クルマによって、クルマの左側と右側に存在するものがある。右ハンドルの左ウインカーや給油口、マフラーなどだ。
なぜクルマによって、左側、右側にわかれるのだろうか? そんな素朴な疑問にモータージャーナリストの野里卓也氏が答えます。
【知らなかったでは済まされない】愛車の寿命を縮める「うっかり運転」
文/野里卓也
写真/ベストカー編集部 ベストカーWEB編集部 Adobe Stock
輸入車は右ハンドルが急増したがなぜウインカーレバーの位置は左なのか?
新型992型911は右ハンドルのみの設定。ウインカーは日本車のようにステアリング右側ではなく、左ハンドル車と同じステアリング左側にある
クルマで右と左、異なるモノの代表といえばハンドルの位置だろう。左ハンドルといえばかつては輸入車がそれに該当していたが、今では米国車やメルセデスベンツのAMGモデルといった車両を除けば、国産車と同じ右ハンドルは当たり前、フェラーリだって右ハンドルが選べる時代。
ポルシェにいたってはカイエン、マカン、パナメーラをはじめ、2017年からは718ケイマン&ボクスターも右ハンドル化し、先日、日本発表となった、新型ポルシェ911(992型)についても右ハンドルのみの設定だ。
さて、輸入車でも右ハンドルが一般的になってきたのはよいが、それでも国産車と異なるところがある。それはウインカーレバーの位置だ。
輸入車の場合は左側、国産車だと右側だ。これは輸入車の大半がそうだが国際的な規格であるISO(国際標準化機構)によってウインカーレバーは左側、ワイパーは右側と決められており、それを準拠しているからなのだ。
国産車は日本独自の規格であるJIS(日本工業規格)によって定められており、ウインカーレバーは右側と規定されている。
とはいうものの、実はISOでも特例で2007年以降、右ハンドル、右ウインカーが認められている。
本来、ISOの左ウインカーに合わせるべきではないかと議論されたことはあるが、従来の習慣もあり、ドライバーが誤操作しやすいため、右ウインカーを続けているというのが現状。
しかし、ISO規格の右ハンドル、左ウインカーだと、ウインカーとシフト操作の両方を左手で行わなくてはならず、右ハンドル、右ウインカーより使い勝手が悪い(特にMT)。
その一方で国産車の輸出モデルはISOに合わせて、左にウインカーを設置していたりする。ある意味日本車らしいといえばそうなのだが。
日本にせっかく右ハンドルで輸入したのだから、親切心で右ウインカーにしてほしいと思うのはボクだけだろうか。やはりコストがかかるだろうからしないというのは本当のところだろう。ガラパゴスといわれてしまえば何もいえなくなるが……。
給油口はクルマの左側か右側か、どうやって決めているのか?
自分の愛車の給油口はクルマの左側か、右側、どちらについているか、忘れたりしませんか?
■各メーカーの給油口の位置
・トヨタ&レクサス:左側がほとんど
・日産:左右混在
・ホンダ:ほぼ全車種左側
・マツダ:左側がほとんど
・スバル:右側がほとんど
・三菱:左側がほとんど
・スズキ:左側がほとんど
・ダイハツ:左側がほとんど
給油口についてもそうだ。メーカーやクルマによって給油口は右と左があってまちまちだ。
しかし、基本的にはマフラーの排気口と反対側にあると思っておけば間違いない。
では、マフラーが左右出しの車両はどうなるのか? その前に保安基準の説明をしておこう。
保安基準によると給油口とマフラーの出口(排気口)はそれぞれ向きを変えて、なおかつマフラーの排気口から給油口は300mm以上離さなければいけないとある。
そして左右出しの場合、片側しかないマフラーと異なり左右両方が排気口とはいえ、給油口と排気口は当然同じ方向は向いておらず、排気口も給油口から300mm以上離されているので、保安基準はクリアしているのだ。
さて、自分のクルマの給油口はどちらにあるか把握している人がほとんどだろうが、久しぶりに運転する人や家族のクルマを借りている時など、忘れがち。
そんなときは、ドアを開けて後ろを振り返る前に、メーターの燃料残量計を見てみよう。メーター内の残量計のところに三角の印があり、これが左に向いていれば、車体左側に給油口がある。
燃料残量計の上、給油機のイラストの左側に、左を向いた三角の矢印が見えるだろうか? これはクルマの左側に給油口があることを示している
ところで、トヨタ車の多くは左に給油口がある。後述するが以前は右側に給油口があった。今だと例外的に86は右だが、これはスバルが生産しているからだろう。
一方の輸入車、特にドイツ車は基本設計が右側通行の左ハンドル仕様のため、給油口が右側にあるモデルが圧倒的に多い。
これは当地の路上にてガス欠になってしまうと携行缶等で給油する場合もあるので、路肩面である右側に給油口があると安全性が高くなるからだ。
こうした『右側通行の左ハンドル仕様』の場合、日本のセルフスタンドでは運転席側で給油の一連の作業が、ほぼ最小限の動線となるのでとても都合が良い。
ちなみに軽自動車は日本専売にも関わらず左側が多い(ホンダ車の一部モデルは右側に給油口がある)。
それについては、給油口を左側に設定している自動車メーカーのエンジニアに昔、話を聞いたことがあるが、そのエンジニアは「生産ラインもその作り(給油装置とか)になっていて、社内でも左にするか、右にするか議論したことはあるが、今さら変更できない」と言っていた。
マフラーは左か右か、なぜ分かれる?
ロードスターのマフラーは右側2本だし
今度はマフラー(排気口)の左右の話。前述の給油口とも関係するが、実はクルマの作りから考えるとエンジンの排気レイアウトがあるので、一概には関係があるとは言いづらい。
例えば、日産のFR(RB搭載車)モデルの場合、エンジンが縦置きで右(ドライバー側)が吸気で左が排気だと、排気出口も左側になる。
シルビア(S13~S15)も同じだ。トヨタのマークIIだと、80系まで(1G系エンジン)はエンジンの右側が吸気で左が排気。
実は、その一方で1G系は左吸気の右排気や、年代によっては吸排気いずれも右側があったりする。
そして90系のJZエンジンになると、吸排気の向きが逆になって、排気出口が右、給油口は左になる。
さて4L、V8エンジンのセルシオ(排気左右出し)になると、初代と2代目が右側給油口で、3代目(4.3Lへ排気量UP)から左へチェンジしている。
カローラは、FR系の86は右側給油口だが、FFのカローラFXだと初代から左。以後、92も左。初代ターセル(FF)も同様だ。
AE86のマフラーは左出し。ちなみに現行の86&BRZは左右出し
というわけで、今ではほとんどのトヨタ車は左側に給油口を設けているが過去、トヨタでは給油口を左にする改革(製造ラインを刷新したなど)を断行したに違いない……。
話は戻って、マフラーの排気口が左右いずれになるのかはおおよそエンジンレイアウトで決まるというのは分かってもらえたはず。
でも、最近はマフラーを振り分けるように左右へ排気口をレイアウトしたマフラーも多い。それは出力向上を狙ったというより、見た目のよさを追求したものがほとんどだ。
しかし、今はそちらがトレンドのようなので、今後もそうした傾向は続くはずだが、せめて給油口だけでもメーカー内で統一規格を作ってほしい。
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