もくじ
ー 驚異のモデル 思いがけない幸運
ー 最高の911 いまも最新
ー ル・マンレーサーとの繋がり
ー 33年分の進化
ー 真の後継モデル ターボSに期待
ー テスト車のスペック
ー 番外編:次の33年
新型911カレラ4S vs ロータス・エヴォーラGT410スポーツ vs アウディR8 V10 比較試乗
驚異のモデル 思いがけない幸運
コンセプトモデルから3年、1986年に行われたポルシェ959の発表会のことはよく覚えている。911をベースとしたマシンの可能性や、ポルシェの新たなレベルを示すだけでなく、この時代のひとつの到達点とも呼べる存在だった。
257km/hでの巡航が可能なだけでなく、959はさらにそこから強烈な加速を見せ、当時デビューからそれほど時間の経っていなかったゴージャスなGTO(ようやく最近になって288 GTOと呼ばれるようになったモデルだ)を時代遅れにするとともに、このクルマを運転したひとびとに、まさに衝撃の経験を与えている。
当時、史上最速のロードゴーイングモデルとして、450psのパワーで最高速は306km/h以上、0-100km/h加速わずか3.7秒の959では、四輪駆動のみならず、可変式トルク配分システム、さらには、信じられないかも知れないが、アダプティブサスペンションまで搭載しており、GTOが単なる豪華なアンティークにしか見えなかった。
そして、450psのパワーと306km/hの最高速、0-100km/h加速を3.6秒でこなし、四輪駆動、可変式トルク配分システム、そして、アダプティブサスペンションなど、959と非常によく似たスペックを誇るのは、2019年モデルの911カレラ4Sであり、今後登場予定の992型911のなかでは、比較的控え目とも言える存在だ。
959との間には33年の隔たりがあるとは言え、当時、狂気の一歩手前と考えられていたパフォーマンスやテクノロジーは、いまや高品質で毎日乗れるスポーツカーでは当然のものとなっている。
だからこそ、新型カレラ4Sと959との比較試乗には意味があると考えたのだ。だが、生産台数わずか300台ほどに留まり、現存する個体数となるとさらに少ない959はどこにでもあるというモデルではなく、さらに、この希少なマシンを、このクルマに相応しい方法で試乗させてくれるオーナーを探し出すなど、ほとんど不可能なように思われた。
だが、ポルシェミュージアムではグッドウッドのメンバーミーティング向けに数々のレースモデルを準備しており、幸運にもそのなかには959も含まれていたのだ。
新車当時からポルシェが所有し続け、辛うじて走行距離が5桁に達するコンディション完ぺきなこの車両の価値がどれほどのものかは想像もつかないが、間違いなく100万ポンド(1億4515万円)をはるかに超えるに違いない。
最高の911 いまも最新
土砂降りのホッケンハイムでの試乗を除けば、新しい992世代の911をテストするのは初めてであり、先代たる991世代との違いは、サーキットよりも公道でより大きく感じられた。ほとんどすべての面でスタンダードな先代911を高く評価しているが、このクルマは、ドアを開けただけで、まさしく911だと感じさせてくれる。
新型992に求められるものがあるとすれば、それは911のドライビングの間口をさらに広げることだと指摘したことがあるが、この新型は、さらにファン・トゥ・ドライブのレベルを引き上げただけでなく、より簡単にこのクルマの実力を引き出すことを可能にしており、明らかに過去25年間で最高の911であり、間違いなく最新のスポーツカーだと言える。
一方、959は、デビュー当時だけでなく、その後数十年も最新であり続けることを念頭に開発されたモデルであり、このクルマには、ケブラーやアラミド繊維といった最先端の素材が使用されるとともに、中空構造のマグネシウム製ホイールの内部には、専用設計のブリヂストンRE71ランフラットタイヤと同じく、エアーが封入されていた。
確かに、このクルマのルックスは、デザイナーが考える21世紀の911といった趣だが、そのスタイリングは320km/h以上に迫る最高速度でのダウンフォースを確保しつつ、最高の空力性能を与えるべく考え出されたものだ。
だが、キャビンには未来を感じさせる要素はまったくない。1988年の959生産終了後に登場した964世代の911とほとんど同じようなものだが、それでも、ステアリングホイールに刻まれた「959」の文字や、6速マニュアルギアボックス、レッドゾーンが7200rpmから始まる回転計、トルク配分を示すメーター、350km/hまで刻まれた速度計、ライドハイトとダンパーコントロール用スイッチなど、959であることを主張するものは数多く存在しており、それは写真を見ればご理解頂けるだろう。
ル・マンレーサーとの繋がり
これまで959を運転したことは1度しかなく、しかも、非常に短時間でかなり昔のことだったが、キャビンの雰囲気やフィールはまさにかつての911そのものであり、直観的な操作が可能であるとともに、なんのレクチャーも必要なかった。
エンジンに火を入れてみれば、これまでロードゴーイングモデルに積まれたものとしては、もっとも驚異的なパワープラントのひとつでありながら、そのサウンドは空冷時代の911そのものだった。
それでも、当時の911が3.2ℓエンジンを搭載する一方で、959に積まれていたのは2.85ℓの排気量に、パラレルではなくシリーズ式で駆動する2基のターボチャージャーを組み合わせたユニットであり、1基の小径ターボが低回転域を担当することでターボラグを抑え、もう1基の大径ターボが高回転域での強力なパワーを発揮している。
さらに、水冷化されたツインカムヘッドには、気筒あたり4本のバルブが与えられており、実際、959は他のポルシェ製ロードゴーイングモデルよりも、ル・マンレーサーの962と深い繋がりを持つモデルだった。
959は高い静粛性を誇るとともに、扱い易くもあり、操作が容易なクラッチと組み合わせられたマニュアルギアボックスは見事な仕上がりを見せ、正確なシフトチェンジを可能にしている。
だが、一旦アクセルを踏む右足に力を込めれば、このクルマは違った一面を見せ始める。速度の高まりとともに、遠くからターボチャージャーの唸りが聞こえ、もちろん992よりもターボラグ自体は大きいとは言え、回転上昇に伴い力強さを感じさせてくれる。
シャシーは最新の992よりもはるかにソフトな仕立てであり、959は明らかなノーズダイブを見せるが、それでも、走りそのものは素晴らしく、まったく世代の異なるモデルに対しても、決して引けをとることはない。
33年分の進化
そして、エンジン回転数が4800rpmに達して大径ターボが加わると、それまでの走りなど、このクルマの実力のほんの一端にしか過ぎなかったことを認識させられることになる。
シートに押し付けられるというだけでは不十分な、まさに、後方へと投げ出されるように感じるほどの加速であり、992をはるかに凌ぐ回転上昇の速さによって、ドライバーは素早く次のギアへとシフトアップする必要に迫られるが、完ぺきなギアレシオによって、シフトチェンジを行うたびに、ちょうど4800rpmまでエンジン回転数が下がり、ふたたび怒涛の加速を味わうことができる。
2019年の現在でも、959は驚くほど速いモデルであり、1986年であれば、まるでキャノン砲のように感じたに違いない。
959のほうがはるかに速く感じるにもかかわらず、スペック上では992世代の911とそれほど違わないのはなぜだろうと考えていたが、このクルマには最新の技術、つまりは、電光石火のシフトチェンジやローンチコントロール、トラクションコントロールといったものが採用されていないにもかかわらず、完全新設計の911との0-100km/h加速における差は、たった0.1秒しかないことの意味を突然理解することができた。
さまざまな点で、この2台は比べるべくもない存在なのだ。959のシャシーはドライバーとの一体感を感じさせ、17インチというホイールサイズにもかかわらず、ブリヂストン製タイヤは素晴らしいグリップを発揮するが、992に乗ってみれば、そのグリップと落ち着きに33年分の進化を感じるとともに、確かに959で究極のハードブレーキングを試したことはないが、それでも、992のほうがはるかに優れたストッピングパワーを見せることは間違いないだろう。
さらに、ポルシェ初の四輪駆動モデルである959のフロントには、まったくトランクスペースなど残されていない一方で、992には広大とも言えるラゲッジスペースまで備わっている。
真の後継モデル ターボSに期待
それでも、知りたかったのは、この2台に共通するフィールはあるかということであり、その答えは、非常に離れてはいるものの、確かに同じようなフィールを感じることは出来るというものだった。
素晴らしいエンジニアリングや、そのサウンドとスタイリングに共通点が感じられるとともに、純粋なスポーツカーでありながら、長距離ツアラーとしての資質も備えており、959のあまりにも自然なフィールは、このクルマのドライバーを失望させてしまうのではないかとさえ思わせるほどだ。
だが、少なくとも、それはエンジン回転数が4800rpmに達するまでの話であり、一旦4800rpmを越えれば、ドライバーには本物の衝撃が襲ってくる。
959の魅力は何よりもその二面性にあり、あるところまでは非常に従順なモデルが、突然驚異のマシンへと変貌するのだ。
つまり、992型カレラ4Sは、確かにスペック上は似ているかも知れないが、現代の959などではなく、現代の959に求められるのは、驚くほどの柔軟さを備えつつも、ポルシェ最高の四輪駆動シャシーを完全に圧倒するようなエンジンを備えたモデルであるということだ。
おそらく新型911ターボこそが現代の959を名乗るに相応しいモデルであり、もし、噂されているとおり、ターボSに609ps以上のパワーが与えられれば、959の真の後継モデルは、今年中にはわれわれの前に姿を現すことになるのかも知れない。
テスト車のスペック
ポルシェ911カレラ4S
■価格 9万8418ポンド(1429万円)
■全長×全幅×全高 –
■最高速度 306km/h
0-100km/h加速 3.6秒
■燃費 9.1km/ℓ
■CO2排出量 WLTP値未発表
■乾燥重量 1565kg
■パワートレイン 2981cc水平対向6気筒ツインターボ
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 450ps/6500rpm
■最大トルク 54.1kg-m/2300rpm
■ギアボックス 8速ツインクラッチオートマティック
ポルシェ959
■価格 100万ポンド(1億4515万円)以上
■全長×全幅×全高 –
■最高速度 317km/h
0-97km/h加速 3.7秒
■燃費 NA
■CO2排出量 NA
■乾燥重量 1450kg
■パワートレイン 2849cc水平対向6気筒ツインターボ
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 450ps/6500rpm
■最大トルク 51.0kg-m/5000rpm
■ギアボックス 6速マニュアル
番外編:次の33年
911の次の33年はどんなものになるだろう? 現代のハイパーカーを上回る速さを身に着けることになるのだろうか?
個人的にはそうは思わない。まず、いつまでも同じようなペースでクルマが速くなっていくことは不可能であり、さらに、自動車が実現可能なパフォーマンスにも限界があるからだ。
恐らくは、内燃機関はもはや搭載されていないだろうが、それでも、このクルマのパワープラントが電気モーターであれ、燃料電池であれ、それが積まれるのがリアアクスルの後ろであることには変わりはないだろう。
個人的には、911や959のようなモデルが、いま起こりつつある大きな変革期を生き延びることは出来ないだろうと考えている。
911風のルックスで、911と呼ばれているかも知れないが、それ以外に今回ご紹介した2台との共通点を見つけることはできるだろうか?
次の33年、世界はこうしたクルマの存在を許さないほどの、大きな変化を経験することになるだろう。
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