ボクが購入した360モデナの場合、取り扱い説明書をはじめ冊子類の付属品はすべて揃っていて、スケドーニ社製のレザーケースに入れられていた。
ケースのなかにはフェラーリ純正マグライトや取り扱い説明書のほか、いくつかの冊子や紙も入っていた。ひとつは、正規ディーラーの住所や連絡先が掲載された冊子。表紙には『SALES AND SERVICE ORGANIZATION』と、記されている。
【前回のおさらい】Vol.33 外置きはツラいよ
取り扱い説明書などはスケドーニ社製のレザーケースに入っている。レザーケース内には、フェラーリ純正のマグライトも備わる。現行フェラーリのレザーケース(ブラック)は、360モデナよりだいぶコンパクトなサイズ。なんとこの冊子、全世界の正規ディーラーを掲載しているからすごい(すべて英文)。日本のみならずヨーロッパ、アメリカ、東南アジアなど世界中のディーラーが載っているのだ! ただし、掲載データは2000年当時のものであるが。
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世界中のディーラー網(2000年当時)が記されている『SALES AND SERVICE ORGANIZATION』。冊子の表紙うらには、3つの紙がはさまっていた。ひとつは、ふたつ折りの保証規定書である。当時の輸入元であるコーンズ・アンド・カンパニー・リミテッドが保証の範囲や程度を明示したものだ。
『SALES AND SERVICE ORGANIZATION』のなかには、保証規定やF1マチックの操作マニュアルがあった。保証規定はふたつ折り。適切な回転数とは?あとのふたつは、F1マチックの操作ガイドである。ひとつは、ふたつ折りの日本語版。もうひとつは英語・イタリア語・フランス語の説明が載ったペラ1枚である。
日本語版を読むと、気になる記述がいくつかあった。ひとつは、「AUTO」モードの説明部分。
「通常のオートマチック車とは、操作が完全に異なりますのでご注意下さい。」
と、赤字で強調されている。2000年といえば、まだパドルシフトが珍しい時代。ゆえに、“完全に異なる”と、強く書かれたのだろう。
F1マチックの操作方法は、取り扱い説明書のほか、写真の別紙にも記されている。また、最後の注意書きには「エンジンの寿命をのばし、燃料のムダ使いを防ぐためにも適切な回転数で走行して下さい。」と、記されている。
とはいえ、適切な回転数がどれほどのものなのか記されていない。そこで、フェラーリ横浜サービス・センターの高橋工場長に訊いた。
「エンジン性能曲線ではトルクカーブのピークが4750rpmになりますので、適切なエンジン回転数は3000~5000rpmになります」とのこと。
ちなみに、適切ではない回転数で走り続けるとどうなるのか?
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搭載するエンジンは3.6リッターのV型8気筒DOHCエンジン。最高出力は400ps/8500rpm、最大トルクは372Nm/4750rpm。「高回転域で走りつづけるとウォーターポンプが正常に機能しなくなる可能性があります。結果、オーバーヒートする可能性が高まり、エンジンに負担がかかります。ただし、時々、高回転域までまわす分には問題ありません」
長く所有するためにも、今後は3000~5000rpmを意識して走行しようと思う。
日本語版はありません次の冊子の表紙には『OWNER’S WARRANTY AND SERVICE BOOK』と記されている。31ページの中身は、保証内容および整備項目にかんする情報である。が、すべてイタリア語・英語・フランス語・ドイツ語表記。日本語の説明は一切ない。
説明書関連の表紙は、すべてフェラーリのイメージ・カラーであるレッド。最初のほうは、納車前整備のチェック項目が記されている。チェックがつけられるよう、チェックボックスもあるがボクのそれはチェックが記されていない。ほかにも1年ごとの点検内容を記す複数のページ(「YEARLY MAINTENANCE COUPON RECORDING」と書かれている)も未記載だ。
納車前整備のチェック項目が記されているページ。1年ごとの点検内容を記す部分は、日本の整備記録用紙と異なり、記入可能な部分は少ない。それもそのはずで、この冊子は日本向けのものではない。日本の場合、車検時などに必要になる点検整備記録簿に、1年点検を含む各種整備内容を記すので、冊子には記さない。ゆえに、冊子内にある複数の記入箇所は“真っ白”である、
ちなみに、「RECORDING OF PLANNED MAINTENANCE SERVICE」と記されたページは、距離ごとに決められた整備を受けた場合、完了したことを記す。
が、1万km、3万km、5万km、7万km、9万km、11万kmまではあるものの以降はない。前・後のページを確認したものの、11万kmから先の整備項目は記されていなかった。フェラーリで10万km以上走行するというのは、特殊なケースなのかもしれない。
最後の冊子は、表紙に『ALARM SYSTEM』と記されている。セキュリティ・システムにかんする情報が載っているものの、こちらもすべてイタリア語・英語・フランス語・ドイツ語表記。
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イモビライザーの解除方法などが記されているセキュリティ・システムにかんする冊子。イモビライザーの解除方法は複雑きわまりない。内容は、リモコン・キーが壊れた場合のイモビライザーの解除方法や、リモコン・キーの電池交換方法などが記されている。とくに、前者のイモビライザーの解除方法は複雑きわまりない。PIN(車両認識番号)の数字にもよるが、イグニッション・キーをなんどもひねる必要があるのだ。
ただし、フェラーリじしんも複雑であるのを認識しているのか、冊子内にちいさなふたつ折りのカードを入れている(イタリア語・英語・フランス語・ドイツ語それぞれ用意)。
イモビライザーの解除方法のみを記した小さなカード。日本語はない。カードには、イモビライザーの解除方法のみを記す。片手でカードを見つつ、もう片方の手でイグニッション・キーをひねられるから、いざというとき便利そうだ。
貴重な仕様書はA4ペラ1枚!ボクが1番驚いたのは、なんと、購入時の仕様書である。なぜなら、立派なものではなく、パソコンから出力されたと思われるA4のペラ1枚だったからだ。しかも、モノクロである。普通なら、ポイっと捨ててしまいそうだ。
「Ferrari Intellectual Reading Exchange System」(略称はF.I.R.E.S)と、記された紙にはモデル名、カラー、オプションなどが書かれている。
購入時の仕様書はA4ペラ1枚。しかもモノクロだ。モデル名の欄には、言わずもがな「360 MODENA F1」。エクステリア・カラーの欄には「BLU TOUR DE FRANCE 522」、インテリア・カラーの欄には「CUOIO 4609」、カーペット・カラーの欄には「BORDEUX_481」と、記されている。
注目すべきはオプション・リストの欄。ボクの360モデナには5つのオプションが装着されている。1番上に記されているのは「360/550-RACING SEAT “CONNOLLY”」。このコノリー・レザーのシートはヘッドレスト一体型で、一部にカーボンが使われているのが特徴だ。
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ヘッドレスト一体型のシート「360/550-RACING SEAT “CONNOLLY”」。レザールーフもオプションだった。次は「360 ONLY-CHALLENGE GRILL」。 メッシュタイプのリア・グリルである。多くの360モデナが装着している定番パーツだ。そして「360 ONLY-CONNOLLY LEATHER ROOF」は、装着しているクルマが少ないという。
多くの360モデナが装着する「360 ONLY-CHALLENGE GRILL」。「ALL MODELS-FERRARI BADGE」は、360モデナに限らず多くのフェラーリが装着している、ボディサイドの七宝焼きエンブレムをさす。
最後、「ALL MODELS-CALIPER GRAY ALLUMINIUM」は、ブレーキ・キャリパー・カラーをさす。ちなみに当時、グレー以外にもゴールドなども選べたという。
ボディサイドのエンブレムは、かつてオプションだったものの、現行モデルは標準。ブレーキ・キャリパー・カラーは、グレー以外にもゴールドなども選べた。中古車は、どんなオプションが装着されているのか、よくわからない場合も多いから、仕様書は大いに役立った。A41枚の紙切れを、約19年も保管していた前オーナーに感謝である。
後編では、取り扱い説明書の内容について報告する。
文・稲垣邦康(GQ) 写真・安井宏充(Weekend.)
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