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FCAとルノーの経営統合 アナリストはどう見るか

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FCAとルノーの経営統合 アナリストはどう見るか

もくじ

ー 50:50の対等合併
ー FCA 年間6060億円のコスト削減も
ー 工場閉鎖の懸念 フィアットの復興は?
ー 電動化と自動運転 研究開発をシェア
ー ジープ、ルノー傘下にあった時代

FCA、テスラと提携 欧州の排ガス規制に対応 罰金の回避が目的 数億ユーロで

50:50の対等合併

実現すれば、世界最大の自動車会社グループを形成することになるフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)とルノーの経営統合は、アナリスト達から歓迎されている。しかし、工場閉鎖の懸念やコスト削減への取り組み、巨大な複合組織が誕生することの複雑さには、大きな3つのリスクが伴う。

ルノーは先週、対等合併して新会社を設立(両社の株式資本は50:50)し、本社をオランダに置くとするFCAの提案を「検討する」ことに同意。2社に加え、ルノー・アライアンスに属する日産や三菱自動車も含めると、年間販売台数は1500万台を超えることになる。誕生するのは、フォルクスワーゲン・グループやトヨタを5万台ほど上回る世界首位の自動車企業連合だ。

当初「ニュートン計画」と呼ばれていたこの経営統合は、FCAとルノーの両社が抱える多くの問題を解決することができる。

しかし、ルノーが日産や三菱とアライアンスを継続することについて、深刻な問題を浮かび上がらせることにもなる。前アライアンスCEOのカルロス・ゴーンが逮捕されたことを受け、既に日本では統合継続を嫌う緊張が高まっている。

フィアットの利点としては、ルノーが持つ複数のプラットフォームを利用することで、現在の縮小されたラインナップを再びフルレンジに戻すことが可能になる。止まっている生産ラインを稼働させる機会にもなり、さらにルノーの電気自動車に関する専門知識にもアクセスすることができる。

まずはルノーにとってもメリットを考えてみよう。

FCA 年間6060億円のコスト削減も

ルノーのメリットとしては、アルファ・ロメオやマセラティを足がかりにしてプレミアム市場に参入できる点が挙げられる。さらに、ジープやダッジを通じて米国市場への足場を築くこともできるだろう。FCA傘下のウェイモが持つ自動運転技術も利用できる。

「可能性としては上手く適合し、多くの相乗効果が生じるでしょう。しかし、このような巨大統合が失敗した歴史を振り返れば、懸念がわくのも当然です」と、アストン大学のデヴィッド・ベイリー教授は言う。

FCAは、この統合による財政的な利益の可能性について声明を発表。心配される「工場閉鎖については根拠がないだけでなく、投資を集中化して効率を上げ、共有できるグローバル戦略車用プラットフォームを開発できる」としている。

FCAによれば、年間に最大50億ユーロ(約6060億円)のコスト削減が可能になると予想され、その内訳は購買が40%、研究開発が30%、製造が20%であるという。とはいえ、初年度は「導入費用の累積」が最大40億ユーロ(約4850億円)に上る見込みで、コストが削減されるのは2年目からになるとのことだ。

しかし、AUTOCARと親交のある2人のアナリストは、それだけの節約が単に費用を削減するだけで可能になるとは、未だ納得できないという。

詳しく聞いてみよう。

工場閉鎖の懸念 フィアットの復興は?

「50億ユーロものコスト削減は、広範囲の工場閉鎖なしでは難しいだろう」とアナリストのベイリーは語っている。

また、ジェイトー・ダイナミクスのアナリスト、フェリペ・ムノスは次のように述べている。「工場閉鎖を行わずに、どうやってそれだけのコストを削減できるのか、理解しがたい」

フィアットの工場は、確かに販売ボリュームの大きな新型車の投入を必要としている。販売台数はルノーの約半分にまで落ち込んでおり、フィアットの工場は平均すると生産能力の半分しか稼働していないと言われている。破滅的な効率の悪さで、収支が合うには80%まで戻すことが求められている。イタリアとフランスの政治家は既に長期的な雇用危機の予測を高めている。

実際にフィアットにとって統合は、イタリアにある工場の救済となるだろう。縮小されたモデルレンジを拡張できるからだ。現在、フィアットのラインナップは500、パンダ、ティーポ、500X、500Lの5車種のみで、そのうちイタリアで製造されているモデルは2車種しかない。

説得力のある可能性としては、ティーポがルノー・メガーヌと共同開発車になり、プントはクリオの兄弟車に、さらにカジャーをベースにしたコンパクトSUVなどが考えられる。「しかし、難しいのはフィアット・ブランドをどうするかです。復興させることは非常に難しく、修正するには長い時間がかかるでしょう」とムノスは言う。

これは現在瀕死の状態にあるランチア・ブランドにとっても生命線となる。とはいえ、新しいモデル群への投資はランチアよりもアルファ・ロメオやマセラティに向けられる可能性が高いだろう。

電動化と自動運転 研究開発をシェア

ルノーにとっては、ついに米国市場から利益を得るチャンスでもある。これは、特に同じフランスのライバルであるPSAが北米市場への復帰を視野に入れていることを考えても、魅力的な話だ。

FCAとルノーはどちらも、電動化と自動運転技術という新しい分野に投資を迫られている。FCAは自動運転、ルノーは電動化に関して一日の長がある。

フィアットは電動化の遅れを取り戻そうとしているところだ。同社が今年発表したチェントヴェンティというコンセプトカーは、2021~22年にEVとなる新型パンダとして発売される見込みだ。その市販モデルは2020年3月に公開されるだろう。それまでに、次期型ルノー・ゾエのプラットフォームに変更することが可能かどうかはわからない。元クライスラー側の重役の中には、2007年に失敗に終わったダイムラーとの経営統合に関する苦い記憶もあるだろう。

これらの困難が、巨大経営統合の場当たり的な複雑さを表す一方、電動化や自動運転の開発に向けて研究開発部門へ投じる多額の資金は、新たな購買層を開拓しなければならないという圧力となっている。このプレッシャーは、FCAのセルジオ・マネキオンネ元CEOや、コスト削減に絶えず励んでいたルノー・アライアンスのゴーン元CEOから絶えずかけられていた。問題があってもなくても、ルノーはFCAに提案を断ることはできないだろう。

ジープ、ルノー傘下にあった時代

今となっては信じられないことだが、ルノーはかつてジープを所有していた。時代は1979年まで遡る。ルノーは米国市場を拡大するため、3.5億ドルを投資してアメリカン・モーターズ(AMC)の株47%を取得。AMCといえば、よく知られている車種はハッチバックのペーサーだろう。

AMCは1970年にジープを買収していた。しかし、フランスの新たなオーナーは四輪駆動車を単なる隙間向け製品と見做していた。それよりルノーはAMCの米国やカナダにある工場に興味を持っていたのだ。

AMCとルノーは、ルノー5のマーケティングに関する合意から提携を開始。米国ではAMCからル・カー(Le Car)という車名で販売された。さらに1980年代半ばには、ルノー9、11、21、25の現地生産車へと拡大した。

しかしながら1987年、品質問題が販売に打撃を与え、AMCは辣腕経営者として名高いリー・アイアコッカ率いるクライスラーに6億ドルで買収されることになる。

アイアコッカはジープ、特にルノー傘下で開発されたXJ型チェロキーが欲しかったのだ。1983年に発売された3ドア・ボディのチェロキーは、スポーツ・ワゴンとして市場で好評を博した。多くの人々にとって、最初のSUVといえばこの時代のチェロキーだった。それから36年が経ち、ルノーは再びジープ・ブランドを戦略に活用することになるかもしれない。

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