こんなものまで作っていた 自動車メーカーの意外な製品 後編

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シトロエンのV字ヘリカルギア

アンドレ・シトロエンは当初、V字の歯を持つダブルヘリカルギアの製造を手掛けた。これは直歯ギアより静粛性と強度が高いが、工作機械に極めて高い精度が求められる。パテントを手にしたシトロエンは、ロシアとフランスで事業を始め、スコダを含む数多くのクライアントへギアを供給した。

自身の名を冠した自動車メーカーを立ち上げたのは1919年。その際に考案された「ダブルシェブロン」は、出発点となったギアの歯を象ったロゴで、現在もシトロエンの各モデルに用いられている。

プジョーの自転車


ペニー・ファージング型と呼ばれる前輪が極端に大きい自転車のグランド・バイを、1882年に製造開始したプジョー。1880年代末のカタログには、三輪車やタイヤを前後同サイズとした自転車も加わっている。

1926年には、自動車部門と自転車部門が完全分割された。現在はブランドの商標権を、ビアンキやジタンを擁するサイクルヨーロッパに貸与している。

プジョーの電動工具


プジョーが初めて工具を製造したのは1810年のこと。自動車産業が誕生するよりずっと前のことだ。現在もプジョーはドリルやそのビット、ノコギリ、グラインダーやバイスグリップなどを販売している。その製造権は、2012年にフランスのMPO社へ移譲されている。

プジョーのソルト＆ペッパーミルとコーヒーミル


プジョーが最初のコーヒーミルを販売したのは1840年で、続いて1874年にペッパーミルを投入した。モデルZと銘打たれたその胡椒挽きはポースリン製だったが、その基本デザインは木製となった現在も受け継がれている。

PSPプジョーと名乗るグラインダー製造会社は、自動車メーカーとしてのプジョーとは関連のない会社となっている。しかしながらプジョー一族は、両社の株式を保有している。その比率はグループPSAが14％、PSPが90％だ。

フォードの工業都市


ヘンリー・フォードは、自動車部品用のゴムの供給を確実にするため、ブラジルにゴム園を擁する街を造ってしまった。フォードランディアと名付けられたそこは、1926年に計画を開始。

アマゾンの熱帯雨林奥深くに、アメリカ風の家々が建てられた。ブラジル人の労働者とアメリカ人の管理者は居住区画が分けられ、そのほかに来訪者のためのホテルも建設された。

ところが、ゴムの木の生育は悪く、ひとびとも病に倒れがちで、プロジェクトは完全に失敗。1934年、この都市は放棄され、ベルテッラでゴム園の再起を図るが、フォードはここからも1945年に撤退する。

自然環境に収穫量が左右される天然ゴムより、合成ゴムの方が容易に入手できると気付いたのが、その主な理由だ。現在、フォードランディアにはおよそ3000人が暮らしている。

プジョーのウイスキー用テイスティングセット


またまた登場したプジョーは、その名がさまざまなジャンルで使用されている。形態もサイズも出尽くしたグラインダーに加え、PSPが生み出したのがウイスキーのテイスティングセットだ。

ウイスキーの香りが立ちやすいグラスと、冷凍して使う冷却台、それにコースターを組み合わせている。一番好きなプジョーは205GTiだが、その次を選べと言われたらこれを挙げるだろう。

タタのホテル


綿貿易で身を立てたジャムシェトジー・タタは、他業種への進出を試みたが、1903年にムンバイで建設した高級ホテル、タージマハル・パレスの完成を見届けると、翌年には志半ばで命を落とした。その後、彼の遺志を継ぐ者たちによって、ホテル部門はアジア最大級の規模に成長した。

タタ・グループはインド最大の財閥となり、ホテル部門やジャガーとランドローバーを傘下に収める自動車部門も含め、100を超える企業を擁するまでになった。コンピューターのシステムサポート、コーヒーや紅茶などの飲料、生命保険のほか、航空会社のヴィスタラまでもが名を連ねる。

宿泊先から航空券を電話で注文し、空港へクルマで移動し、旅行保険をかけ、飛行機に乗ってコーヒーを飲む。インドではこれら全てが、タタの影響下で行われることになってもおかしくないというわけだ。

トニーノ・ランボルギーニのコーヒー


フェルッチオ・ランボルギーニは1974年に事業を売却してリタイヤすると、狩猟とワイン造りで余生を過ごした。今やフォルクスワーゲン傘下に入った自動車メーカーのランボルギーニに、フェルッチオの子供たちは籍を置くことはなかった。しかし、彼の長男が、家名と猛牛の紋章を用いてビジネスを展開している。

トニーノ・ランボルギーニは、サングラスや腕時計、ネクタイや財布など、イタリアンデザインを売りにした高級アイテムを揃えるブランドだ。また、2種類のコーヒー、チョコレートやウォッカ、エナジードリンクなどにもその名を冠して販売している。

テスラの家庭用バッテリー


モデルSやモデルXに用いられる蓄電池技術は、停電時にも使用できる家庭用電源に応用されている。パワーウォールと名付けられたそれは、メンテナンスフリーのリチウムイオン・バッテリーパックで、送電線と太陽光発電による充電が可能だ。テスラによれば、フル充電で一般家庭の1週間分程度に相当する電力を賄えるという。

ソーラーパネルがない場合はどうするのかって？　テスラは、それもしっかり販売している。

トヨタの家


トヨタのグローバルサイトを見ると「日本における21世紀の快適で高級な家を造る」ことが、住宅事業の説明の冒頭に掲げられている。この日本を牽引する自動車メーカーが、住宅事業部を設立したのは1975年。

現在は注文住宅・分譲・賃貸の3形態を柱に、リフォームも展開する。新築物件は最短45日で完成し、最長60年の保証が付く。もちろん、これがトヨタホームのことであるのは、日本では十分に知られていることだ。