ASTON MARTIN DBX
アストンマーティン DBX
アストンマーティン DBX 日本上陸! ラグジュアリーSUVの新たなる世界観に迫る
予想を超える実車の印象。価格は2299万5000円
ワールドプレミアからわずか1日後の11月21日。東京・青山にあるアストンマーティン東京で「アストンマーティン DBX」のジャパン・プレミアが行われた。
会場に展示されたDBXは、現在世界に16台存在するというプリプロダクションモデルの1台で、アジア・パシフィック地域にはシンガポールにもう1台送られているのみという事実からも、いかに彼らが日本市場を重要視しているかが伺える。
個人的に今年の7月に開催されたグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで彼らが“M2”、“1PT”と呼ぶ2台のプロトタイプを見てきたが、改めて目の当たりにした市販仕様は全長5039mm、全幅1998mm、全高1680mmというサイズに加え、暗くライティングされた室内ということもあってか、大きく堂々として見えた。それでも間延びしたように感じられないのは、低く抑えられたノーズと、キュッと絞られた特徴的なリヤスタイルなどのデザインが“効いている”からなのだろう。カモフラージュ越しに想像していたより数倍カッコ良い、というのが正直な印象だ。
女性やファミリーユーザーにも配慮した造り
一方のインテリアはシンプルながら、アストン・マーティンの文法に則った美しくラグジュアリーなもので、センターコンソール下に収納スペースを持つなど実用性も配慮されているのが特徴。また居住空間もスポーティな外観とは裏腹にゆったりと余裕があり、1016mmのヘッドルーム、1060mmのレッグルームをもつ後席のスペースはクラス最大で、レンジローバーよりも広いのだという。
プロトタイプの段階から「ハードなオフローダーというより、オンロードでの快適性を重視している」という発言があったが、ドアがサイドシルまで覆われることで、乗降時にズボンの裾を汚れにくくしたり、乗り降りや荷物の積載時にライドハイドを調整し車高を50mm下げる機能、40:20:40の分割可倒式リヤシートを備えた632リッターのラゲッジスペース、さらに用途に応じた11種類のライフスタイル・アクセサリー・パックを用意するなど、女性オーナーや、ファミリー・ユーザーを意識した配慮がきめ細かくなされているのも、従来のアストン・マーティンや他社のハイエンドSUVと一線を画する部分といえる。
コンセプトは「世界で最も美しいSUV。総合性能でも世界一」
このほかにも様々な新機軸が盛り込まれたDBXについて、来日したアストンマーティン・ラゴンダ・リミテッドのヴァイス・プレジデント&チーフ・クオリティ・オフィサーのリチャード・ハンバート氏、アジア・パシフィックのマーケティングのトップ、アンドレアス・ローゼン氏らに話を聞くことができた。
彼らがなぜSUVを作ることを決めたのか? そこにはこんな背景があったのだそうだ。
「アンディ・パーマーがCEOに就任し、セカンドセンチュリープランを立ち上げた時、アストンマーティンは誰にも頼らずに生きていくことを決めました。そこで会社として発展していくためにどうするのか? そこで調査部が調べたところ、カスタマーの70%がなんらかのSUVを持っていることがわかりました。そして彼らから“アストンからSUVが出ないのか?”という声が大きかったのです」
そうした既存のアストン・オーナーに加え、これまでアストンに興味を示さなかった層にも訴求できるクルマを目指してDBXの開発はスタートした。そこで彼らが掲げたコンセプトは「世界で最も美しいSUV。総合性能でも世界一」というものであった。
独自のプラットホームは、DB11並みの性能
「多くのSUVが他社と共有のプラットフォームを使っていますが、DBXはまったく新規のプラットフォームを使っています」
とハンバート氏が言うように、アルミ押し出し剤を接着したモノコックシャシーはDBX専用に新設計されたもので、大きな開口部を持ちながらも捻り剛性はDB11とほぼ同じ数値を達成している。またアダプティブ・トリプルチャンバー・エアサスペンション、可変ライドハイド、エレクトリック・アクティブ・アンチロールなどを組み込んだ足まわりも、最後の最後にEデフを追加するなど、妥協せず走りに関する改良が加えられた結果、1Gでのロール角がヴァンテージと同じ0.5度を実現するなど、SUVでありながら、DB11並みのスポーツ性能を持つに至ったという。
全幅2m以内は、アンディ・パーマーCEOの指示
ボディサイズに関しては、アンディ・パーマーCEOが全幅を2m以内にすることを指示。それを元に高いスペースユーティリティとアストン・マーティンの名に相応しい走行性能を両立させるために全長5039mm、ホイールベース3060mmという数値が導き出されたのだそうだ。そのほか装備やスペースユーティリティなど、細かい部分まで徹底的にこだわった結果、オン&オフの走行性能と1台で全てを賄える実用性、機能性を高い次元で両立したモデルに仕上がったと胸を張る。
DBXのデリバリーが開始されるのは、2020年の第二四半期からで、日本市場にも遅滞なく導入される予定という。その生産の舞台となるのが新たに開設されたセントアサン工場だ。
「セントアサンには、ゲイドンで学んだ多くの内容を反映しています」
ハンバート氏によると、ボディの製造ラインでは、様々なチェック過程を用いて、ボディの精度を確実なものにしているほか、トリムの工程では“ポカヨケ”システムを導入してミスがないようにしているなど、二重三重の品質管理を行っているという。
「ここには2つのキーがあります。ひとつは同じミスを繰り返さないこと。ゲイドンで起きた問題を起こさないことです。そしてもうひとつはセントアサンで新しいミスを生み出さないこと。我々はこの2つを重視しており、エンジニアリング、マニファクチャラー、サプライヤーにおいても対策を徹底しています。また今回は多くのデジタルエンジニアリングを導入しています。それにより設計、開発をスムーズに制御することができるようになりました。併せてサプライヤーとも戦略的な開発を行っておりパーツを調達する際も、十分な品質、数量を提供してもらえるような関係を構築しています」
エンジンはメルセデスAMG製V8ツインターボ
すでに発表があったように、DBXのエンジンは2013年から技術提携を結んでいるメルセデスAMG製の4リッターV8ツインターボを搭載。ギヤボックスもZF製の9速ATとなっており、セントアサンではそれらのコンポーネンツをアッセンブリーする作業が行われる。
「確かに基本的にはアッセンブリーとなります。ただシートにレザー表皮をつける、インパネやボディパネルの取り付けるといったクラフトマンシップを必要とする重要な工程も、すべてセントアサンで行われます。もうひとつセントアサンで特徴的なのは、ゲイドンとは全く違う最新の塗装設備が用意されていることです。特に日本のカスタマーは塗装の品質に敏感ですからね。ゲイドンでも日本仕様のために専用の仕上げ工程を行っていましたが、セントアサンでも同様の対応を行います」
SUVをラインナップに加えてもエクスクルーシブ性を維持
セントアサン工場の生産能力は年間5000台。将来的にラゴンダのEVの生産も行われる予定なので、その全てがDBXに割り振られるわけではないが、アストンマーティン全体の生産台数が飛躍的に増えることは間違いなさそうだ。
「アストンマーティンが増えるのは良いことだと思っていますが、ゲイドンはスポーツカーのみで年間7000台、セントアサンは年間5000台。合計1万2000台が我々の限界です」
そう聞くと、アストンマーティンならではの希少性、プレミアム性が薄まるのでは? と危惧する声もあるが、DBXは大量生産車ではなく、あくまでもハンドメイドのエクスクルーシブな製品であり、その心配には及ばないとアンドレアス・ローゼンは付け加える。
「アストンマーティンは106年の歴史の中で、これまで9万台のクルマを製造してきましたが、そのうちの95%が現存しています。アストンマーティンを購入することは、ただのクルマを買うのとは違うのです」
TEXT/藤原よしお(Yoshio FUJIWARA)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
【SPECIFICATIONS】
アストンマーティン DBX
ボディサイズ:全長5039 全幅1998 全高1680mm
ホイールベース:3060mm
車両重量:2245kg
前後重量配分:54/46
地上高:190 – 235mm
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3982cc
ボア×ストローク:83×92mm
圧縮比:8.6
最高出力:405kW(550ps)/6500rpm
最大トルク:700Nm/2200 – 5000rpm
トランスミッション:9速AT
駆動方式:AWD
ステアリング:電動パワーステアリング
サスペンション形式:前ダブルウイッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
キャリパー:前6 後シングル ピストン
ディスク径:前410 後390mm
タイヤサイズ(リム幅):前 285/40YR22(10J) 後325/35YR22(11.5J)
最高速度:291km/h
0 – 100km/h加速:4.5秒
CO2排出量(NEDC):269g/km
燃料消費量(WLTP):14.32L/100km
車両本体価格:2299万5000円(税込)
【問い合わせ】
アストンマーティン ジャパン
TEL 03-5797-7281
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