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わずか500台! レクサスのスーパースポーツ「LFA」がトヨタのクルマ作りに与えた影響とは

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わずか500台! レクサスのスーパースポーツ「LFA」がトヨタのクルマ作りに与えた影響とは

■レクサス「LFA」はどのようにして誕生したのか?

 トヨタ「2000GT」以来となる、コーポレートトヨタを象徴するスーパースポーツとして、レクサス「LFA」が発表されてから約10年が経ちます。

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 生産終了後もレクサスのスポーツブランド「F」を象徴するモデルであるとともに、開発で得られた知見やノウハウは、その後のトヨタ/レクサスのクルマ作りに大きな影響を与えています。

 開発プロジェクトのスタートは2000年で、当初は既存のV型8気筒エンジンをチューニングして搭載。シャシはアルミ骨格で検討していたそうですが、「トヨタはあと2年でF1に出る(2002年から参戦)。ありきたりなスポーツカーでお茶を濁すな」という当時の役員の鶴のひと声により、エンジンは専用設計のV型10気筒、車体はCFRPキャビン/アルミフレームの採用を決断したそうです。

 スーパースポーツの多くは、ドライバーの後ろにエンジンを搭載するミドシップレイアウトですが、「トヨタ自動車が世に出す以上は、最後の最後にクルマがドライバーを突き放すようなクルマにすべきではない」というコンセプトで、LFAはFRレイアウトを選択。

 理想の重量配分を実現させるために、トランスミッションをリアに置くトランスアクスル方式が採用されました。

 LFAのチーフエンジニアの棚橋氏は、このクルマを開発するうえで、「性能や速さはもちろん、『乗ってどう感じるか』という数値に表れない官能性を大事にしたい」との想いから、評価・味付けはひとりのドライバーに委ねました。それが、トヨタの評価ドライバーの頂点に立つマスタードライバーの成瀬弘氏です。

 成瀬氏は「このクルマはニュルブル(成瀬氏はニュルブルクリンクのことをこう呼ぶ)でないと鍛えらない」ということから、開発の主体はニュルブルクリンクでおこなわれました。

 とはいえ、開発当初は社内の新車プログラムには組み込まれていないうえに、商品化すら決まっていなかったといいます。LFAが正式なプロジェクトとして認められたのは2005年、商品化が決定したのは2007年でした。

 LFAのテストカーをドイツのニュルブルクリンクで走らせると、単純に速いというだけでなくドライバーになんともいえない気持ち(=乗って気持ちいい)にさせるクルマだと感じた一方で、これまでのトヨタ/レクサスとは比較にならないスピードやG、熱など、「生みの苦しみ」も数多く味わったといいます。

 ニュルブルクリンクは過酷なコースとして知られていますが、ここではハンドリングとスタビリティ、さらに乗り心地もよくないと安心して走ることはできません。そのためには電子制御に頼るのではなく、基本性能を突き詰めることに注力しました。

 そのためには、これまでの常識を破る開発手法も取られ、「実践で鍛える」を目的に、発売前のモデルにも関わらず、2008/2009年のニュルブルクリンク24時間レースに開発テストとして参戦しました。ちなみにこのレーシングカーに採用された補強アイテムは、量産仕様にもフィードバックされています。

 このように着実に市販化に向けて進んでいたLFAのプロジェクトですが、リーマンショックの影響により、トヨタが創業以来の赤字となったことで市販化凍結の危機もありました。しかし、評価ドライバーのひとりとして開発にも関与した豊田章男社長は発売を決意しました。

 豊田社長は当時を振り返り、「LFA以前はトヨタにはスープラ(A80)を超えるクルマがありませんでしたが、LFAでやっと超えることができました。唯一悔いが残るのは『限定500台』しか売ることができなかったことです」とコメントしています。

 そのときの反省から、スポーツカーをビジネスとして成立させる、継続させる事が重要と考え、スバルと共同開発した「86」、BMWと共同開発した「スープラ」が生まれたのでしょう。

■4.8リッターのV10エンジン搭載! 570馬力のLFAの乗り味とは?

 LFAのメカニズムは、「クルマは材料で決まる(成瀬氏)」ということから、基本性能に徹底してこだわっています。

「1LR-GUE」と名付けられたV型10気筒4.8リッターのエンジンはヤマハと共同開発され、徹底した低フリクション化や高効率化のために、560馬力/480Nm(ニュルブルクリンクパッケージは570馬力)のスペックはもちろん、レッドゾーン9000rpmという高回転型の特性、切れ味のある鋭いレスポンスが特長です。

 常用域ではトルクフルで扱いやすいですが、回せば回すほどパワーが湧き出てくる特性で、7000rpm以上はソプラノの効いた「天使の咆哮」と名付けられたサウンドも相まって、まさに痺れるユニットに仕上がっています。

 また、あまり知られていませんが、アイドリング時の燃費改善のために、片バンクを気筒休止させる機構も採用されました。

 トランスミッションはアイシンと共同開発された6速の2ペダルMTです。トレンドのツインクラッチではなくシングルクラッチを選択した理由について棚橋氏は、「ギアが噛みあう感覚にこだわりたかった」と説明しています。

 Dレンジではツインクラッチのようなシームレスなシフトではありませんが、MTモードでシングルクラッチの特性を理解して操作をおこなえば、スムーズに走らせることは可能です。

 フットワークは軽めながらも正確無比のステアリング、強靭ながらもカーボンモノコック特有の減衰特性を備えたしなやかなボディ、硬めですが軽やかに路面を捉えるサスペンションと、前後のアプローチアングルと最低地上高さえ注意すれば、想像以上の視界性能の良さも相まって、スーパースポーツながら気負いなく走らせることができます。

 成瀬氏は、「LFAは、妊婦の奥さんを横に乗せて、大阪から東京までノンストップで走っても大丈夫な快適性と気持ち良さを備えた」と語っていました。

 ブレーキはブレンボと共同開発されたCCM(カーボンセラミックマテリアル)ブレーキディスクとアルミ製キャリパーの組み合わせです。

「岩のように安心して踏めるブレーキ(棚橋氏)」で、超高速域からの制動やニュルブルクリンクを安定してラップできる性能、絶大な信頼を感じるタッチやフィーリングはもちろん、常用域でも普通に使えるフレキシブルさも備えています。

 筆者(山本シンヤ)は、今回の撮影のために久しぶりにLFAのステアリングを握りました。じつは乗る前は「10年の歳月にガッカリしたら嫌だな」と思っていましたが、細部を除けば掛け値なしで、いまでも十分通用すると感じました。

 今回乗ったモデルは、限定500台のなかでも50台のみに設定された「ニュルブルクリンクパッケージ」で、引き締められたサスペンション、専用タイヤ(ポテンザRE070)、軽量アルミホイール(BBS製)、空力操安を考慮したエアロパーツなどがプラスされています。

 ノーマルよりも走りに特化した仕様で、ハートに響く非日常の性能を持ちながら、日常域ではそれをいい意味で感じさせず誰でも自然に乗れるフレキシブルさと、ロングドライブでも苦にならない快適性を備わっていました。この二面性こそが「トヨタの味」のひとつではないかと感じました。

※ ※ ※

 LFAが生産終了して以降、2014/2015年のニュルブルクリンク24時間耐久レースに「LFA Code X」という実験車両が参戦していました。

 見た目こそLFAの形でしたが、中身はフルカーボンモノコックにプッシュロッドサスペンションを採用。筆者は当時、「LFA Code Xはなんに役立つのだろう?」と疑問に思っていましたが、じつはこれが東京オートサロン2018で初披露された「GRスーパースポーツコンセプト」の原型だったのです。

 GRスーパースポーツのチーフエンジニアである古場博之氏は、「このクルマは『どこでも』、『誰でも』、『安心して』高性能を手の内で走れるようにする必要があります」と語っているように、LFAの血は次世代に着実に受け継がれているのです。

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