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初試乗 ポルシェ・パナメーラGTS  真のスポーツカー、得たもの/失ったもの

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初試乗 ポルシェ・パナメーラGTS  真のスポーツカー、得たもの/失ったもの

もくじ

どんなクルマ?
ー 2代目パナメーラにもGTSが追加
ー ハードウェアに大差はなし
どんな感じ?
ー 正真正銘のスポーツカー
ー 価格は10万5963ポンド(1568万円)から
「買い」か?
ー GTSを選択する理由が見つからない
スペック
ー ポルシェ・パナメーラGTSのスペック

モーガン 新型ハイパフォーマンス・スポーツカー投入 20年代中盤

どんなクルマ?

2代目パナメーラにもGTSが追加

ポルシェがハードコアなGTグレードのほかに、「GTS:グランツーリスモ・スポーツ」という呼び名を持つ魅力的なグレードを、現代に蘇らせてからしばらく経つ。現代のラインナップでは、911だけでなく、ボクスターやケイマン、マカン、カイエン、そしてこのパナメーラまで、すべてのモデルにGTSグレードが用意されている。

ポルシェの4ドアサルーンに、このGTSグレードが導入されたのは2011年。車高をわずかに下げ、エンジンにはターボに次ぐ出力を持たせつつも、甘美な自然吸気のままだった。スポーティな黒塗りのパーツが、なだらかに傾斜するハッチバックボディに設えられ、ディーラーで買えるラグジュアリー・サルーンとしては白眉のハンドリングには、さらに磨きをかけられていた。アルカンターラのインテリアと程よいプレミアム感は、クルマの雰囲気を壊すことはなかった。レシピはほぼ完成していた。

2代目のパナメーラにもGTSグレードが用意されることになったのだが、基本的に同じレシピで作り上げられていても、正直、初代ほど食欲をそそられるクルマではなさそうだ。残念ながら。

その理由のひとつはエンジン。90°のバンク角を持つ、4.0ℓV8エンジンは、パナメーラのすべてのグレードでターボが組み付けられている。最高出力は460ps。63.0kg-mの極太の最大トルクが、1800rpmから6100rpmまで途切れることなく、湧き出てくる。

日常的乗るクルマとしては凶暴な部類のパフォーマンスといえるが、いってしまえば、トップグレードからやや出力を抑えられた、普通のターボエンジンだともいえてしまう。

ハードウェアに大差はなし

新しいパナメーラGTSの燃費は、新しい基準のWLTP法(乗用車等の国際調和排出ガス・燃費試験法)で9.70km/ℓとなっている。先代モデルは9.35km/ℓだったが、この数字は実世界とはややかけ離れた、NEDC法(新欧州ドライビング・サイクル)での数字だから、実際の差はもっと大きいはず。

ボディサイズは大きくなり、車重が増えているだけでなく、最高出力は20ps向上している。0-100km/h加速は0.3秒縮まり4.1秒を記録しており、なかなかの進化だといえるだろう。しかし、GTSの中身の仕上がりは、スペックだけではわからない。エンジン以外のメカニカルな部分で、手が加えられている箇所が少ないことも、驚きではある。

ポルシェ・ダイナミック・シャシー・コントロールシステム(PDCC)を搭載するパナメーラには、アクティブ・アンチロールバーがセットされ、必要に応じてアンチロールバーに掛かるテンションを電動モーターで制御し、姿勢を安定させる。またリアタイヤにはトルクベクタリング・システムも組み合わされている。

ダンパーのセッティングも見直されているが、ハードウェア自体は既存のまま。スポーツ・エグゾーストもノーマルモデルと変わらないが、ソフトエアを修正することで、マッスルカー的な迫力のある排気音にチューニングされている。今回のGTSは、ブースト圧に依存したレシピになっているというわけ。

どんな感じ?

正真正銘のスポーツカー

今回のGTSのレシピは、1995kgにも及ぶ車重が生む運動特性に、効果的なものというわけではないといえる。しかし、試乗の時間は限られていたが、サーキットではペダル操作に応じた粘り強いグリップを披露し、クルマのポテンシャルの片鱗は確かめられた。

GTSは四輪駆動だが、ポルシェは後輪駆動ベースの挙動となるようにチューニングしており、リアタイヤがスリップし始めてもそれは変わらない。スポーツモードでもESPは比較的すぐに介入するが、ヨーコントロール、旋回方向のシャシー・バランスは全般的に極めて優れているようだ。少なくともサーキットにおいては。

実際のところ、より高速なスーパーサルーンも、よりラグジュアリーなスーパーサルーンも存在はする。しかし、パナメーラほど優れたドライビングを体感させてくれるモデルは他にないといえ、GTSはそれがより顕著に感じ取られるグレードだとは思う。

ライバルの大型モデルは受け流してしまうような、微細なスロットル操作にもしっかり反応してくれる。さらに、リニアな設定の速度感応式電動パワーステアリング(EPAS)のおかげで、ピレリPゼロが限界を迎えるまで、正真正銘のスポーツカーのような、極めて正確なハンドリングを備えている。ボディコントロールに関しても、極めて効果的な装備だといえるだろう。

気になることといえば、デュアルクラッチATの、8速PDK(ポルシェ・ドッペルクップルング)をパドル操作で変速した時に、わずかな遅れがある点。加えてターボの位置がバンクの内側となる、「ホットインサイドV」と呼ばれるレイアウトなため、熱による影響がないのかも心配ではある。

価格は10万5963ポンド(1568万円)から

今回の試乗車はオプション満載の状態で、とても効果的な後輪操舵システムにPDCCシャシー、カーボンセラミック・ブレーキなどを装備。標準で10万6963ポンド(1583万円)からとなる価格に、さらにフォルクスワーゲン・アップが買える価格が上乗せになっていた。

わたしの感覚では、ほとんどサーキット走行をすることがないであろうパナメーラに、6707ポンド(99万円)もするカーボンセラミック・ブレーキは不要に思える。しかし、後輪操舵システムとPDCCシャシーは、パナメーラの利便性や走行性能を高める上でも、選んでおいて間違いはない。実際にそれを体感した。

PDCCが搭載されるほかのパナメーラ同様に、エアサスペンションも自動的に付いてくる。スポーツモードを選択すると、フロントで18mm、リアで10mm車高が下がり、安定性を高めるてくれる。PDCCを搭載しないクルマの場合、アンチロールバーが太いものに置き換えられるが、選択するひとは少ないだろう。

ちなみに、少し上乗せして10万8110ポンド(1600万円)を出せば、より便利でスタイリングも魅力的なシューティングブレーク、スポーツ・ツーリスモが購入できる。ただし、最高速度はサルーンの291km/hから僅かに低くなる。

周囲を見渡すと、ライバルモデルとなるBMW M5コンペティションの方が価格は安いが、ポルシェほど魅了させるクルマではないと、わたしは思う。メルセデス-AMGの新しい4ドアGTは、存在感はより大きく、パフォーマンスでもパナメーラよりも秀でているとは思うが、価格もそれに応じて高い。高額なクルマでいうなら、パナメーラ・ターボという存在もある。

「買い」か?

GTSを選択する理由が見つからない

もしパナメーラGTSに魅力を感じないのなら、それは否定しない。しかし、おそらくそれは、現代の大きく重たいパフォーマンスカー全体にも通じることだと思う。何が嗜好をそそらないのか、客観的に考察してみても良いだろう。

仕様に変更を加え、グレードを増やしたことで、ドライバーとしてこのクルマの良さを理解する機会が増えたとも思うが、価格は少し高すぎる。技術的にやりすぎ感があることも確かだし、かつてのモデルが搭載していた、甘美な4.8ℓV8エンジンがラインナップから外れたことは残念でもある。

結果として、GTSがドライビングで最も楽しめるパナメーラだとは、以前のようには明言できなくなった。そもそも特徴や、繊細な味わいもわかりにくい。仕上がりは間違いなく秀逸だが、価格とパフォーマンスとのバランスに優れたパナメーラ4Sではなく、GTSを選択するという理由が、今回は見つからないような気がしてならない。

ポルシェ・パナメーラGTSのスペック

■価格 10万6963ポンド(1583万円)
■全長×全幅×全高 5049×1937×1423mm
■最高速度 291km/h
■0-100km/h加速 4.1秒
■燃費 9.7km/ℓ
■CO2排出量 235g/km
■乾燥重量 1995kg
■パワートレイン 直列8気筒3996ccツインターボ
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 460ps/6000-6500rpm
■最大トルク 63.0kg-m/1800-6500rrpm
■ギアボックス 8速デュアルクラッチ

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