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栄光もどん底も経験した国本雄資のスーパーフォーミュラ人生。引退会見で明かした思い「苦しい状況で戦うドライバーにもフォーカスを」

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栄光もどん底も経験した国本雄資のスーパーフォーミュラ人生。引退会見で明かした思い「苦しい状況で戦うドライバーにもフォーカスを」

 2016年のシリーズチャンピオン、国本雄資がスーパーフォーミュラを去った。

 通算14年のキャリアでは、本人も語るように苦しいシーズンの方が多く、“崖っぷち”の状態も長かった国本。精神をすり減らす日々が続く中で、「これ以上続けていたらレースが大嫌いになってしまうんじゃないか」との思いもあり、「結果が出なければ引退」の覚悟で臨んだ2024年シーズンに思うような結果を残せなかったことで、国内トップフォーミュラでのキャリアに区切りをつける決心をした。

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「一番良いものも見せてもらったし、一番どん底も経験したドライバー」だと自称する国本。キャリアのハイライトは何と言ってもCERUMO・INGING時代の2016年だろう。岡山で初優勝を飾り、ランキング2番手で迎えた鈴鹿での最終2レースでは、レース1で優勝を飾ったことで形成逆転し、見事チャンピオンに輝いた。

 当時のことを、国本は次のように回想する。

「1レース目は石浦さん(チームメイトの石浦宏明)がポールで、自分は2番手スタートでした。ここで抜かないと絶対にチャンピオンは獲れないし、チャンピオン争いは何度も何度もできるものではないので、すごく気持ちを入れてレースに臨んだことを覚えています」

「結果的にスタートでトップに立つことができたのですが、スタートにしかチャンスがないと思っていたので、前日はトヨタの方やチームにスタートのことを相談しました」

「トヨタのエンジニアさんの部屋に尋ねたのですが、最初はあまり相手にされなかったというか……ひとりくらいしか話を聞いてくれなかったのですが、僕がずっと帰らないのでだんだんみんなが僕の声に耳を傾けてくれて、このパーツを変えようとか、協力してくれるようになりました。夜遅くでしたが、すごく充実した時間を過ごすことができました」

「協力してくれたみんなのおかげでスタートも決めて、チャンピオンも獲ることができたのですが、その時相談に乗ってくれたメンバーがすごく喜んでくれました。乗っているのは僕ですが、その裏にはたくさんの人がいて、一緒になって頑張ってくれているんだということを、その時改めて感じましたね」

 ただその前年に国本は、非常に辛く苦しいシーズンを過ごしていた。チームメイトの石浦が活躍しチャンピオンを獲得した裏で、なかなか上位進出を果たせず……オフにマシンをチェックしたところ、国本車のモノコックに問題があったことが発覚し、翌2016年シーズン途中でのモノコック交換に至った。そしてそれが、チャンピオン獲得の後押しとなった。

 国本は苦しい状況にあっても言い訳せず、「今の道具でベストを尽くす」……つまり一定の結果を残した上でモノコック交換を直訴した。国本は当時のTOYOTA GAZOO Racingのインタビュー記事の中で「モノコックを換えてダメだったら、それが(自分の)実力だということで"辞めるしかない"と覚悟した」と語っている。

 レースの世界では、人知れず苦しみ、もがいているドライバーがいるのだ。国本は来季以降も現役で戦うドライバーに思いを馳せ、引退会見での挨拶でこう述べた。

「スーパーフォーミュラがどんどん盛り上がり、お客さんも増えている中で、全てのドライバーがどんな状況でも、どんな苦しい状況でも戦っているので、そういったところにもっともっとフォーカスして取材していただき、見ているお客さんもフォーカスして応援していただけたらすごく嬉しいなと思います」

 会見後、国本にこの言葉の真意を問いかけた。

「そうですね……僕は一番良いものも見せてもらったし、一番どん底も味わったドライバーだと思っています」

「モータースポーツの場合は言えること言えないことがあり、特に言えないことがものすごく多いので、そこが難しいところではあるし、悩んでいるドライバーも多いと思います」

「今までミドルフォーミュラや下のカテゴリーですごく速くてトップフォーミュラに上がってきているドライバーばかりなので、技術的にはほとんど変わらないレベルにあるのですが、そこに順位がついてしまう……そういうジレンマのようなものもあります」

「でも、結果が出ないからといって、当然頑張っていないわけではありません。それはチームのスタッフもそうです。そうやってもがいているところにもっとフォーカスしていけたら、もっともっと頑張る勇気も湧くと思います。そういう意図で、(会見では)伝えさせていただきました」

 実は、国本のスーパーGTでのチームメイトであり、今回の引退会見でも花束贈呈と挨拶を行なった阪口晴南も、今季開幕戦でポールポジションを獲得した際の会見で前述の国本と近い発言をしている。以下がそのコメントだ。

「僕はこれまで2年くらい苦しいレースが続いて、(会見場で)皆さんの前で話すことがなかったのですが、例えばチームメイトに対して遅れているからとか、すごく低迷しているからといって、そのドライバーだけの問題ではないこともあります。もちろん、ドライバーの問題という場合もありますが」

「皆さん、後方で苦戦しているドライバーに対して『もうダメなんじゃないかと』とは絶対に思わないでいただきたいです。ここにいるドライバーは皆素晴らしいドライバーばかりですし、チャンスを掴めばすぐに上位に顔を出せる選手なので、そういった点は期待をしていただきたいです」

 国本の思いは“愛弟子”にも受け継がれているのだろう。

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