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初代スズキ・アルトの再来か──新型スペーシア ベースに迫る!

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初代スズキ・アルトの再来か──新型スペーシア ベースに迫る!

スズキの軽ハイトワゴン「スペーシア」に、「ベース」が追加された。実車を見た、今尾直樹が綴る。

空間自由自在

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スズキのスペーシア ベースとはなにか? 簡単にいえば、2名乗車の利用をメインとする、ソロキャンプや車中泊といったアウトドアでの使用も想定した、新ジャンルの軽商用車である。2名+自由な空間の、繰り返しになりますが軽バン(商用車)なのだ。

担当エンジニア氏によると、スペーシア ベースは軽商用車の未来を切り開くべく、知恵を絞った結果の、軽商用車と軽乗用車の“いいとこどり“だという。ホンダの「N-BOX」をベースにした軽バン、「N-VAN」を参考にしたわけではない。

乗用車の“いいとこ“というのは、ヒト優先の乗り心地であり、快適&安全装備である。商用車の“いいとこ”は、荷物がたくさん運べるなど、自由なスペースがあることだ。

商用車は、ルール上、後席よりも荷室のほうが広くなければならない。だって貨物車だから。その代わり、といっていいのか、4ナンバー登録車、つまり軽商用車は自動車税の優遇がある。軽乗用車が1万800円なのに対して、軽商用車は5000円ポッキリ。と、軽商用車はたいへんお値打ちなのだ。初回車検が、乗用車の3年ではなくて2年、というハンディはあるにしても。

問題は、軽商用車は価格競争にさらされていることもあって、乗り心地がよろしくないことだ。貨物車だから積載量に足まわりが耐えねばならず、バネが硬くて、シートが薄い。ヒト優先の軽ワゴンに較べ、軽バンはモノ優先だから致し方ない。

しかしながら、世のなか急速に変化しており、クルマの使い方も多様になっている。スズキの調査によると、軽バンも軽ワゴンも、4名乗車の割合は、2015年から右肩下がりになっていて、これも少子化の影響でしょうか、2021年には軽ワゴンの「エブリイワゴン」、スペーシアで40%、軽バンの「エブリイ」だと30%を切っている。であるなら、2名乗車をメインに考えてもよいではないか。

というようなことを踏まえ、「『遊びに仕事に空間自由自在』。新しい使い方を実現する軽商用バン」というコンセプトを掲げて誕生したのがスペーシア ベースなのである。ターゲット・ユーザーは次の通り。

1. 1~2人の利用がメインで、バンやハイトワゴンを自分専用に使いたいユーザー

2. 荷室は使い勝手を重視し、運転しやすさや乗り心地は譲れないユーザー

3. 車中泊やソロキャンプなど、自分の趣味にも活用できるクルマを求めるユーザー

あなたは当てはまるでしょうか?

「自動車の設計をしているというより、家具の設計のようでした」

具体的なハードウェアの説明に入ると、ベースはスズキの主力軽ハイトワゴンであるスペーシア・カスタムである。ワゴンをベースにしているのは、もちろん、2の運転しやすさや乗り心地をおもんぱかってのことだ。

内装を先に述べると、スペーシアの前席はベンチシートだけれど、スペーシア ベースではセパレート・タイプに変更している。セパレートにしたのは、センター・コンソールに収納スペースをつくるためと、そのほうが車内での前後の行き来がしやすいからだ。

2名乗車での使用がメインだと聞いていたから、2シーターなのかと思ったら、そうではなかった。やっぱり4人乗ることもあるだろう、ということで、ちゃんと後席が用意されている。

その後席は、軽バンのエブリイの流用パーツではなく、新作で、それというのも、折り畳んだときに荷室と同じ高さにするには専用設計するしかなかったという。後席を折り畳んだとき、荷室との間に隙間ができる。その隙間を埋めるための専用ボードも用意されている。

スペーシア ベースで最大の特徴は、「マルチボード」と呼ばれる頑丈なボードがこのために開発されている点だ。荷室のフロア面積の半分ほどの面積を持つこのボードは、荷室の両サイドに設けられたレールに差し込むことで、さまざまな用途に使える。

レール、というか板を差し込むくぼみですね。これが上段、中段、下段とあって、ボードの高さを3段階に変えることができる。上段にすれば、荷室のフロアから高さ430mmになり、モバイル・オフィスのテーブルに。外からだとスタンディング・デスクとしてちょうどいい高さになるように考えられている。

中段だと、高さ290mm。外からだと870mmとなり、移動販売等に最適だという。870mmはキッチンの高さの850mmを意識して設定されている。下段にすると、背もたれを後ろに倒した前席とフラットにつながり、車中泊に好適なスペースが生まれる。

マルチボードは重さ5.5kgと、ちょっと重い。中に鉄のフレームが2本入っており、設計上、80kg×2名が乗っても耐えられる。

「自動車の設計をしているというより、家具の設計のようでした」と、担当エンジニア氏は笑顔で語った。

軽バンの枠を使った乗用車

エンジンはスペーシア用からマイルド・ハイブリッドのシステムを取り外して使っている。スペーシアにはハイブリッドしかないからで、水冷直列3気筒DOHCのピュアICE(内燃機関)は最高出力52ps/6500rpm、最大トルク60Nm/4000rpmを発揮する。

トランスミッションはハスラー用のCVTを用いている。ただし、商用車は走行距離が延びがちなため、高耐久のベルトを採用している。

サスペンションはスペーシアとまったくおなじものだけれど、これまた耐久性を上げるべく、フロント・ハブのベアリングに耐久性をアップしたものを使っている。スズキって真面目な会社なんですね。

駆動方式は前輪駆動のほか、フルタイム4WDの設定もある。グレードはより装備を充実させたXFと、廉価版のGFの2タイプがある。価格はGFの139万4800円から、XFの4WDの166万7600円まで。

スズキの軽商用車としては初めて、衝突被害軽減ブレーキや先行車発進お知らせ機能など、スズキ セーフティ サポートを標準装備することもトピックのひとつだ。

考えてみたら、これって……。そう。1979年に47万円という低価格で衝撃を与えた初代アルトの再来、といえるかもしれない。アルトは軽ボンネットバン、つまり商用車の枠を利用した、実質乗用車だった。スペーシア ベースもまた、軽バンの枠を使った乗用車という意味でおなじだ。

ニッポンはどんどんビンボーになりつつあるわけだけれど、スペーシア ベースみたいなのがあれば、ビンボーもまた楽しいハッピー・ライフが送れるというものではあるまいか。

やるなあ、スズキ。

文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.)

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