トルクは回転する軸が出力できる力
トルクというのは回転する軸にかかる力のことです。玄関のドアを開けようとしてドアを押したり引いたりすると、ドアが蝶番を軸として回転運動をするのでトルクが掛かかります。一方、引き戸など横方向に戸をスライドするときの力はトルクとは呼びません。トルクという表現はあくまでも軸を中心に回転を伴う場合に使われます。エンジンやモーターの場合は軸にかかる力ではなく、軸が出力できる力となります。
トルクは出力軸に計測機を取り付けて、何回転で何Nm(ニュートン・メートル)を発生しているかを計測します。この計測値をグラフにしたものをトルクカーブと呼びます。1Nmは回転軸に1mの棒を取り付けその棒を1Nの力で押したときの力です。エンジンはこの逆で、回転軸に1mの棒を取り付けその先端で1Nの力が発生している状態です。科学分野ではナノメートルをNm、ニュートンメートルをN・mと表記しますが、自動車関連ではナノメートルを使うことがまれなので「・」が略されることが多くなっています。
出力はトルクと回転数
トルクは計測機で計るのに対し、出力はトルクを元に計算した数字です。計算式は、出力(kW)=2πr×トルク(Nm)×回転数(rpm)/60/1000となります(rは1で計算します)。式の中に出てくるトルクと回転数は任意の値で、2000rpmのときに200Nmが出ているというような状態です。 2000rpmで200Nmを発生しているエンジンの出力は42kW/2000rpmとなります。
このエンジンが4000rpmで300Nmを発生している場合の出力は、126kW/4000rpmで、4000rpm時のほうが高い出力を得ています。 さらにエンジンを回して5000rpmの際にはトルクが少し落ちて280Nmになったとします。このときの出力を計算すると147kW/5000rpmとなります。
エンジンのトルクがピークに達して、そこから下がっていっても発生トルクと回転数の関係で出力が高く算出されることがあるため、最大トルク発生回転数より最高出力発生回転数が高いことがあるのです。
MTの場合はトルクカーブを理解してクルマを走らせる
最近はすっかりAT車ばかりになってしまったのでシフトアップやシフトダウンはクルマ任せとなっています。ATでもマニュアル操作できるものがありますが、効率よく加速するにはもはやクルマ任せにしたほうがいい状況です。しかし、MTの場合は違います。人間が判断することで加速を効率よく行うことができます。
最近のエンジンはフラットなトルク性能のものが多数派です。たとえば2000回転から5000回転まで最大トルクを維持しているエンジンならば、2000回転から5000回転のどこでも同じ駆動トルクを得られていることになります。シフトアップするとエンジン回転が1500回転下がるとします。5000回転でシフトアップ、エンジン回転が3500回転まで落ちても効率よくトルクを伝えられます。
これがいわゆるトルクバンドに乗った走りというものです。ただし、このシフトアップ方法がもっとも速い加速が得られるかといえば、そうとは限りません。速度はエンジン回転数に比例するので、高回転まで回してもトルクの落ち込みが少なく、エンジン回転数の上昇が速ければ、シフトアップしないほうが速い場合もあります。
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PSとkg・mからの脳内変換が慣れない。