スポーツプロダクトを象徴する「R」のバッジを掲げて登場したPHEVの「フォルクスワーゲン トゥアレグRプラグインハイブリッド」。環境性能だけではない「電動化」が秘めた可能性を誇示するかのように、フォルクスワーゲンは、本気の高性能&高級SUVを生み出してきた。(Motor Magazine 2020年4月号より)
フォルクスワーゲンR社のラインアップ
フォルクスワーゲンの電化戦略はID.3に代表されるピュアエレクトリックだけではない、「eハイブリッド」と呼ばれるプラグインハイブリッドもその一環としてラインナップに加わっており、これまでゴルフGTEそしてパサートGTEの2台が市場に提供されている。興味深いのは両モデルともにスポーツバージョン「GTI」を彷彿させるモデル名が与えられていることだ。すなわちフォルクスワーゲンは電動化のダイナミック性能が、既存のスポーツモデルを超えるほどの内容を持っていることを意味している。
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それを象徴する3台目のPHEVが、3月初めに開催されるジュネーブモーターショーに登場する。世界初公開に先立ちフォルクスワーゲンは、ウインタードライブトレーニングの行われているスウェーデンのアルビッツヤウルで、スタティック発表会を行った。
トゥアレグRプラグインハイブリッドと名付けられたこのニューモデルの特徴は、「R」というアルファベットに象徴される。すなわちこのクルマは、フォルクスワーゲンのスポーツプロダクトを開発するフォルクスワーゲンR社のラインナップに加わった、4番目のクルマなのだ。
「これまでフォルクスワーゲンの中でもトップクラスのパワーを持ったモデルは4.2LTDIエンジンを搭載した420psのトゥアレグTDI V8でした。エレクトリックパワーを加えた462psのモデルに関してはやはりR社のノウハウを生かし、Rモデルとして市場に提供するのがベストであると考えたわけです」と、R社ヨスト・カピート社長は語る。
マイナス20度の氷結湖に佇むトゥアレグRは、ラピッツブルーと呼ばれるR社のシンボルカラーを銀世界に輝かせていた。
精悍かつスポーティな造形とカラーアレンジ
エクステリアは2018年に登場した3世代目のトゥアレグをベースにしている。まず目を引くのはIQマトリックスヘッドライトで、車載カメラと協調して対向車を幻惑することなく、最適な前方配光を行う。ブラック塗装のラジエターグリルも特徴的で、精悍な表情を作り出している。Rスタイルのバンパー、ボディと同色のドアアンダートリムサイドウインドウフレームなどが、スポーティーな雰囲気を醸し出す。
もっとも重要な「Rロゴ」はフロントグリル内など合計4カ所に見られる。ボディと同色に塗装されたオーバーフェンダー内に装着されるタイヤは標準で20インチ、組み合わされる「ブラーガ」デザインの軽合金ホイールだが、オプションで21インチ「スズカ」、22インチ「エストリル」も用意される。LEDライトが標準のリアコンビライトが装備されるリアエンドはシンプル。台形の開口部を持つマフラーカッターで区別される。インテリアも「R仕様」。アルミとステンレススチール、そしてレザーでまとめられる。
注目の心臓だが、搭載されるのは2995ccのV6ターボエンジンで、最大出力250kW(340ps)を発生する。これに組み合わされる電気モーターは100kW(136ps)で、システム出力は340kW(462ps)、最大トルクは700Nmと発表されている。エンジンとモーターに組み合わされるのは8速ATで、駆動方式はもちろん4モーションだ。路面状況に応じて最大で70%のトルクが前輪、そして最大80%が後輪に配分される。ダイナミック性能は、最高速が250km/hでリミッターが働くという。
一方、電気エネルギーサポートだが、トランク床下にエネルギー容量14.1kWhのリチウムイオン電池が搭載され、ゼロエミッション航続距離は44km(非公式)、最高速度は140km/hだ。
このハイブリッドシステムはポルシェのカイエンEハイブリッドから移植されたもの。すなわちこのトゥアレグRは、カイエンの兄弟モデルなのだ。ただしR社の哲学である「日常性能」が重視されており、たとえばトーイング用の「トレーラーアシスト」が、PHEVとしては世界で初めてオプションで用意されているという。(文:木村好宏)
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