WRC世界ラリー選手権第12戦『セントラル・ヨーロピアン・ラリー(CER)』の競技3日目が、10月28日(土)に行われた。オーストリアとドイツに設定された計3本のステージを各2回、全部で6つのSSで争われたデイ3では、ヒョンデ・シェル・モビスWRTのティエリー・ヌービル/マルティン・ウィダグ組(ヒョンデi20 Nラリー1)が総合首位に返り咲いている。日本人ラリードライバーの勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1)は総合5番手だ。
史上最年少チャンピオン、カッレ・ロバンペラ(トヨタGRヤリス・ラリー1)による選手権2連覇達成の瞬間が近づいてきた。前日のラリーリーダーはデイ3でポジションをひとつ落としたものの、チームメイトでありドライバー選手権のタイトルを争うライバルでもあるエルフィン・エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1)が戦列を離れたことで、トロフィーに片手を置く状況を迎えている。
トヨタのふたりがミス。ヌービル「一方で僕たちはとても安定していた」/WRC第12戦 デイ3後コメント
■難コンディションにロバンペラもひやり
前日のデイ2はすべてのステージがチェコで行われたが、このデイ3はWRC初開催のオーストリアで2本、3年ぶりのWRCイベントとなるドイツでは1本のステージが設定された。午前中のループはオープニングのSS9でにわか雨が見られたものの天候は概ね回復。しかし選手たちは競技2日目と同様に、ウエットコンディションでの戦いを強いられることとなった。
そのオープニングステージでは総合3番手につけるエバンスがベストタイムを記録し、36.4秒ものリードを持って首位に立つロバンペラに対し反撃の狼煙を上げる。続くSS10では総合2番手のヌービルがトップタイムを記録。エバンスがこれに続いた一方、首位ロバンペラはブレーキングミスによりコースオフを喫する。
幸いにもチャンピオンは“並外れた危機管理能力”によって車両にダメージを受けなかったが、コース復帰に時間を要し約20秒のタイムロスで貯金を減らしてしまう。これにより2番手ヌービルとのギャップは10.9秒、3番手エバンスとは24.2秒差に。
ロバンペラとのポイント差を現在の31ポイントから30ポイント以下に減らさなければ今大会で“終戦”となってしまうエバンス。そんな彼を午前中最後のSS11でドラマが襲った。ウェールズ出身のドライバーは、集落の中を駆け抜ける同ステージの右コーナーでコースオフを喫し、木造の小屋に激突するアクシデントに見舞われた。エバンスとコドライバーのスコット・マーティン両名に怪我はなかったが、マシンは大きく壊れ即時デイリタイアの状況。わずかに残っていた逆転戴冠の可能性はさらに小さくなってしまった。
■優勝ではなくシリーズ制覇に照準
それに拍車をかけたのはロバンペラの戦略変更だ。23歳のチャンピオンはSS11をスタートする直前にチームメイトの事故を知ったため、リスクを冒さず確実性の高いドライビングに切り替えた。彼はこのSS11を8番手タイムでパスし総合首位の座をヌービルに譲っている。
路面が乾いた午後のループでは、前日のSS3でホイールにダメージを負い勝負権を失っていたセバスチャン・オジエ(トヨタGRヤリス・ラリー1)がSS12とSS13で連続ベストをマークした。しかし大勢には影響を与えることはなく依然としてヌービルがトップ、ペースを抑えて走るロバンペラが続き、エバンスの離脱後に順位を上げたMスポーツ・フォードのオット・タナク(フォード・プーマ・ラリー1)が総合3番手のまま日没後のSS14へ。
一日の最後のナイトステージではロバンペラがベストタイムを刻み、ヌービルとの差をわずかに縮めたが両者の間には26.2秒という大きなギャップができている。総合3番手につけるタナクは、SS14でハンドブレーキを失い約30秒のタイムロス。これにより上位との差が1分22秒に開くとともに、総合4番手オジエとのタイム差は31.1秒に縮まっている。
午後のループでペースアップに成功しSS14ではステージ3番手タイムを刻んだ勝田は、総合5番手をキープしてデイ3を走破した。後方には10.9秒差でテーム・スニネン(ヒョンデi20 Nラリー1)がつけており最終日の4つのSSではこのフィンランド人と争うことになる。
グレゴワール・ミュンスター(フォード・プーマ・ラリー1)とピエール-ルイ・ルーベ(フォード・プーマ・ラリー1)のMスポーツ・フォード勢が総合7番手、8番手でトップ8リザルトを形成し、その後方にWRC2首位を走るアドリアン・フルモー(フォード・フィエスタ・ラリー2)と同クラス2番手のエミル・リンドホルム(ヒョンデi20 Nラリー2)が続いている。
シリーズチャンピオン決定の瞬間が訪れる可能性がある競技最終日、ミッドデイサービスが設定されていない29日(日)のデイ4は、パッサウのサービスパークを起点にオーストリアで1本、ドイツで1本のステージを各2回走行する。SS15から“パワーステージ”となるSS18まで計4SSの合計距離は67.24km。リエゾン(移動区間)を含めた総走行距離は278.24kmだ。
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