フェラーリとランボルギーニは、どちらも高級スーパーカーブランドとして世界にその名を馳せているのは言うまでもない。どちらも長い歴史を紡いできているのだが、奇妙なことに特に日本ではそのオーナー像がかなり違っているのだという。
ベストカー本誌での連載「プリウス武井のスーパーカー劇場」の取材で、両ブランドのオーナーたちに広く顔がきく武井氏にその傾向をまとめてもらった。
ニッポンのスポーツカーの最高到達点と外車スポーツカーを超えられない壁
文/武井寛史
写真/奥隅圭之、中島仁菜、平野 学、雨田芳明
[gallink]
■そもそもの根本的な違いとは何か?
普段、クルマで走っていると、運転のしかたに属性があることに気づく。面白いもので、メーカーや車種による特長みたないモノがある。正確に統計を取ったわけではないけど、長年、強く感じていることだ。
もちろん同じ車種に乗っている人がすべて同類ではないけど、例えば、とあるメーカーのクルマを選ぶ人は、交通の流れを考えずに「Going My way」でやたらゆっくり走っているのに、信号待ちで先頭に立つとGPのスタートよろしく青になった瞬間、フル加速したかと思うとまたゆっくり走る。いったい何がしたいのか理解できない。
また、高速を走行中、前方がクリアなのに法定速度で追い越し車線を永遠と走り続け、走行車線で並びかけたクルマが現れると加速して抜かれないように運転したり……。さらにプリウスなんかも無法者ドライバーのレッテルが張られていて、SNS上では「今日のプリウス」というスレッドが立ち上がっているほどだ。普段、プリウスに乗っている私は間違いなくターゲットになっていることは否めない。
実は、こうした属性はスーパーカーにも当てはまる。スーパーカーの代表といえば「フェラーリ」と「ランボルギーニ」だ。このふたつのメーカーに乗るオーナーにも根本的に違いがある。
■「フェラーリ」と「ランボルギーニ」に貼られるレッテルとは
スーパーカーを何台も所有している大富豪オーナーさんは、だいたい両メーカーの車両を持っている。フェラーリ、ランボルギーニとも、どちらも魅力的なモデルは買うというのは実に羨ましい
ここではフェラーリとランボルギーニを好んで所有するオーナーの属性に焦点をあて、長年、スーパーカーオーナーに接してきた筆者ならではの主観で綴られる
基本、スーパーカーを何台も所有している大富豪オーナーさんは、だいたい両メーカーの車両を持っている。フェラーリ、ランボルギーニとも、どちらも魅力的なモデルは買うという実に羨ましい方々だ。その人たちは今回の話題である属性とは少し違うステージにいる。
また、投資目的でスーパーカーを購入する層も意外に多く、とりあえず限定モデルはすべて買い、プレミアがついた頃を見計らって売却して利益を得る。今はクルマは絵画や美術品と同様、投資物として世界的に認知されている。クルマは模倣品がないから優良な投資物件というわけだ。こうしたオーナーも今回、話す属性には当てはまらない。
ここではフェラーリとランボルギーニを好んで所有するオーナーの属性に焦点をあて、長年、スーパーカーオーナーに接してきた私だから見える分析を個人的主観でお話ししたい。
その前に、私を知らない方がほとんどだと思うので、私の立ち位置を解説しておこう。ベストカー本誌でも月イチ連載中のスーパーカー劇場を担当させていただいている。そのため、富裕層に接する機会がやたらと多い。スーパーカーを何台も買える途方もない大金持ちからサラリーマンオーナーさんまでさまざまだ。
■奥ゆかしいフェラーリ
まずはお洒落な雰囲気があるフェラーリに乗るオーナーさんを分析してみたい。跳ね馬を好むオーナーは、総じて奥ゆかしい方が多い。所有しているモデルや年式によって志向が別れるが、F348やF355に乗るオーナーは見栄も若干あるけど、純粋に走り好きな方が多い。目立ったカスタムよりもブレーキやサスペンションなど、走りに直結したチューニングを好み、フェラーリの魅力がわかっているオーナーだ。
「跳ね馬を好むオーナーは、総じて奥ゆかしい方が多い」と筆者
また、F360モデナやF430、F458イタリアなどは多少カスタムしている個体も多いが、基本的にオリジナルのまま乗っているユーザーが多い。そうしたオーナーさんたちは、目立つことを避ける傾向にある。そう感じるエピソードとして、取材をお願いするとほとんどのオーナーさんは顔出し&名前の記載はNG。フェラーリを選択している人は、表に出ないことが美徳として考えているオーナーが多い。
■自己主張の強いランボルギーニ
対してランボルギーニを好んで乗っている方の多くは目立つことが大好きでノリがいい。12気筒モデルのディアブロやムルシェラゴ、アヴェンタドールを好んで乗っているオーナーは自己主張が強い。その表れがカスタムだ。高額な車両にもかかわらず、あえて自分好みにカスタムすることが個性だと信じている。
筆者曰く、「ランボルギーニを好んで乗っている方の多くは目立つことが大好きでノリがいい」
派手なボディラッピングとエキゾースト交換は定番のチューニング。ホイールもインチアップして走りよりもどれだけ目立てるかにベクトルが向いているのだ。渋谷のスクランブル交差点でやたらブリッピングして周囲に迷惑をかけるのはだいたいランボルギーニのオーナーだ。昭和時代に多く存在した暴走族と一緒でランボルギーニは自己主張の道具として考えている。とはいえ、取材では積極的に誌面に出てくれるノリは圧倒的に猛牛チームなのだ。
しかし、ミウラやカウンタックを所有しているオーナーさんの多くはノリが少し違う。子供の頃から憧れていて購入した方ばかりなので、クルマを家宝のように大切にしている方がほとんどで、自分が目立つよりもクルマを一番に考えている層もいることは付け加えておこう。
ミウラやカウンタックを所有しているオーナーさんの多くは自分が目立つよりもクルマを一番に考えている層だという
■ユーザーの属性とメーカーの生い立ちは関わっている?
こうした属性は、メーカーが誕生したルーツにも大きくかかわっているのかもしれない。フェラーリはF1ドライバーだったエンツォ・フェラーリが1947年に設立している。50年から始まったF1GPに今もなお参戦し続ける名門だ。ヨーロッパのブルジョアの社交場として成り立っているGPとともに成長してきたフェラーリはやはり格式が高い。
ヨーロッパのブルジョアの社交場として成り立っているGPとともに成長してきたフェラーリ
一方、ランボルギーニはトラクターメーカーからスタート。創設者のフェルッチオ・ランボルギーニは事業で成功を収め、当時、富裕層の憧れだったフェラーリを購入。しかし、夢のフェラーリがトラブル続きで嫌気がさし、フェラーリに対抗して自身の理想のスポーツカーを作るため自動車メーカーへと転身したというのは有名な話だ。
ランボルギーニはコンストラクターとしてはF1に参戦していない。ヨーロッパ貴族にとってF1は特別なスポーツだ。そのフィールドで初年度からコンストラクターとして参加しているフェラーリと比較するとランボルギーニは傾奇者(かぶきもの)というイメージが強い。
フェラーリと比較するとランボルギーニは傾奇者(かぶきもの)というイメージが強い
また、フェラーリへのライバル心とともに反骨の精神で立ち上がったメーカーだけにクルマのデザインも奇抜で独特だ。カウンタック以来、今でも採用されているスイングアップドアひとつ取っても自己表現するにはピッタリだ。
フェラーリとランボルギーニはともにイタリア生まれのメーカーだけど、オーナーの属性に違いがあるのは、そうした生い立ちと歴史が色濃く影響していることは興味深い事実なのだ。
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みんなのコメント
・フェラーリは、クルマが好きな人
例外はあるが、概ねこれで説明できる。