメリットはなく一般的な電費を記録
一般道での電費は4km/kWhでi4 eDrive40 Mスポーツの4.5km/kWhと12%の差。今回は高速道路、ワインディングロードを含めてどこでも同じような差であり、不可解な電費が出るようなことはなかった。i4 eDrive40 Mスポーツの項でも述べているが、車両重量が同程度のSUVタイプと比べると、高速電費では低全高かつ前面投影面積の少ないi4は秀逸だが、一般道ではほとんど差が出ない。シティコミューターならば背が高くても問題ないが、高速ロングドライブを頻繁にするのなら、セダンやクーペ、スポーツタイプなど低全高なモデルをチョイスしたほうが使い勝手はいいはずだ。
東名横浜青葉ICから環八の丸子橋まで約22kmの距離を走行した
【充電】急速充電はバッテリー保護のため80%で終了。航続距離は実用的
海老名SAでの急速充電テスト ※データはテスト時のものです。数値を保証するものではありません
スタート時のバッテリー残量は92%、走行可能距離は376kmだったが、約160km走行して復路・海老名サービスエリアに到着したときは60%、331kmになっていた。こちらは出力90kWの急速充電器を使用して80%、445kmに回復。じつは80%になると自動的に充電が終了する設定になっていたようで、知らない間に終わっていた。だから正確な時間はわからないのだが、充電開始直後から出力は87kWを超えていてほぼフルパワー。推定では10分ちょっとで60%→80%に達していたことになる。充電終了に気付いたのは15分過ぎだった。出力40kWの急速充電器を使用したi4 eDrive40 Mスポーツも80%充電までほぼフルパワーが続いたことから、出力90kWを使用すれば今回の実績から30分で43.6kWが充電できる計算。バッテリー残量が28%程度でも出力90kWの急速充電器ならば30分で80%までいけるということになる。今回のようにモード電費に近い走りならば、満充電から300km走って急速充電すれば、走行可能距離430km程度になるだろう。
後席の足元についてはバッテリー容量が増えてもベースモデルと変わらない
BMW i4はどんなEVだった?
テストを監修した自動車ジャーナリストの石井昌道氏
低全高なi4ならば、グレードにかかわらず高速電費が秀逸なのでSUVタイプよりも安心してドライブに出かけられるのがいいところ。さらに走りも低全高ゆえの良さがあり、ワインディングロードでのハンドリングなどは限界がどこにあるのかわからないぐらいにハイパフォーマンスだ。エンジン車だったら、もっと背が低いスーパースポーツを持ってこないと、このレベルには達しないと思えるほど。4WDでパワフルなi4 M50は0−100km/h加速3.9秒と俊足であるだけではなく、RWDのi4 eDrive40 Mスポーツよりもハンドリングの正確性も高かった。3シリーズや4シリーズはBMWのコアモデルだが、そのBEVバージョンのi4は、さすがの仕上がりなのだ。
BMW i4 M50
■全長×全幅×全高:4785×1850×1455mm
■ホイールベース:2855mm
■車両重量:2240kg
■バッテリー総電力量:83.9kWh
■定格出力 前/後:70kW/95kW
■フロントモーター最高出力:258ps(190kW)/8000rpm
■フロントモーター最大トルク:37.2kgf(365Nm)/0~5000rpm
■リアモーター最高出力:313ps(230kW)/8000rpm
■リアモーター最大トルク:43.8kgf(430Nm)/0~5000rpm
■システム最高出力:544ps(400kW)
■システム最大トルク:81.1kgf(795Nm)
■サスペンション前/後:ストラット/マルチリンク
■ブレーキ前後:Vディスク
■タイヤ前/後:245/40R19/255/40R19
取材車オプション
■ボディカラー(フローズン・ポルティマオ・ブルー)、ヴァーネスカ・レザー ブラック(ブルー・ステッチ付)/ブラック、ファスト・トラック・パッケージ。サンプロテクション・ガラス、Mスポーツ シート
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